ひとまずの期待と襲撃

「まぁ、やってくれるというものを最初から否定するのもうまくないだろ。

お嬢ちゃん、それなら、大工、鍛治、料理、あとは体が悪いやつがやれる商売もあるならそれを。

農家はこの通り自給自足みたいなものだから、分かる奴が多い。

でも、お嬢ちゃんは物知りそうだからな、もし農家のやり方でもっとうまい方法があるなら入れといてもらえるといいな。」


大体予想通りかな、あとは木工、勘定も入れておけばうまく仕事に就けるはず。

「ありがとうございます、オッズさん。

良いお話を持って来れるよう頑張りますね。」

「期待してるよお嬢ちゃん、よろしくな。」


そんな風に話がまとまった時だった。


「賊が出たぞ!戦える奴は門まで来てくれ!」

さてと、困ったな、予想外のトラブルだ。


「レイシア、アリアナ、無事か?」

「領主様、私達はこの通り無事です。

一体何がございましたか?」

お父様が慌てた様子で応接室までやってきた。

どうやら盗賊団が村に襲撃してきたらしい。

それなりに装備がしっかりしている戦えそうな連中らしく、村人たちが戦っているが苦戦しているらしい。


「お前達は、ここの裏から逃げさせる。

これでも私は貴族だ、私が指揮を取ろう。

オッズと言ったか、ここの倉庫にいくつか装備があるから持っていけ、なんとか持たせろ。」

「しょうがねぇやるしかねぇか。

お嬢ちゃん達、まぁ生きてたらさっきの話はよろしく頼むぜ。」


大変な状況だろうに私はどうやら冷静だ。

オッズさんは戦いの才能があるらしい、ポテンシャルの数字が0になっている。

とはいえ、もしかすれは力不足かもしれない。

この世界がゲームの世界を映すならばお父様はここで死ぬ定めではない。

死ぬのは、シナリオ終盤だ。

しかし、それ以外がどれだけ死ぬかは定かではない。

本編に出番がない人間の生死は何も保証が無いのだから。

それはまぁ、私もそうか。


さてと、私にできることはあるだろうか。

私の当然魔法は周囲の影響を強く受ける。

ハッタリが重要、勢いが重要、とにかく回りが信じれば現実になる。

あいつはなんかやってくれそうだ、あいつならばやってもおかしくない、むしろ当然だと、そう思わせることが出来ればあるいは。


いや、むしろだれも私を疑っていない、ある意味では無名の今ならば?

私の想像力だけで、私を信じ切ることが出来れば、それは当然に効果を発揮するのではないか。

一個だけ、とにかく何か私が出来て当然のことを。


私にとって当然の手足、馬力があるもの、力、機動力。

営業の私にとっての手足とはあのに決まっている。

思い出せ、クライアントを駆けずり回ったあの日々を。

、さぁ行くぞ!

その瞬間まばゆいばかりに輝く四角い大きな立体が目の前に現れた。

光が収まり、そこにあったのは、見慣れたワゴンカー。

沁みついた社畜根性に感謝するばかりであった。


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