第47話 白撃破
父さん、本当にごめんな。仕事で疲れてるだろうに、女子高生が三人も出入りしてきて、相当ストレス溜まってるだろ? 悪いけど、これから四人になるわ。
「白ちゃんは同い年なの? 見えないわねぇ」
「白ちゃんって呼んでいい? それとも白お姉ちゃんのほうがいい?」
母さんも妹も、すっかり白のこと気に入っちゃったもん。これ、頻繁に出入りするようになるよ絶対。
妹はともかく、母さんはそれでいいのか? 電話でイクイク詐欺してきた女だぞ?
「お義母さんも二児の母には見えませんよ」
「あらあら、良い子ねぇ」
いい歳こいてお世辞を真に受けてんじゃねえ!
「ねぇねぇ、白ちゃんって呼んでいい?」
「いいよー」
「わーい!」
妹をたらしこむな! お前そういうキャラじゃねえだろ! もっとつっけんどんなメンヘラコミュ障だろ!
「小五郎、こんな良い子を泣かせたら承知しないわよ?」
母さん、アンタは結局、俺を誰とくっつける気なんだよ? 現時点で四人も迎え入れてるけど、どう頑張っても三人は泣くことになるぞ。予定では四人とも泣かせるつもりだけど。
「白ちゃんを泣かせたら、お兄ちゃんを泣かせるからね? いや、泣くこともできなくしてやるからね」
妹よ、成長したな。いつの間にそんな凄みを身に着けたんだ。でも兄ちゃん、その成長は嬉しくないかな。純真無垢な妹ちゃんでいてくれよ。
「白ちゃん、お昼ご飯食べていくわよね?」
「あっ、じゃあお言葉に甘えて……」
……うん、まあ予想の範疇だよ。でも晩御飯はやめてね? 言っとくけど、お泊りだけは絶対やめてくれよ? 荷物を取りに帰ったりしないでくれよ?
「さあて、お話聞かせてもらうかな?」
楓さん、可愛らしいお声ですが、目が笑ってません。弱小事務所のVtuberでも、もう少し表情豊かです。
「えっとだな、コイツは同級生の聖白だ。どこのクラスかは知らんし、正直コイツについて詳しいことは知らん」
メンヘラだってことと、父親と祖父が肉体的に強いってことは知ってる。母親と祖母のほうが立場的に上だから、強さを感じなかったけど。
あとフィジカルが強い。殴りあったら負けると思う。
「ほー? 坂本は、よく知らねー女と抱き合って頬ずりすんのか? かぁー! さすが生粋の女たらしだなぁ?」
あっ、そうか……そういえばあのシーンを見られてたのか。その後が怒涛の展開すぎて忘れかけてたけど、かなりヤバいシーンを見られてたわ。
どう誤魔化せばいいんだ? あれを見られた以上は、呪いとか関係なしに丸め込めねぇだろ。
「さんざん褒めちぎった挙句に告白までしてたよね? 幼馴染の私にさえ、そこまでしてくれないのに……。なんで? なんでその子なの?」
「ええっと……アレは機嫌を取るためで……」
嘘はついてない。大声で騒ぎだしたから、一時しのぎのために仕方なくだよ。お前らに臭いセリフを吐いたり、キスしたりする時も同じだからな? 俺の意思でそういう言動を取ったことは一度たりともないはずだぞ。
「は? ゴマすり? 私にしか欲情できないくせに?」
「悪いが誤解だ、それは」
解呪師の白を敵に回すのは怖いけど、呪われた三人を敵に回す方がよほど怖い。一人を敵に回して、三人を抑える。どうよ? 合理的だろ? 下手に全員を抑えようとしたら、最終的に全員敵に回ることは必至だからな。
それに白はただのメンヘラだ。呪われたヤンデレ組は絶対に話が通じないけど、白なら後で謝りながら説明すれば納得してくれるはず。この場さえやりすごせば、なんとでもなる……!
