村の英雄?

逃げるようにお父様との会話を後にする。

部屋を出ると、オッズさんに話しかけられる。

「おお、お嬢ちゃん、よくわからんが大活躍らしいじゃないか。

村長と白い魔物に乗り、敵をバッタバッタと。

えらく頭の周るお嬢ちゃんだとは思っていたが、武勇までついてくるとちょっとした英雄じゃないか!」

「え、英雄ですか?

私、普通に女の子なんですけど。」

「おいおい、どこにあんな屈強な魔物を乗りこなして敵をバッタバッタとなぎ倒す普通の女の子がいるんだい。

村のみんなも歓迎したくてうずうずしているみたいだぞ。」


ひぇぇえらいことになった。

影の実力者を目指していたらうっかり表舞台に立ってしまったようなそんな感じだ。

もっとも、この奴隷たちばかりの村での噂話など、他の村だの町だのでは全く相手にされないだろう。

それはいいのだが、しかも私の魔法的には都合がよいのだが、女の子なんだよなぁ私。


「なんでもなんて二つ名まで出回っているらしいな。

まぁこの村の中だけだろうから安心してくれよ。」

「安心ってなんですの?

なにも安心でないというか恥ずかしいんですが。」

「大丈夫だろ、村長なんてという二つ名がついたらしいからな。

まだ個人名でないだけ、マシ、アッはっは面白いなぁお嬢ちゃん。」

「何も面白くありませんわ!

しかしアリアナさん、あまりに豹変しすぎて何かと思いましたわ……」


ワゴンカーならぬワゴンレムに乗ってテンションが爆上がりしたアリアナさんは私の指示など全く聞かずにノリノリで運転していた。

なんだったんだあのUターン、どんなテクですか。

嬉しそうに嬉々として賊を轢きまくるアリアナさんには私もドン引きしたし、酔ったし、だいぶしんどい時間だった。

アリアナさんの運転する車には乗りたくない、この世界での初トラウマとでも言うべき体験をした。

ワゴンレムから降ろすのも大変だったしとにかくハイになっていた。

きっとこれからもアリアナさんを見るたびにあの獰猛な笑顔を思い出してしまうに違いない。


風にあたりたくなって村を少し歩こうと思った。

しかし、村の様子がなんだかおかしい。

なんだか活気があるような?

「お!レイシアお嬢さんがいるぞ!!!」

「なんだって、あの村の英雄、疾風のお嬢様が!」

「おおおお、レイシアお嬢様万歳!!」

うわ、見つかってしまった?

いろんな村の人たちが手を振ってくれている。

これは確かに英雄扱いというのも嘘ではないようだ。

「お嬢様、握手を!」

「お嬢様、あの白い魔物は何ですか?」

「お嬢様「お嬢様「疾風の「爆走

最後誰だ、それはアリアナさんじゃないか。

私は違う、私はあんな、よそう、アリアナさんを悪く言いたいわけじゃないんだ。

仕事はやりやすくなったと思うが、思ったのと違うやんけ、やさぐれそうである。

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