第4話心の叫び



俺の家は大昔にこのランドローズ王国の国王に忠誠を尽くした家臣の末裔だ。


それが侯爵という地位を得て、今はその歴史だけを取り柄とする、国にとって厄介なお荷物と化している。




太古の昔は人々が助け合って生きていたと聞くが、それは過去の話だ。

今でこそ世界は安定化している様に見えるが、ほんの数百年前までは大規模な戦争をして各国ともに消耗戦をしていたのだ。


まだ戦争に発展しないくらいには小さいが、水面下での競り合いは今も続いている。






その戦争というのが、フィルメスタの界戦。通常のスペル攻撃をより極大進化させた兵器''ガスペル''による各国の均衡の縺れによる衝突だった。


暗部の者たちが暗躍に暗躍を重ね、その製造法や製造能力を奪い去り、実質的に葬った事で戦争は終結した。


そして、その暗部を組織していたのが、ランドローズ王国の初代国王であるザレスダ・ライン・ラルク・ランドローズ。




国王になったラインは人々を貴族や平民の垣根を越えて平等、且つ公平に機会を与えた。



しかし当然の事ながら、当時の国や議会は荒れ果て、紛糾した。しかし、それさえもラインは和平をもって収めたと言う。この際に暗部が絡んでいたことは言うまでもないだろう。



その思想は、現国王であるニーナ・ラルク・ランドローズに受け継がれている。経てして、各国がランドローズ王国に吸収される形を取り、今ではこの世界の唯一の共和国ができたのだ。


俺の家系は、その戦争時の家臣であり、一時の戦争の長官だった。それも代理長官であったが為に、戦争の火の粉を被ることがなかった。

それから生き延びた俺の祖先が、初代侯爵の地位を得たのだ。俺の家名であるラインとは初代国王のラインから拝借されている。




とはいえ、戦争に参加していて被害が全くないという事実は些か疑問があった。


それで勉学の基礎科目として歴史を教えてくれている兄上に出し抜けに聞いてみた所、初代侯爵は頭脳戦に優れていて策略家だったそうだ。

その兄上曰く、初代侯爵が居なければ先の界戦には勝てなかったとまで言われており、それも王国の暗部よりも活躍したために今でもたまに避けられているらしい。





一体何をどうしたら、そんな評価になるんだよ。暗部より有能って何!?

てか、今でもたまに避けられるって‥.。一体何してるだよ。

だから、まともな教師が一人も雇えないんだよ!




俺の心の叫びは誰にも届かなかった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る