サージエス家

今日はお父様と少し真剣な話をするらしい。

メイドのエリザに普段よりきれいな服とわずかの化粧をしてもらい、お姉様と一緒にお父様の執務室へ向かう。


部屋へ入るとお父様とお母様が上質なソファーに並んで座っている。

私とお姉様は対面に、なるべく最近習った礼儀を意識して座る。

普段、穏やかな両親も今日は少々真剣な表情に見える。


「さて、アリシアとレイシアは3歳になったな。

父として健やかに育ってくれたことを嬉しく思う。

そろそろ我が家系、サージエス家について少し話しておく。」


サージエス家、どこかで聞いたな。

アリシア・サージエス、レイシア・サージエス。

具体的には前世で遊んだ乙女ゲームで。

アリシア、まさかアリシア!?


「どうしたのレイシア、驚いたような顔をして。」

お母様が不思議そうに尋ねてくる。

やばい、顔に出てしまったか、私は幼女なのだからそういうこともある。

「な、なんでもないですわ。」

「あらそう、それじゃあいいわね。お父さんに話を戻すわ。」

驚きで謎にお嬢様言葉が出てしまった、そういう教育を受けているのだが。


「さて、私はヴァレリー・サージエス侯爵として財務大臣を担っている。

二人には難しいかもしれないが、要はこの国の偉いやつということになる。」

お、おう。

私は段々と思い出してきたそのゲームの記憶の中で、確かにアリシアは財務大臣の娘だったなと分かったが、急に言われても反応に困るな。

これは偶然か、あるいは本当にゲームの世界に?

ちゃんとした幼女ならどんな反応をすべきなのか、と困っているとお姉様が返事をする。

「お父様は偉い人なのですか?」

あぁ、さすが本物の幼女、幼女のプロ、もはや幼女先輩だな。

精神が大人の私にはそんなストレートな質問は出来ない。

でも、幼女だったら聞いちゃうよな~~ありがとうございます。


「ああ、そうだ。いや、自分で言うのもあれだが。

偉い人の子供ということは、いろんな人から注目されるということだ。

偉い人間は、偉い人間なりに頑張らなければならないことがいっぱいあるということだ。」

お父様、幼女に理解させるために相当頑張って噛み砕いているけれど、たぶんあまり伝わってないですわよ……。

ちょっと子供に聞かせるには早いのではないだろうか、それとも度々聞かされることになるのだろうか。

ほら、お姉様も若干首を捻っている、可愛いな。


「前置きが長くなってしまったな。

いや、二人を呼んだのは、アリシアとレイシアがお姉さんになるから、弟をちゃんと助けてやってほしいということなんだ。」

弟?弟とは、もしや攻略対象にいたあの弟か!

確かに悪役令嬢のアリシアには弟がいたはずだ。

ここがゲームをもとにした世界であるならば。


「では、レイオス、入ってきなさい。」

メイドに連れられて入ってきたのは少し年下に見える男の子。

うん、将来イケメンになるぞって雰囲気のある、でも今はおとなしそうな子だ。

髪は綺麗な緑色をしている。

しかし、私が目を奪われたのは彼の右上に見えるポテンシャル。

「480,217」という数字で揺らぎが無い。

その名前は確かにゲームの攻略対象であり、だとすれば、能力があるには違いない。

しかし、お姉様の10万オーバーとは、なんという潜在能力か。

彼は確か魔法でエリートの座を勝ち取ることになるはずだ。


「……。」

あ~怖がっちゃってるのか。

ふるふると一言も喋れてないよレイオスくん。

しかし、可愛いな。




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