暖かな陽射し
ピクニックとはいえど、庭で食事をするだけだ。
メイドのカーラが同席することと、テーブルが小さいことを除けばそんな大それたことじゃない。
この国にも四季のようなものがあるらしい、その中でも今は春のような過ごしやすい季節だ。
「カーラ、今日はありがとう!」
テーブルに料理を並べるカーラへお礼を伝える。
「滅相もありません!
お嬢様方の大切な日常ですからね!」
「あ、ありがとう。無理はしないようにね。」
日常を強調するわね。
もしかしたらカーラは大人だから、ごっこ遊びの延長として、それでも仕事と思って真面目に付き合ってくれているのかもしれない。
「レイオス、このスープの野菜が美味しいわ。食べてみなさい。」
「はい、いただきます。」
お姉様はレイオスくんにちゃんと野菜を食べさせようとしている。
まぁ2歳と3歳なのでね。
好き嫌いが少ないのは良いことだ。
ピクニックと言いつつサンドイッチとかの生野菜はナシだ。
きちんと加熱したスープとか、塩分の少なめなスクランブルエッグとか、そういうものが並んでいる。
「レイシア、ピーマンを残さない!」
おや、バレてしまったか。
前世では食べられていたのだが、やはり現代のピーマンは品種改良で美味しくなっていたのだ。
というか、この世界観でピーマンはあるのおかしいだろうが。
確かにゲームをもとにした世界と思っているけれど、それにしてもピーマンはもっと最近の野菜だろうが。
子供舌なのか苦すぎて食べられない、レイオスに負けている。
「カーラ、あなたはピーマン好きそうね。
あげるわ!」
仕方ない、私はメイドの生活状況にも気を遣えるのだ、ピーマンを食べよ、健康になりなさい。
「お嬢様、雑すぎます。」
気付いたらピーマンは何事もなかったように私の皿の上。
おかしい、皿を移したはずでは?
まさか、メイドとしての腕を一段上げたのか?
などと楽しく食事をしていると、あっという間の時間だった。
うとうとしたくなるような暖かな陽射し。
不安に襲われる時こそ帰ってくるべき日常を見失わないことが大切なのだ。
危機を回避することも重要だが、優先順位を間違えてはいけない。
ここにみんなで帰ってくるんだという決意。
「レイシア、何を考えているの?」
「お姉様、陽射しが良くて眠たいなぁと思って。」
「そう、このピクニックはレイシアの思いつきだったわよね。
楽しかったかしら?」
「それはもちろん、またやりたい。
お姉様はどうだった?」
「私も楽しかったわ。
レイシア、最近心配だったのよ、お父様のお話があってから様子がおかしかった気がしたから。」
いや、お姉様本当に3歳児か?
ハナタレ小娘だった私基準で考えてはいけないのか?
最近の3歳児はこうなの?
おっと、驚きで変な反応をしてしまいそうになった。
「お姉様、ありがとう。」
率直な感謝を告げるのみだ。
お姉様、レイオス、まだ見ぬ攻略対象たち、そしてヒロイン。
この世界は、もしゲームの世界をもとにしているならば、大きな運命に巻き込まれることとなる。
そして強制力というか、私が対抗する行動をとっても、イベントスチルにある光景は避けられないのかもしれない。
もしその時は、私は。
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