双子悪役令嬢の他人任せ生存戦略

あまざけ

第0章 一つの物語の終わり

最悪のポテンシャル

兵士に連れられてお姉様が断頭台に歩みを進める。

民衆から投げられる石。

聞くに堪えない罵詈雑言。

これは何だ。

お姉様がここまでのことをしたのか。


そして、お姉様の少し右上に見える数字。

ポテンシャル。

数字は歩みを進めるたびに減っていく。


ポテンシャルは私にしか見えない数字だ。

その数字の意味は、最も適正のある行いと現在の行いの差。

人間の可能性を拓く素晴らしい能力。

私はそう理解していた。


しかし、少しばかり違ったらしい。

これでは、見世物ではないか。

お姉様にはだと、世界は、そう言うのか。


確かにそうだった。

私が前世にやっていた乙女ゲーム、その一枚絵に確かにあった。

ゲームならば、確かにお姉様の最大の見せ場なのかもしれない。

あの憎たらしい悪役令嬢の最後のざまぁ、そこにもっていくための積み重ね。

私だって、ゲームならばボタンを連打しながら、まぁすっきりしたなと、一つの物語の終わりだと、そう思っていた。


でもここは現実で、死ねば終わりで、そしてお姉様は。

お姉様は、こんなに無念に死ぬために、生を受けたというのか。

お姉様の人生の価値は、断頭台で死ぬことなのだと、世界が言うのか。


ふざけるな、ふざけるなよ。

そんなことがあっていいわけないでしょうが。


ギロチンの刃が堕ちる。

そして数字は0になる。

私は叫びすぎてもう声が枯れている。

この声はもう届かない。

お姉様は。

そして世界は暗転する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る