頑張っていること
またしばらくの月日が経ち3歳となった。
少しずつだがこちらの言葉を話せるようになってきて、そしてアリシアお姉様は相も変わらず可愛らしい。
まぁ、双子な私もそっくりな顔をしているが、自画自賛ではないので。
おしめを付けていた頃の「れいしゃ~~」とよちよちと歩いてくるお姉様も可愛いかったが、今はもうある程度しっかりと「レイシア」と呼ばれるようになった。
まぁ、双子な私もおしめを付けてよちよち歩いていたのだが。
図鑑のようなものを読んだり、礼儀作法のお勉強が始まったり、その中で賢さの片鱗を見せている。
お姉様のポテンシャルの数字は今もまだ変わらない。
子どもは発揮する場面が無いからもしかしてみな変わらないのだろうか。
さて、最近ポテンシャルの数字に変わった動きをする使用人のメイドがいる。
揺らぎがなくなり、数字が段々と増えているのだ。
能力を発揮していない、つまり仕事をサボっているということもない真面目で勤勉なメイドの一人で、名前はエリザだ。
もしかして、彼女の能力の高まりに仕事が追い付いていない?
これはあれだ、退職理由によくある仕事と報酬が釣り合っていないとか、そういう話が出てきてしまうのでは?
そこで私は、この幼児としての立場を利用して、何も知らないふりをして話を聞いてみることとした。
「エリザ、何か頑張っていることある?」
「レイシアお嬢様、急にどうされました、頑張っていることですか。」
おっと困惑させてしまったか、確かに突然頑張っていることを聞かれても子供に説明しにくいだろう。
幼児だからふと思いついたように聞いてみたが、何か言い訳をしないと。
「レイシア、最近お辞儀を頑張っている。
みんなは何か頑張っていることがあるのか知りたい。」
自分の頑張りアピールをしつつ、ただの好奇心っぽくしつつ。
「あらあら、レイシアお嬢様は偉いですね!
私は最近、趣味で隣国の言葉を勉強しています。
お仕事では使う機会がありませんが。」
「隣国の言葉!すごい!エリザは偉い。」
「ありがとうございます、でもレイシアお嬢様もお勉強されるときが来ますよ。
頑張ってくださいね!」
知りたいことは分かった、エリザを仕事に戻してあげないと。
手を振ってお花を摘みに。
そうか、趣味の異国の言葉のお勉強だったのか。
本職を上回るレベルの適正になりつつあるとは、普段の仕事をこなしつつとすると相当優秀だ。
いつか活用できる機会を作ってあげよう。
それはそれとして、ポテンシャルの理解が深まった。
今やっている仕事の能力よりも、仕事に使わない別の能力のほうが高まった時はポテンシャルに揺らぎがなくなる。
使用人という仕事は総合能力が要求されるので、大体は特に向いている仕事があるものだが、さすがに隣国の言葉は使う場面が無かったか。
もっと普通の仕事をしている人たちだとこのようなミスマッチもあるのかもしれない。
ずっと考えていたのだ。
転生モノみたいな物語では、異世界チートとか言うように文明レベルの差や特殊能力を活かして大活躍するのがお約束だ。
しかし、この世界はどうにもちぐはぐで、日本人が思い浮かべるよくあるテンプレ中世みたいな感じなのに、じゃがいもなどの分かりやすくチートが出来そうな食料関係は割と普及している。
もしかしたら他にも転生者がいたのかもしれない。
それに私は別に理工学に詳しいわけじゃない。
出来る人がやりたいことをやって活躍して、その結果として文明や文化が発展するというのが感動的なのだ。
なので私は内政チート、それも他人任せで生活レベルを上げるのだ。
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