裏の仕事とポーラン村
さて、お姉様の話によると私が人材の調整をするらしい。
人材というが、おそらくビンゴだ。
ついに例の裏の仕事の話がくるに違いない。
「レイシア、入りなさい。」
「はい、お父様、どうしましたか。」
「さて、レイシアも6歳になった。
少しばかりやってもらうことがあってな。」
冷静に考えてみるとこのお父様、本当に普通の子供の発達を知らなすぎるのでは。
それともこの世界では子供の育ちが異様に早いのだろうか。
思い返せばお姉様も私の話に当然かのようについてきている。
「レイシアには、少しばかり驚くことかもしれん。
しかし、このような世界の中では、必要なことなのだ。」
「どのようなことでしょうか。」
「ついてくれば分かる。
馬車に乗るから準備をしてきなさい。」
馬車に乗ることしばらく。
少しさびれた領のはずれの村のような場所。
そこには、何か記号の書かれた首輪をつけた人たちが生活していた。
「お父様、これは?」
「この者たちは、生活が出来ぬほどに貧してしまったが、守る者がいたものたちだ。
ただ自分だけ貧したならば、貧しい中でも頑張りようはある。
しかし、家族などの守る者がいるために薬などを買うために自らを売ったのだ。」
「買う者たちがいるのですか。」
「ああ、この国では本来は犯罪奴隷しか認められていないがな。
そうして裏で売買されている者たちを私が引き取ってこの村に住まわせている。
自らを売る前に施せばよいのではないかと思うかもしれないがそうはいかないのだ。
そのあたりを分かっている官吏たちが目こぼしをしてくれている。」
「私は何をすればよいのでしょうか。」
「アリシアはこれからこの者たちに仕事をあっせんするという。
レイシアはここの管理人が行っているみなの管理を学び、アリシアに協力しなさい。」
当然だが、管理人が別でいるのか。
段階的に仕事を引き継いでいくということだろう。
いきなり投げ出されるということは無いようで、そこは安心した。
さて、少し村を見渡してみると、使われている言葉が一つではないことに気づいた。
「レイシアには何を言っているのか分からない者たちがいるだろう。
領に隣接するオリガの避難民たちもこの中にいる。
あそこは、時々戦争までいかない小競り合いが発生するのだが、生活できない者たちは出てしまう。」
本当は言葉は分かっているが言わないでおこう。
小さい声ではっきりとは聞こえないが、どうやら感謝をしているようだ。
このような待遇でも感謝をするとは、いったいどれだけ酷い経験をしてきたのだろうか。
「管理人を紹介しよう、おーいアリアナ、来なさい。」
「はい、領主様、アリアナ参りました。」
このような村の管理人というから、屈強な男性を想像していたが、15歳くらいのメイドが出てくるとは思わなかった。
しかもポテンシャルの数字は1桁。
ポテンシャルの数字は、王様のようなユニークすぎる肩書の方々が0となることが多く、それ以外だと能力不足もありうる。
1桁台ということは過不足がほぼなく、まさに適任ということになる。
このような仕事が適任とは、いったいどのような実力を持っているのだろうか。
「さてレイシア、アリアナがここら一帯を任されている管理人だ。
一応表向きにはこのポーラン村の村長ということになっている。
見た目で判断をしないように、非常に優秀だ。
パートナーとして対等に仕事をやっていくように。」
「滅相もございません。私などまだまだです。
ここにはあまり女性はいませんので、レイシアお嬢様とは是非とも仲良くしていただけるとありがたく思います。」
「こちらこそよろしくお願いしますわ。
非常に苦労も多そうなこの地で、そのお年で管理人を任されるとは、素晴らしいと思いますわ。」
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