【ヴァレリー視点】子供たちの成長
私はヴァレリー・サージエス。
侯爵であり、財務大臣を担っている。
自分の名前と立場を確認する、このモーニングルーティンは毎日欠かさずに行っている。
子供たちにも自らの立場を自覚するよう求めるならば、まずは私が範を示さねばなるまい。
私の子供たち、アリシア、レイシア、レイオス。
みな、親のひいき目など無しとしても非常にしっかりと育ってくれたように思う。
むしろ5、6歳というにはあまりに成長が早すぎる、いやあの歳の子供たちならばそれくらいになってもおかしくはなかったか。
いずれにせよ子供たちの育ち方など本当に万別、他と比べることが間違っているのだ。
思考が逸れてしまった。
私が次代の子供たちに引き継がねばならないことがいくつかある。
財務大臣としてこの国を見てきたからこそ分かるが、危うい。
オリガという争いの頻発する地と隣接する我が領もそうだが、貧する民とそうでない者たちの差が非常に大きくなり始めている。
貴族と平民の差などはまだわかる。
しかし平民と平民の差があまりにかけ離れるのは、
最低限の生活が、あまりに許容できない程度に下がり続けている。
ポーラン村は、私で終わらせるわけにはいかない。
私なりの一つの挑戦としてどこまでも貧してしまった民たちを救い上げるために、生活の基礎的な部分を身に着けてもらうための場所。
あれを子供に引き継がねば、火が立ち消えてしまう。
私からすれば、何か一芸に秀でるということはそれはそれで素晴らしいが、上に立つということは清濁呑まねばならない。
レイオスの魔法の才能は素晴らしいが、おそらく政治には向かない。
地位がもたらす力は適切な目的のために行使されねばならぬ。
そもそもレイオスには地位など必要なかろう、おのが力でやっていける。
その点、アリシアとレイシアはそういった分かりやすい才能には恵まれなかった。
しかし、分かりにくい才能には恵まれたようだ。
まずレイシア、普通ならば子供らしい自己顕示欲、いやもう少し純粋な褒めてほしいというような感覚があろうに、期待を超えないことを徹底しているような。
能ある鷹は爪を隠すというが、いったい何を隠しているのか。
とにかく驚かない、冷静だ。
そしてアリシア、レイシアとうまく付き合っている。
まるでレイシアの成長に引っ張られるように底知れぬレイシアによくついていく。
この間の商談、そう、6歳の娘が商談をもってきたのだ。
しかも、情報で商売をしようとは、驚くほかなかった。
話に隙らしい隙も無い、とはいえ、これはさすがにアリシア一人で考えたわけではないだろう。
使用人たちが思いつくようなものではないとすると、もしかすればレイシアか。
私の裏の仕事を知っているのか、いや、そんなそぶりは見せたこともなかったはず。
しかし、私に都合がよすぎるのだ、アリシアの持ってきた商売は。
そしてちょうど悩みの種であった、裏の仕事の引継ぎにレイシアが収まる。
考えすぎだろうか、いずれにせよ任せてみればわかるか。
レイオスには想像以上に大変な思いをさせてしまいそうだ、このとんでもない姉妹の弟とは。
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