ポテンシャルとお姉様
さて、泣いて喚いてお漏らしして、を幾度か繰り返し、今振り返れば最高に自由な時間も過ぎ去ったある日。
やっと首が落ち着いて、周囲が見えるようになって、状況が分かってきた。
まず私の名前はレイシア。
この国の言葉としては厳密には発音が違いそうだが、気にしないこととする。
そして、あの超絶美人な金髪女性はお母様、ダンディなナイスガイはお父様だったらしい。
知らない人たちが何人かいたが、どうやら使用人というかいわゆるメイドや執事と言われる人たちだったようだ。
なんと貴族の家の子供として生まれ変わったらしい、あの日の青い鳥はとんでもない幸運だったのだ。
そしてお姉様がいた、私は一人っ子ではなかったのだ。
名前はアリシア。
おそらく双子のようでどちらが本当のお姉さんなのかは分からない。
しかし、私は前世では姉が欲しかったのだ。
だから、同い年の双子らしいので、私はお姉様と心の中で呼ぶことにした。
ポテンシャルという数字の謎は今一つよく分からない。
お父様やお母様は貴族できっと優秀なのだろう。
それは使用人が生き生きと働いている様子からなんとなくそう思っている。
しかし、ポテンシャルの数字は非常に低い。
それこそ1桁くらいの数字を揺らいでいる。
揺らいでいる、というのは、数字がちょこまかと増えたり減ったりするということだ。
例えば使用人の中では、100~200くらいの数字が平均的だ。
そして、やっている作業によって1~3くらい、多くて10くらい増えたり減ったりする。
どうやら手際が比較的いい作業の時には数字が減り、手際の比較的悪い作業の時には数字は増えているように見える。
活躍している時に数字が減る、優秀そうなお父様やお母様の数字が低い、そしてポテンシャルという表現。
ポテンシャルは潜在能力とも表現するから、すなわち、表に出ていない、活用されていない能力の数字なのではないかと仮説を立てた。
お父様やお母様は、貴族という立場でそれをフル活用しているから数字が低いのだ。
さて、そんな仮説を立てたうえで、お姉様の数字を見ると、約36万もある。
厳密には「360,284」、お姉様の数字は大きさもそうだが、揺らぎが一切ないことも特徴的だ。
しかも、最初にお姉様を見たときから数字が変わっていないのだ。
何回も見ているのでさすがに数字を覚えている。
この数字には何か意味があるに違いない。
もしこの国の言葉のごろ合わせだったりしたら、まったく意味が分からないが。
異世界に転生と言ったら魔法とかがあるのでは?と思ったし、実際にあるようなのだが私には使えない。
使用人の中には水をどこからともなく出して、庭の花に水やりをしたりしている者もいるのでごく限られた人間だけの能力でもないらしい。
悔しいので、時々試そうとするのだが、使用人がいつも目を光らせており、危ないことはできないなとも思ってしまう。
思い切りが必要なのではないか。
そう、赤ちゃんなのだと割り切ってお漏らしを遠慮なくしたあの時のように。
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