第1章 私とお姉様と可能性

挫折と始まり

私の能力不足か、あるいは何か。

とにかく、私は限界を感じていた。

人間の可能性を拓くことを期待して、職業紹介の仕事に就いたのに、理想と現実はやはり厳しい。

分かっていたけれど。


今日はクライアントから求人情報を頂き、記事をまとめてアップロード。

その合間に仕事を求める求職者の方とメールでコンタクトを取る。

なんでも面接で嫌な態度を面接官にされたらしく、速攻で辞退してきたらしい。

しかし、今月この方、同じような話を5回面接して4回くらいは聞いている。

正直なところ何かご本人に問題があるのではないかと、それとなくお伝え出来ないだろうかと、いや、それでこちらとの連絡すら無くなってしまったらと。


時間など関係なく残業しまくりで業務をこなしていく。

求職者の方は、在職中に転職をしたいのだから、私たちの仕事は普通のサラリーマンが帰宅した後に始まる。


だからだろうか、おかしなものが見えてしまったのは。

求職者の方には紋切のように、最高の職場はないですよと、何か妥協しなきゃいけませんよと、お伝えしている。

給料、お休み、離職率、残業、仕事内容、etc.

青い鳥を探して、キャリア観がフラフラしては、ダメなんですと。

でも、残業でフラフラする私の目の前には青い鳥が見えていた。


物理的に見えるものだっけか。

とにかく私には、何かこの先に理想の職場が、自分の輝ける場所があるのではないかと、普段なら思いもしないことを考えてしまった。

いつもなら隣の芝生は青いもの、そうだ、住めば都じゃないかと。

いつもならそう言ってしまう私でも、なんだか足がフラフラと、青い鳥を追いかけていた。


風を感じる。

少し寒いような、でも清々しいような、そんな風を受けて、心地よく歩く私は。

ビルの窓が開いていて、飛び降りてしまったことに最期まで気づかなかった。



目を開けると、なんだかむずむずした。

無性に泣いたり叫んだりしたかった。

「おぎゃああああああああああ」

うわっなんて大きな声、びっくりしてもっと泣いてしまった。

とてもきれいな金髪の女性と、ダンディな男性が顔を覗き込んでいる。

誰?会ったことないが。

え、どういう状況?困惑して泣いてしまった。

うわっなんて大きな声(無限ループ


無限ループって怖くね?

いや違いましたわ、なんだかうすうす察してはいたのだけれど、赤ちゃんになってますわ!?

手がもうね、そう。たぶん間違いなくそう。

そして私が延々と泣いているのもたぶんそれ。


ちょっとばかり落ち着いて、視界に映る顔を見て。

何か数字がちらちら見えるなぁと思って。


言葉は分からない、日本語とは違うらしい。

でも、視界に映る人たちの右上にポテンシャルなるカタカナとアラビア数字が見える。

言葉が違うなら、このカタカナは他の人たちには見えていない可能性もある。

それは分からない、分からないものは置いておこう。


何かよく分からないが、これはあれなのだろうか。

私は青い鳥を追って転職するつもりが、転生してしまったというやつなのだろうか。

職場というか世界が変わったというか、世界が違うというか。

私、この状況でも住めば都って言えますかねぇ、そのうち。


やばい、おしっこしたい。私前世で女の子なんですけど。

いくら赤ちゃんとはいえ恥ずかしいんですけど。

あまりの羞恥に泣いちゃった。

「おぎゃああああああああああ」

うわっなんて大きな声(無限ループ

あ、驚いて漏れそう。

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