第2話 あなたの一声

「。。。なさ。。!」


「。。。来なさい!」



静寂の中に一際目立った声が聞こえる。


微睡まどろみにいた俺の意識がそこで浮上する。




「聞いていらっしゃるのかしら?入学早々になんてこと!貴方という方がいるからこの学院の品格が落ちるのです!!後で私の教卓室に来るように。分かりましたね?」




凄い言われようだ。



たった今起きた俺でもわかるくらいの大声で怒鳴っているのは、この学院で俺のクラス担当になったビルボア・マゼル教だ。



女性でありながら、世界有数のスペルの使い手である。




スペルは太古の昔の人々にとっては誰でも使えていた物らしいが、今ではそれは一部の限られた層に神から与えられた奇跡ということになっている。


特に男性にそのスペルが与えられることが多く、女性は稀に見る程度だった。




そして、そんなスペルの使い手たちを教育する場こそがこの学院。ミルドバース学院なのだ。

ちなみにスペルを与えられた者は漏れなく強制的に入ることを義務付けられる。



「ロルド・ライン!!分かったら返事をしなさい!」



面倒くさいな。寝てただけだろう。それに、しがない侯爵家の次男にそこまで怒鳴ることか?



「ふぁ〜い」



間延びしたような返事が俺の耳に届く間に、教室にマゼル教の甲高い声が響く。



「何ですか?そのふざけた返事は!とにかく後で、私の元に来ないなどという事は許しませんからね!」



こうして俺の学院入学してから早々。俺のクラスでの立ち位置が決まった。



ゴーン。ゴーン。


ホームルームとやらの終わりの合図である、銅製の鐘が静かな余韻を残して鳴っている。



「では、皆さんくれぐれも、この者のような品格を下げる行為はなされないように。」


ピシャリ。

扉を閉める音が静かになった教室に響く。



マゼル教が教室から出ていくと、そこには奇妙な沈黙が立ち込めていた。俺に向けられる視線は様々だったが、中には敵対するものもある。



ふぁ〜。。後で考えるか。

俺は盛大に欠伸をしたところで、もう1度、意識を手放した。

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