第8話お茶

絶対に避けるのは最低条件だが、、本当にッ!この兄上、UZA‥‥




「連れないなぁー。少しくらい触わらせてくれても構わないだろぉ〜?私に癒しをおくれよぉ〜!」



俺は兄上から跳び離れて、距離をとる。

「嫌です。」俺は速攻で断固拒否する。



「え??」


その瞬間、地を這うような声がその場にいた俺とその背後にいるメイドを襲う。

こちらを見通すように向いている薄青色の冷めきった瞳が突き刺さる。


「え‥‥?もしかして‥.もしかしてぇ?僕のロルドが、兄上である僕のお願いを断ったの!?ねぇ?ロルド?そんな訳ないよねぇ??ねぇ?」



その底冷えする声に、首筋に冷や汗が流れる。まるで全身が石になってしまったかのようにそこから1歩も動けない。足が震え、全身から汗が吹き出してくる。

喉が一瞬でカラカラになり、喉が張り付いてまともに息をすることもできない。




こ、この兄上、情緒不安定すぎだろッ!!!


何処から、その、地を這うような声が出てくるんだよ!?




しかし俺も、我ながら、小心者だ。どうしても目の前の状況に恐怖を感じてしまう。それは唯一の兄上だからか、それとも生命体としての俺の本能故なのか。俺の身体の全てから警戒信号が出される。



逃げなきゃ。



そう思うが、身体は動かない。


それは確実にこの兄上が、この場での絶対強者であることを物語っていた。





この状況で1番先に口を開いたのは、やはり兄上だった。



「ふふ、冗談だよ。相変わらず、ロルドは可愛いねぇ。」


その気の抜けた声に反応して身体が、硬直状態から脱する。



いや絶対、本気だっただろ!

普通の会話であんな殺気がダダ漏れることは無いんだよ!



俺の心の声は据え置かれたまま、会話が続けられる。


「あ、そこに突っ立ってるメイドは後で話があるから僕の所に来てよ。」


「ヒッ!」


そこには先程までの殺伐とした空気はもう何処にも無かったが、兄上に声をかけられた後ろのメイドが小さく悲鳴をあげた。


「じゃあ、今日のロルドの話を聞かせてよ。」


兄上はそう言って足を組みながら、主に俺が晩餐で話した一日の出来事の詳細を聞いてきた。


後ろのメイドが慌てたように頭を深く下げてお茶会をする部屋から、そそくさと出ていく。


頼むから、俺も連れて行ってくれ。



この後、1時間ほど兄上の前で喋らされたことは拷問の記憶として俺の頭の中に残った。


ずっと喋られて、それを聞き続けるのは拷問に近いと何処かで聞いた事があったが、ずっと喋らされる方も、それはそれで拷問なのだという事を俺はこの時、初めて知った。



それは世界歴で3502年。ランドローズ王国の北方遠征から兄上、アヴェラル・ディ・ラインが帰ってきた年であり、俺が学院に入る前年の出来事だった。


当時はランドローズ王国(馬鹿)から北の地方に位置するミネルバ帝国に宣戦布告をして、戦争になった。


本当に酷い戦争だった。

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