第38話 母、祖母、公認。父、祖父、容認
お泊りが決定してからは一切修行が行われず、夕食の時間になった。
白の家族とご対面することになったわけだが、まあなんていうか普通。強いて言うなら白の母親は、ウチのオカンと違って美人だなぁってぐらい。
父親とお爺さんは、俺に対して厳しい目を向けてきた。おそらくだが、大事な娘、大事な孫に手を出そうとしている危険人物だと認識されているのだろう。
まあ、母親とお婆さんに凄まれて、今ではすっかり大人しくなってるけど。どこの家庭でも女性が強いんだなぁ。
「ええっと、タコ……じゃなくて、小五郎君だったね?」
「え、ええ……タコでもイカでもなく、小五郎です」
めっちゃ敵視してくるやん、この親父さん。なんか『キミが娘の彼氏だね? 母さん、ちょっと棚からショットガンを持ってきてくれ』とか言いそうな雰囲気を醸し出してるんだけど。
「いいかね? 最近の若者はませているようだが、恋愛というのは大人になってからするものであってだな……。まあ、なんにせよキミのような、馬の骨にも劣る凡骨なんぞに……あだだだだだ!」
「お父さん? ちょっとお話しましょうか?」
俺にあらん限りの罵詈雑言を浴びせていた親父さんだったが、愛する妻のアイアンクローにより今際の際に立たされている。
「お父さん? 私も若くないから、もう子供は産めないのよ」
「そ、そうかい? キミは今でも若々しいと思うが……」
命乞いの仕方に親近感が湧くな。女性に追い詰められた男性って、得てしてこんなものなのかもしれない。
「私が子供を産めないってことは、お父さんも子供を作る能力いらないわよね?」
なんか猟奇的なヤンデレっぽいこと言い出したぞ? 楓達も呪いが悪化すれば、ああなっちまうのか?
「ま、待ってくれ。俺はまだ男でいたいんだ」
「あら? 娘の成長を素直に喜べないような人が、男を語るのかしら? それは語りじゃなくて、騙りね。男らしくない人は男を捨てるべきだと常々思うの」
白、お前の母ちゃん凄いな。絶対、反面教師にしろよ。俺には無関係な話だけど、お前の夫が苦労することになるから。
「じゃあ、私はこの人を男にしてくるから……まあ、もしかしたら女にしちゃうかもしれないけど……。そんなことは気にせず、若いお二人で楽しんでね」
「は、はい……」
冗談に聞こえないのが怖いな。奥の部屋から悲鳴が聞こえてきたらどうしよう。
親父さんが早口で命乞いしてるけど、白はガン無視して俺の腕に自分の腕を絡めてきている。おい、助けてやれよ。お前のパパがママになっちゃうかもしれないんだぞ。ダブルママだぞ、ダブママ。
「助けなくていいのか?」
「大丈夫よ。お母さん、別にスポーツとかやってないし」
……? だから?
「逆に、さっきも言ったけどお父さんはスポーツマンよ。だから大丈夫」
……? は?
お前、筋骨隆々なスポーツマンでも耐えれないものは耐えれないからな?
まあ、俺の体じゃないからどうでもいいけど。タコ呼ばわりされたし。
「ああ、そうそう」
「は、はいっ!」
退室したはずの母親が、ひょっこり顔を出してきた。見えないけど、ドアの向こうでは夫の首根っこ掴んでるんだろうな。
「お風呂湧いてるから……仲良くね」
……もうすでに混浴済みなんだよなぁ。いや、混浴っていうのかわからんけど。
出会ったばかりなのに母親公認かぁ。俺の母親といい、この人といい、世の中の母親ってこんなもんなの?
「だ、ダメだ! 許さんぞ! そんな情けない顔のヌケサ……ぎゃぁ!?」
「情けないのはどっちでしょうねぇ」
「あだだだだ! ギブギブギブギブ!」
何が起きてんだよ、扉の向こうで。ホラーって映像がないと逆に怖いのかもな。
「男なら大声出すな」
めっちゃドスが効いた声が聞こえてきたけど、まさかお母さん? あの顔で、そんな声出せるの?
あっ、父親の悲鳴が聞こえなくなった。よほど怖かったんだろうな。今この瞬間も痛いことされてんのかな。
「アハハ、情けないお父さんでごめんね」
「……気にしないでくれ、白」
なお、お爺さんも似たような態度だったが、お婆さんと似たようなやり取りをした末に退場していった。あの……年が年ですから、あまり無茶は……。
「なーんーでー!」
ああ、うるさいうるさい。親御さん来ちゃうから、大きな声出すなって。
「さすがに混浴はダメだって」
「なんでよ! 今更すぎるわよ!」
それはそうかもしれんけど、それとこれとは話が別だろ? 骨折経験あるから骨にヒビが入る程度は問題ない。とはならんだろ?
「タオル巻くからいいでしょ?」
そういう問題じゃないんだよなぁ。俺ら、出会ったばっかりだぞ? 本来、お泊りする時点でやりすぎだぞ。
それにお前、本当に最後までタオル巻くのか? 徐々にボルテージ上がって、脱ぎだすだろ? なんだったら、舐め合いを始めるだろ? もしかしたら挿入……。
「坂本、私って実は結構頭良いのよ?」
「まあ……真面目そうではあるけど」
意地でも頭の良さについて肯定したくなったので、若干ずらしておいた。
遠回しにバカ呼ばわりしたつもりなのだが、得意げな顔をしてらっしゃる。ああ、バカだコイツ。
「十一ケタの数字ぐらい、パパッと覚えられるわ」
「へぇ……そりゃまあ、中々」
えらく中途半端な数字を出してきたな。少し時間をかければ誰でもできる程度ってのが、物悲しいところではあるが。
「大体最初はゼロ八ゼロとか、ゼロ九ゼロだから、覚えやすいってのもあるわね」
……なんか、めっちゃ聞きなじみがある三ケタの数字が……。
あっ、まさかお前……。
「じゃっ、ちょっと電話してくるわ。あっ、先にお風呂入ってていいわよ? 長電話する予定だからごゆっくりどうぞ。さてと、とりあえずイメージ練習ね。暴力で無理矢理股を開かされて、濡れてない状態で強引に挿入されたシチュエーションをイメージしましょう。なんならビデオ通話もありね。徹底的に自分の顔をボコボコにすれば信憑性が……」
「ま、白!」
「ん? どうしたの? 今、脳内のアンタに殴られてる最中なんだけど、邪魔しないでくれない? ほら、見える? ここにアンタがいるんだけど」
いや、見えねえよ。俺には、ただ仰向けになってるだけの白しか見えないよ。
「一緒にお風呂に入ろう! タオル有りなら、別にそこまで固いことは……」
「お風呂でタオル巻いたら洗濯物増えちゃうわよねぇ。それに体洗う時邪魔だし、お家のお風呂に入ってるっていう安心感が消えるっていうかぁ。なんていうかタオルという壁が心の壁、距離のように感じてぇ」
「やっぱタオルなくてもいいや! 裸の付き合いでお前と心を通じ合わせたい!」
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