お姉様は商会主

「商売の顔ってどういうことかしら。」

「そのまんま、お姉様には商会主として例えば貴族の方々などの相手をしてもらいたいの。

子どもの考えた社会勉強とはいっても、他国とのやり取りがある以上、きちんと代表を立てて調整をしなければならないわ。

その点お姉様には才能がある。」

「私には自覚がないわ、でも他ならぬレイシアがそう言うのならば、姉としては信じるしかないわね。やるわ。」

「ではお姉様、改めてアリシア商会の商会主をお願いするわ。」

「分かった、よろしくね。」

その時、お姉様がわずかに煌めき、ジョブの文字が現れ始める。

もう一つの狙い、これを待っていたのだ。

しかし、その次の文字が現れそうなところでさらさらと砂が崩れるように文字は消えてしまった。

そして焼き印のように浮かび上がる悪役令嬢の文字。

ダメ元ではあったが、こうも強烈にキャンセルをされるのか。


「あら、今のはカーラと同じ?でも立ち消えてしまったわね。」

「アリシアお姉様は商会主くらいの器ではないということかしら。

これなら大丈夫そうね。」

「レイシアの能力にはよくわからないことが多いわ。

でも、それはいいわ、まずは何から始めるの?」

「今あるタスクは3つ。

一つはお父様に最低限商売の許可だけでも取らないといけない。

これはお姉様の調整が重要になるわ。

いくら私の頭に計画があっても、それが評価されるかは別。

説得力という点では、お姉様の調整力を頼りたい。

もう一つは人材の確保、これは私に当てがある。

奴隷を購入して教育をするわ。

そして最後に販路の確保ね。

オリガ小国家群では、さすがに大金が動くイベントなどは無いわ。

ただ、今目立つわけにはいかないから、オリガ小国家群で小規模に広告や人材の紹介を行って、資金調達を進めつつノウハウを獲得するわよ。」

「レイシア、こんなこといつ考えてたのよ。

それにちょっと私が言うのもあれだけど6歳が考えることではないわ。

お父様に不自然に思われないかしら?」

「それはおそらく大丈夫だと思うわ。

お父様にも課題があるはずなの。

渡りに船の提案になるはずよ、それに比べれば多少の不自然さは些事になるはず。

でも、私ではボロが出てしまうから、今話を聞いたお姉様が多少なり穴のある説明をすれば、お父様が勝手に補足して納得してくれるわ。」

「レイシア、あなたは何を知っているのよ。

もしかしてそれも夢のお告げだったりするのかしら。」

「あの時以外にもたまに見るの、ちょっと変わった現実のような夢を。

夢では心もとないかしら、お姉様。」

「いえ、いいわ。

外したとしても社会勉強にはちょうどいいわ。

それに面白そうじゃない!」


よかった、お姉様は乗り気なようだ。

これでこの話は何とかまとまるだろう。


ちなみにお父様の課題とは、まさにこの奴隷のことなのだ。

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