「何が誤解よ! 一晩お泊りしただけで、子供を作ろうとしてきたくせに!」
「してねぇ!」
勃起と子作りを結びつけるのやめてくれ、生理現象だから。お前も男になればわかるよ、勝手に勃起するから。うん、脳内とはいえ勃起を連呼させないでくれ。
「それにサウナで私を傷物にした挙句、いやらしく舐めてきたじゃない。欲望の赴くままに私の体を」
「傷物っていうな! お前が熱々のお湯をぶっかけてきたから、そのせいで腕をひっかいちゃっただけだろ! 俺は被害者側だよ!」
いや本当に、火傷しなくてよかったよ。あんなん反射的に殴ってもおかしくないからな? ひっかき傷ぐらい安いもんだろ。
「一緒にサウナに入ったの? っていうか舐めたのは事実なんだね。へぇ? よく知らない女とサウナに入って、舐めまわしたんだ。しかもそのまま子供を作ろうとしてたの? うわぁ……嫉妬を通り越してドン引きかなぁ。拷問したいところだけど、とりあえず脱いでくれるかな? 別に変な意味はないよ? ただ、サウナって数ヶ月ぐらい生殖機能に悪影響を与えるんだよ。だから異常がないかこの場でチェックしないとね。ほら、早く脱いで? ねぇ、なんで脱がないの? さっきも一緒におトイレするの嫌がってたし、本当に私のこと嫌いになったの? これだけ私が心配してるのに脱がないってことは、私のことが信用できないってことだよね? ちょっと痛いと思うけど、私を安心させるためなら屁でもないはずだよ。じゃあなんでチェックさせないのか。理由は簡単、私達三人を捨てる気満々だからです。あー、こんなポッと出の女の子に寝取られるなんてショックだなぁ。もういいや、いっそのことチェックの必要をなくすよ。チェックするまでもなく答えがわかればそれでいいじゃん? 正常かどうかはチェックしないとわからないけど、不能になったことはチェックしなくてもわかるよ。大丈夫、私みたいにスマートな女の子でも全力で踏みつければ……」
「チェックお願いします!」
「きゃっ!」
母さんと妹が部屋に入ってこないことを祈ろう。いくら家族でも、下半身丸出しのところは見られたくないからな。
「さ、坂本、急にチンコを出すなよ。まだ慣れてないんだよ、アタシは」
うるせぇな、もう今更だろ。さっきもトイレで見ただろ、お互いに。
思い返せば思い返すほど異様な空間だったな。全員下半身丸出しって、事件だろ。
「アンタ、ギャルのくせにこんなショボいのにビビッてんの? ダッサ」
おい、ショボいって言うな。別にショボくねーし。っていうか語れるほどの経験ないだろ。家族のしか見たことないくせに。
「は、はぁ? ビビッてねーし! この前、洗ってやったし!」
「……どうやって?」
「どうって……タオルでこう……寒風摩擦みてぇに」
うん、そんなことあったね。かなり痛かったから、ぶん殴りそうになったよ。女子高生に体洗ってもらってるのに、性的興奮よりも怒りによる興奮が先に来るとは思わなんだ。
「うっわ、普通は手に石鹸とかボディソープつけて洗うのに……ギャルのくせにできないんだ。ダッサぁ」
ギャルをなんだと思ってるんだよ。っていうか人の局部を指差しながら、猥談しないでくれ。色々あったおかげでマヒしてた感覚が戻りそうだから。
「聖、あんまナメんなよ? アタシが本気出せば、そんぐらい余裕だから」
ナメるって単語を使わないでほしい、今に限っては。反応しちゃうから。
「本気出さなきゃできないんだ。こんなのごときに」
俺にもプライドがあるから、いい加減にしてくれないか? お前だって貧相な体してるくせによ。っていうかお前も少し赤面してるじゃん。ビビってるじゃん。
「聖さん、あんまり小五郎ちゃんを悪く言わないでもらえるかしら? じゅうぶんご立派じゃない。ねー?」
委員長、顔見て話そうよ。局部に話しかけないでくれ、ちょっと息がかかったぞ。
ヤバい、早くパンツを履かないと……生理現象が……。
「か、楓……。早くチェックとやらを……」
「え? ああ、ごめんごめん。いつ見てもいいなぁって思って」
感慨にふけらないでくれ、そんな良いものじゃないから。言っとくけどな、自分だけ脱ぐってシチュエーションは、めちゃくちゃ恥ずかしいんだからな? 風呂場とかならまだしも、部屋で脱ぐってのがそもそも恥ずかしいんだよ。
「でもね、良いと思う反面……」
「反面?」
「もったいないなぁって」
は? 意味わかんねえこと言ってないで、さっさと済ませてくれよ。一刻も早くズボンとパンツを履きたいんだよ。
「だってさ、幼馴染じゃん? 相思相愛の幼馴染なんだから、普通はアルバム作るでしょ? 朝顔の観察日記みたいな感じで、毎日写真撮ってアルバムにするよね? 一年前と比べたりとかさ。でもあの日、小五郎に捨てられたからアルバム作れなかったんだよね。私は小五郎が改心する日を夢見て、自分の裸体を毎日撮影してアルバムを作ったけど、本当なら小五郎に撮ってほしかったなぁ。そうだ、今日からでも始めようよ。その恰好のままで待ってて、家からカメラ撮ってくるから」
待って? 何一つ理解できなかったんだけど、勝手に離席しないで? っていうか撮影はマジでやめよ? 記録に残したくないから。
「撮影かぁ……いつでも見れるから別にいらないと思ってたけど、せっかくだし撮っておくか」
白さん!? なんでスマホを向けるんですか!?
「や、やめろ、撮るなっ! っと!?」
あっ、やべっ……足がもつれ……。
「きゃっ!? んぐっ……」
……昔さ、少年漫画とは思えないくらいエッチなラブコメを読んだんだよ。
ラッキースケベ満載の漫画でさ、その中でも飽きるほど見たシチュエーションがあるんだよ。それと同じシチュエーションになったよ。
違うところがあるとすれば、男女逆ってことかな。死ぬほど痛かったし、死ぬほど申し訳ない気持ちになった。すまん白、これは事故なんだ。ああ……ショックでピクピクしてる。トラウマにならないといいんだけど。
委員長、熊ノ郷、これは違うんだ。女の子に生で顔面騎乗する趣味なんてないんだよ。するとしてもこんな勢いよくやらんし。
待って、熊ノ郷。首絞めないで……まだ局部のダメージが収まってないから……。
あかん……意識が……。
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