商会の立ち上げ

「お父様、ご相談があります。」

アリシアお姉様がお父様と商会を立ち上げるための交渉を行うときが来た。

オリガ小国家群で広告・人材紹介業を行う。

エリザを表向きにアリシアお姉様付きの通訳として連れて行ってもらう。

前世の商売では穴ばかりだが、貴族とのコネがモノを言うこの世界では大きな問題ではない。

直接は大した利益にならずとも、異国の貴族とコネを作るよう自発的に娘が企画を持ってきた。

悪いようにはならないはずだ。

私は同席しないが、お姉様のことだ、うまく話をまとめてくれるだろう。


「どうした、アリシア。

今なら時間を作ることは問題ないが、何か話があるのか。」

「はい、以前お父様がお話になった、自身の立場なりにやるべきことをずっと考えておりまして、一つやってみたいことがあります。」

「続けなさい。」

「貴族の娘の立場として、様々な人と関わり、つながりをもち、経験を積むことは、いずれは領の役にも立つこと。

そこで、少しばかりの商売をオリガの地で行いたいのです。」

「商売か、ふむ、しかしなぜオリガなのだ。

わざわざ異国でやることでもあるまい。」

「理由は二つございます。

一つは、今の段階ではまだ、そう大きくは目立ちたくないこと。

やるからには成功をしたいと思っておりますが、かといって当たり外れがあるのが商売です。

領に悪影響がなきよう、まずはオリガの地で小さく経験を積むことから始めたく。

もう一つは、新しい繋がりを作ることです。

国内であればパーティなどの機会でお会いすることも叶いましょうが、他国となれば、やはりお互いに分かりやすい利益が無くては。

そして我が領はオリガと隣接していますから、情報を集めよくやっていく必要があります。

その点、商売という共通の目的をきっかけに繋がりを作るというのは、利があることかと。」

「わかった、その点は理解した。

次に何を扱うのか、目立ちたくないのであればあまり物流は使えないぞ。」

「扱うのは、情報と伝手です。

これまで、優秀な者が、伝手が無いばかりに十分な活躍を出来ないことを知りました。

そこで、一つは情報、貴族の娘としての立ち振る舞いと一定の資金で信用を確保し、まだ知られていないが優れたモノを広める商売、もう一つは伝手、やはり一定の資金で優秀な人材の身元を保証し、雇ってもらう商売です。」

「通訳はどうする。」

「メイドのエリザがオリガの言葉を話せます。

信用できますし、問題ないと思っております。」

「ふむ、あまりそのような商売を大っぴらにやっているところは知らないな。

ちょうどいいか、姉のアリシアが商売をするというのであれば、妹のレイシアにも少しばかり手伝ってもらうこととしよう。

人材を紹介するというのであれば、いくらか紹介をしてみてもらいたい者たちがいる。

レイシアに調整させるから、その者たちをとりあえず雇ってもらえるかやってみなさい。

それがうまくいくならばもっと資金を出そう。」

「ありがとうございます、やってみます。」


アリシアお姉様から聞くところによると、ずいぶんとうまく話が進んだらしい。

これで一歩進める。

後で聞いたが、お父様はお母様の前でだいぶ興奮気味に娘の成長を語っていたらしい。

どれほどうまく話をしたのか、本当に6歳か。

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