第37話 米田健と成宮一家との関係

私は病室に戻ったお母さんを見る。

お母さんの病状だがかなり深刻だった。

そもそも記憶を失ったのは...何なのか分かって無いらしい。


精神的な過負荷が強すぎて失った様な感じで登山者に山奥で発見されたらしく。

そのまま転院、警察、病院関係者にあれこれあって。

今お母さんはこの場所に居るという。


「...お母さん...」


花が涙を流しながら母親に縋る。

そもそも一番に会いたかったのは花だろう。

思いながら私は花を見ていた。

するとお母さんは筆談してくる。


(花。それから華。貴方達は大きくなったわね)


という感じで、だ。

住所も何もかもを忘れている様だが。

私達の事もお父さんも見てから思い出したらしい。

やはり記憶のショックは相当なものだった様だ。

何を見たのだろう。


「創子。...すまないけど何を見たんだ?山奥で。覚えているか?それから何で生きていたか」

(御免なさい。私は何も覚えていません)

「...そうか」

(だけど私が見つかった時。服がボロボロ。そして私の手には携帯が握られていたそうです)

「そのカメラには何も映って無いのか」

(カメラは水に浸かっており壊れました)

「そうか」


お父さんは考えながら「...そうか」と返事をする。

警察が一応調べたが中身は水で腐食しており何も分からなかったそうだ。

すると花が「お母さんが生きていたらなんでも良いよ」と笑顔になる。

私は「そうだね」と返事をしながらお母さんの手を握る。


(花。華。有難う)

「私達は何もしてない。全部お母さんが生きたいって頑張ったお陰だよ」

(成長したわね。華。貴方は...)

「お姉ちゃんだしね」

(私は愚かね)


そう書きながらお母さんは涙を浮かべる。

それから泣き始めた。

私は慌ててお母さんに寄り添う。

それから「大丈夫」と言い聞かせる。

花も寄り添った。


「お家に帰ろう。お母さん」

(そうね。手続きが終わったら帰りましょう。ね。あなた)

「そうだな。帰ろう」

(ところで。華。あなた。何で病院に居るの?)


痛い所を突いてきた。

私は困惑しながらお父さんを見る。

するとお父さんは「捻挫だよ。それでな。はーっはっは!」と爆笑する。

私はその姿を見ながら言わないのかと思ってしまった。


(そう。だったら良いけど。大きな病気じゃ無いでしょうね?)

「そ、そんな事は無いぞ。うん」

(あなたは身を隠す癖があるから。後回しとか)

「お、おう。んな事は無い」

(あるわよ)


「ま、まあまあ。この話題はもう打ち切りだ」とお父さんはジト目で睨まれたお母さんの視線を回避する。

私はその姿を見ながら「ちょっと飲み物買って来るね」と言った。

それから私は病室を後にする。

そして休憩室に向かおうとした。

その時だ。


「お久しぶりです」


と声がした。

背後を見て私はゾッとする。

私の背後に彼が居た。

米田健。

つまり米田健司の兄が居た。


「何故この場所に居るんですか?貴方は」

「...ちょっと探し物をしていまして。それで偶然君を見掛けたって訳ですよ」

「明らかに嘘ですね。私に用事があったんでしょうか」

「...そうだねぇ。まあそうと言えばそうかなとは思いますね」

「...何が言いたいんですか」

「人を殺す気は無いんですがね。僕はとっても繊細なお仕事をしています。その分、マズい分は潰したくなるって訳ですが」

「...貴方...私達が調べた情報、ホストらしいですね」


私がそう言うと彼はピクッと眉を動かした。

それから「「ヨネケン」ってナンバーワンのホストですよね。それも店長。私、偶然ですが貴方の事を知りまして」と言った。

すると米田の兄は「そっかそっか。...実は僕、年商がそこそこあるホストなんです☆」と自己紹介をしてくる。

ジョークを言っているのかコイツ。


「ホスト自体は悪いとは思いません。しかし貴方は噂では...お気に入りじゃない女性を借金だるまにして掻っ捌いているらしいじゃないですか」

「借金を背負わせる?そんな事してないですよ。僕は」

「嘘ばかりですね。売掛って言葉があります。貴方は気に入ってない女性を騙しに騙している売り女にしているサイコ野郎って噂です」

「ふーむ。何でそこまで噂を知っているのかな」

「...全てネットの裏情報です。でもこれのヒントの全てをくれたのは...私の信頼している友人です」

「それは佐藤梓かな?」

「...何でそれを知っているんですか」


「僕はねぇ調べたいものは調べつくしたいからね。徹底的に」と言うサイコ野郎。

私は汗をかきながら「そして貴方の最大の悪事なんですが貴方は...成宮一族とトレードしているらしいですね」と言葉を最後に紡ぐ。

何故これが分かったか。

これも梓のハッキングの力だ。

そしてもう一つ成宮自身のハッキングの力だ。


成宮は酷くショックを受けていた。

確かに経営しているのは知っている、と。

成宮の父親は音楽業界に名を轟かせるだけではなく自らでその資金で色々な経営をしているそうだ。

だがその中で一つは貸金の経営をしているらしかった。


それは闇金とかではない。

生計を立てるには問題は無いが。

何故こうなったか。


成宮の父親と母親は相当に金を買い物依存で消化する為。

音楽だけでは成り立たなくなった。

だから経営をし始めたのだ。

因みにこれは成宮の姉が知っているかは分からない。


「...何処で成宮一族の事の全てを知ったか流石にそれは分かりませんでした。だけど貴方はトレードに資金援助を受けていて。そして好き放題やっているみたいですね」

「...まあそうしないと何もかもが売り上げにならないですから」

「ホストの仕事を舐め過ぎでは?貴方は」

「そういう成宮さんも梓さんも警察には言えない大概な事をしていますよね?それだったら同じですよね?アハハ」


そう言いながら米田の兄は私を見る。

コイツ相当のめちゃめちゃに危ない気がする。

思いながらまさかと思うが不良集団も買収したのか?とも思った。

それから私は「これで失礼します」と踵を返す。


「もし良かったら君のご一家もお金で買収してあげよっか?その綺麗な身体をくれるなら1億でも2億でも払うよ」

「...馬鹿ですか貴方は」

「うーん。馬鹿って言われる方が馬鹿だと思うけど」

「...私はお金なんか興味無いです。世の中が安泰すれば。キモイ」


そう吐き捨てながら私は歩き出す。

それからおぞましいと思いながら少しだけ身を震えさせた。

そして飲み物を買ってから戻った。

正直何も起こらなかったら良いけど。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る