第41話 包囲網

米田健次郎の頭がおかしくなった。

そして纏めると母親もおかしくなった様な事を言っていた。

それから誰かをアイツは探している。

奴は。

米田健はだ。


「...お兄。それもう完璧なサイコパスじゃないの?」

「正直もうここまで来たら相当に異常だな」

「怖いね」

「怖いっていうか。アイツを倒すのが当たり前だと思う気がしたよ」


そう話しながら青ざめる梓。

俺達は紅茶を飲んでいた。

それで俺はこれまでの起こった事を話していた。


警察に話を聞かれた点。

米田の事を話した点。

色々な事を警察に訴えたが。


警察は「恐らく貴方が一時的なパニックになっているだけでは」という信じられない結論になってしまった。

だけど「念の為に色々と捜査をしてみます」とは言ってくれた。

それを期待したい。


「...サイコ野郎だね」

「本当にな。サイコ野郎だよマジに」

「...これも狙っていたのかな」

「これも狙っていたならもう穴が無さすぎる。強者って事だ」

「そうだね。緻密に計画されているって事だよね」


俺は考えながら梓の言葉に頷く。

それから考えていると電話が鳴った。

それは...華だった。

華?


「華?もしもし。どうしたんだ」

『徹に言っても良いのか分からないけど...電話した』

「...え?何をだ?」

『...アイツ。...米田健はマジにサイコだと思う』

「...何があった」

『...女性を脅して金を奪っているの。...それも山奥で声が届かない様にしてね』


その言葉に俺は...ゾッとした。

そして「オイ待て。何でそんな事を知っているんだ」と言う。

『お母さんが知ってた。若い男が...女性を脅して金を奪っていたって。...それを撮っていてバレて逃げたらしくて。それで逃げられたけど崖から落ちて記憶が無くなったという感じらしい』

「...まさか...それで米田健は...探しているのか。目撃者を」

『...徹。警察に言おう。証拠は集まったから』


俺はその言葉に考え込む。

それから「早い方が良い気がする」と思い立ち上がる。

そして俺は上着を着てから「華。出て来れるか。今」と言う。

すると華は「うん」と返事をして準備を始めた様な音がしてきた。

俺は「梓。外出て来る」と言ってから俺は梓に挨拶をして外に出る。


「...」


それから薄暗い世界を見ながら歩き出す。

そして心臓を落ち着かせながら歩く。

大丈夫だよな?来るよな?華は。

そう思いながら。

すると目の前を女性が歩いて行った。


「華」

「...あ。徹」

「警察署。一緒に行こう」

「そうだね」


そして俺達は薄暗い夜道を歩く。

それから警察署に向かうとその前に成宮が居た。

俺は「成宮?」と声を掛ける。

成宮は「ああ。徹」と言ってくる。


「...どうしたんだ?お前」

「...アイツ。米田健について情報を手に入れたから訴えようと思って」

「ああ。それか。俺達も情報を手に入れたんだ」

「そう。...じゃあ終わらせよう。米田健については」

「そうだな」


それから俺達は警察署のドアを開けた。

そして全ての事を打ち明ける。

すると流石の警察も顔色がこわばった。

「すいません。その重要な証人様は何処に?」と聞いてくる。

俺は「○○病院です」と答えながら警察官を見る。

警察官は何かほかの警察官に電話やら相談をし始めた。


「...すいません。事実だとするならまだお話をお伺いしないといけません。お母様はこちら側で必ず保護しますので」


そう言われて俺達はこれまでの経緯を全部説明した。

それから警察官、刑事は全ての話を書き留めた。

そして真剣な顔をして捜査を始める。

米田健について情報を集め始めた第一歩だった。



そして米田健のクラブなどに捜査が入ったが。

米田健自体が居なくなっていた。

逮捕者が出始めた。


逃走したものと思われるが。

警察は全ての組織に捜査を入れていた。

そしてこういう事実が明らかになる。


1つ目に米田健は一切手を汚さずに不良達も洗脳し女性から金を巻き上げていた。

2つ目に殺しては無いが金を払ったら女性は洗脳されてお酒を大量に飲ませられて記憶を失った状態で帰宅させられていた。

3つ目に売掛金が払えない場合。無条件で売春に行かせられてそしてそれでも払えない場合に山奥に連れて行かれていた。

4つ目に家族も洗脳していた。と言うか支配していた。

5つ目にこの技術は米田健の父親の自殺以降多発したという。


信じれられない様な事ばかりで吐き気がした。

そんな大きな事になっているとは思わなかった。

それで米田健は「僕は無実です」と言っていたのか。

思いながら俺は考え込む。

自宅で悩んでいると梓がやって来た。


「お兄。大丈夫?」

「...まあな。大丈夫だ。死んでないし」

「警察も居るから堅苦しいけどね」

「仕方が無いな。こればかりは」


そして考え込んでいると梓は「何でこんな事になったんだろうね」と言ってきた。

俺は「分からないな。...取り敢えず無事で居てほしい。みんなにな」と言葉を発しながら後頭部に両手を添える。

梓は目の前に腰掛けた。


「お兄が好きって事でこんなになるなんてね」

「まあ事実上そうだな」

「...お兄ってさ」

「...何だ?」

「誰を好きになるんだろうね」

「...その点は考えて無いぞ!?」

「そうかなぁ?お兄本当に好きな人いないの?」


そう言いながらクスクスと笑ってくる梓。

俺はその姿を見ながら「待て。本当だって」と否定する。

全くコイツは。


そう思いながら俺は苦笑いを浮かべる。

今は何も考えれないけど。

きっと好きな人は出来ると思うけどな。


「しかしまぁ...どうなるかだな」

「...そうだね。米田健って何処に逃走したんだろう」

「日本全国に指名手配したら分かるんじゃないか」

「そうだよね。きっとそうだと思う」


そう言いながら梓は眉を顰める。

それから俺は窓から外を見る。

警備にあたっている警察官が居る。

俺はその姿を見ながら俺は眉を寄せて「まあでも」と呟く。


「...時間の問題だと思う。米田が捕まるのは」

「そうだね。被害に遭った人が可哀想だから」

「そうだな。とっとと捕まってほしいよな」

「うん。私はそう思う」

「...」


大罪人...米田健。

何処に居るのだろうか。

思いながら俺は顎に手を添えて考える。

まあでももう考えても仕方が無い。

警察に任せるしかないと思う。


「...でもこの中で言えば創子さんが最も危ないな」

「...そうだね。創子さんの警備は?」

「警察病院に一先ずは...移動した」

「...そっか。じゃあ先ずは安心だね」

「...そうだな」


正直まだ安心とは言えないかもだが。

そんな事を考えながら俺はボーッと外を見る。

困ったもんだな。

早く捕まってほしいが。

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