第40話 洗脳

☆佐藤徹(さとうとおる)サイド☆


SAMUKEがした。

何でそうなるのか分からないが...何か途轍もない。

俺は考えながら成宮を見る。

成宮は食器を片していた。


「...帰る。...お前は大丈夫か」

「...もう大丈夫。どんな事があっても多分もう挫けない」

「...そうか。なら良いけど」

「ところでアンタの事だけど。...誰とも付き合わないの?」


その場でブッと噴いてしまった。

それから成宮を見る。

成宮は苦笑しながら「アンタならモテそうな気がするけど」と言ってくる。

俺は「モテるとかそういう次元は考えてない」と答えた。


「...俺にそんなに良い点は無いよ」

「それは嘘ね。アンタはとても良い人だと思うし」

「...」

「もっと自分に自信を持ったら?」

「...そうだな。お前が言うなら自信を持つよ」


そう答えながら俺は成宮を見る。

成宮は皿を直し終えて「それでこそいつもの徹ね」と言ってきた。

俺はその言葉に「揶揄うなよ」という。

すると成宮は「誰を選んでも私はアンタを応援する。徹。頑張って」と言う。

俺はそんな姿を見ながら「そうか」と返事をして笑みを浮かべる。


「じゃあ帰るから」

「うん。また機会があったら」

「そうだな」


そうして俺は成宮家の玄関から外に出る。

それから太陽を手で遮りながら歩き出した。

何か今日は良い事がありそうだ。

思いながら俺は河川敷にやって来る。

そして帰って行く。


「好きな人...ねぇ」


そんな事を呟きながら歩いて帰っていると「やあ。佐藤」と声がした。

俺はゾッとしながら背後を見る。

そこに...米田が居た。

正確には米田健次郎だから弟の方。


「...どうした。何か用か」

「いや。まあね。そんな対応しないでくれるか」

「お前の兄貴は悪人だからな。そういう対応にもなる」

「...そうか。あ、偶然見掛けたから話し掛けたんだけど...俺の事信用してくれるかな」

「...それは無理だ。お前の言っている事は全て嘘っぱちだ。...信用にも値しない」

「...そうか」


米田健次郎はそう言いながら何かを取り出した。

それは...ケースに入ったサバイバルナイフだった。

俺は「は?」と思いながら米田健次郎から身を退く。

それから「お、お前!!!!!この野郎!!!??」と絶句する。


「...兄貴という奴は俺を必要無いからと捨てやがったんだ。それがどういう意味か分からないけどね。俺は兄貴しか居ないのに。何故捨てられたのか分からないんだ」

「だから逆恨みで俺を殺すってか。意味が分からない。そもそも何で俺を狙っている!?」

「お前が全ての元凶だ。俺が兄貴という神様から捨てられたのはな」

「お前...マジに頭おかしいぞ!こんな人が多い場所で!」


「お前さえ殺せれば何でも良いんだけどな。兄貴から捨てられたらもう俺には何も残されていない。ならいっその事お前に復讐する」と話す米田健次郎。

兄貴に捨てられたって。

コイツそれだけなら兄貴から自立しろよ。

思いながら居ると米田健次郎は「俺は兄貴が全てだった。兄貴に傅いていたんだ」と常軌を逸した事を話した。


「成績優秀。容姿端麗。そんなお前が...何故」


そう言いながら米田健次郎を見る。

米田健次郎の眼はうつろになっている。

つまり...何かやられている様な顔だった。

もしくは何かされたか。


「待てお前。本当に米田健は...何をしている?!」

「兄貴は神様だ。崇拝しなければならない。金とか名誉とかで確立しないと兄貴は...」

「...!」


俺は唖然としながらその姿を見る。

地に落ちているというか。

まさかこれマインドコントロールってやつか?

思いながら居ると米田健次郎は襲い掛かって来た。

通行人が「何あれ?」「警察警察!」とか言いながら俺達を見る。


「兄貴が全てだった!兄貴に金を名誉をやったってのに何で!!!!!」

「ふざけんなお前!人が死ぬぞ!」

「人が死ぬ?そんなの分かっている!俺はお前を殺す!」

「マジに頭おかしい!」


俺は必死に駆け出す。

あんなものに刺されてしまったらマジにひとたまりもない。

思いながら居るとそんな米田健次郎の前にいきなり人が現れた。

それは金髪の不良共。

俺は「???」と思いながら見ていると米田健次郎の顔面に猛烈なパンチが一発そのまま飛ぶ。

それからそのまま肩車で気絶した米田は連れて行かれた。


「...」


一瞬の出来事であり。

正直何も言えなかった。

金髪の不良共は俺を見てから見下す感じをしていた。


それと同時に俺は恐怖を感じた。

米田は何処に連れて行かれたのだ。

そんな事を考えながらボーッとして居ると「ハロー」と声がした。

顔を上げるとそこに...米田健が居た。

スーツ姿でだ。


「これは失礼しました。僕の弟だった者が」


と言いながら俺の手を握って立たせようとする。

俺はその手を弾いた。

そして「お前。米田健次郎をどうする気だ」と聞いてみる。

米田健は「彼は危ないので一旦、隔離するみたいです」と答えた。


「マジにお前は何をしている?犯罪行為をしているのか?」

「まあ詳しい事は言えませんが違います。人前なのでそう回答しておきますね。しかし彼は僕達の母親と同じ道を歩んでしまったようですね」

「...お前...マジに何なんだ」

「僕は必要あるもの。必要の無いものと区別をつけているだけです。いやはや本当に危なかったですね」

「...助けたつもりか。いい加減にしろこの人殺しが!」


「失礼ながら僕は何もしてないですよ。今回の件。これもみんなと相談して決めた事です。不良一味が勝手に動きました。指示もしてないです」と答える。

俺は「そんな性格でアイツも捨てたのか。...成宮も」と言う。

すると「いやいや待って下さい。あの様なサイコパスと一緒にしないで下さい」と米田健は肩をすくめた。


「僕はあくまで正義の為に動いているだけです」

「...」

「...それと目撃者を探しているだけです」

「目撃者?...何の話だ」

「あ。すいません。それはこっちの話です」


そして「では今日はこれで失礼します。弟だった者がすいませんでした」と去って行く米田健。

俺は流石に恐怖を感じずには居られなかった。

米田...健次郎は何処に連れて行かれたのだ。

止められなかった。

そして俺は...初めて米田健次郎の事を知りたいと思ってしまった。

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