第33話 情報提供の条件
☆山吹小春(やまぶきこはる)サイド☆
事態が急変し過ぎている。
思いながら私は米田くんとメッセージをした。
そんな米田くんは(別に証拠を炙り出すだけだから問題ないよ)と返事をくれた。
何それ...証拠を炙り出すって。
こんな真似をしたら人間のする事じゃなくなる。
(待って。米田くん。やり過ぎだよこれ)
(まだそんなにやり過ぎちゃいないよ。そもそもに小春。もしかしたら飯場さんを殺されたかもしれないだろう)
(確かにそうだけど。飯場さんは自殺する様な人じゃないし。だけどこれじゃどっちもどっちじゃない)
(まあ確かにそうだけどね。...でも俺は飯場さんが死んだ謎が解きたいから)
(そうだけど私は...)と言い淀む。
すると米田くんは(それに俺は...飯場さんが好きだったから)と記載してきた。
私は衝撃を受ける。
それから(だからこそやられた分は復讐したいんだ)と書いてくる。
それでこんなに必死にやっているのか。
(だからって...こんなの間違ってる)
(俺は絶対に飯場さんを殺した人を許す気は無いよ)
(何で...昔の米田くんに戻って。お願い)
(俺は元からまともだよ)
(絶対にそれは無い。だって...1年生の時はこんなんじゃなかった)
そう書きながら私は涙を流す。
すると米田くんは(俺は元からまともだよ。だからまともだからこそ復讐しないといけない)と書いてくる。
もう駄目だ。
彼に何を言っても...。
(話し合いをしたい。米田くん)
(話って何かな)
(私は貴方にまともに戻ってほしいから)
(俺はまともだって)
(絶対に嘘。...お父さんが殺された恨みもあるでしょ)
(...確かにそうだけどね。...だけど今回は親父は関係ないよ)
それはまた嘘だ。
何故スクールカースト上位に居ながら成績優秀でありながらこんな真似を。
今なら引き返せる。
思いながら(私達のバンドにちょっかいをかけるのも止めて。お願い)とメッセージを送ってから(お兄さんの事も止めないと)と言う。
(兄貴は何も悪くないよ。...彼はやりたい様にやっているけどね)
(明らかに犯罪行為も混じってるよ。それに最低だよこんなの)
(仕方が無い。成宮祥子は兄貴に気にいられなかっただけだろうしね)
(だからそれは良いけど使い捨てって何でそんな真似を!)
(それをしたのは悪いって思うけど...)
(じゃあもう止めて。お願い)
そう私は必死に言いながら書き記す。
すると米田くんは(まあだからと言っても初めに戻っても飯場さんが死んだ理由にはならない。俺の初恋を叩き潰されたのは目に見えて明らか。だから復讐するよ)と送って来た。
何故こんな事に。
(米田くん...)
(俺は絶対に許せないから兄貴に頼った。だからそれを含めても俺は絶対に許せないし止まれないよ。今更ね)
(...分かった)
そして私はメッセージを閉じようとした時。
米田くんが(ところで小春。君も協力してくれないか)と書いてきた。
(私がそんな真似できるわけ無いでしょう。悪人になりたくない)と書く。
すると米田くんは(犯罪にならない程度にやれば良いんじゃないか)と言ってくる。
(飯場さんは友達だったんだろ)とも書いてくる。
(確かにそうだけど)
(なら飯場さんの無念を晴らしたいって思わない?)
(...)
(俺は絶対に飯場さんを自殺に追い込んだ奴を許さない)
(...私はそんなのは嫌。...だからもう貴方とも会話しない事にするよ)
そう書いてから送る。
すると米田くんは(そっか。残念だ。後悔しない様にね)と送って来た。
私は少しだけゾッとしながらその画面を閉じる。
米田くん...出会ったときはこんなんじゃ無かった。
とてもいい青年で...好青年だった。
だけどお兄さんが外国から帰って来てから異変が起こった。
「...まさか」
私は一瞬だけ考える。
米田くんは洗脳された?
いやまさか。
家族にそんな真似をするとは思えないけど。
絶対に思えないけど。
だけど万に一つに考えられたら?
どうなるのだろうか。
「だけどどっちにせよ...やり過ぎだよ。米田くん...」
私はそう呟きながら自室を出る。
それからリビングに向かうとお姉ちゃんが居た。
お姉ちゃんは私を見ながら笑顔で居たが次第に「?」を浮かべる。
違和感に気が付いた様だった。
「...どうしたの」
「うん。ちょっとね」
「...?」
「...お姉ちゃん。私って正しい事をしているのかな」
「...正しいって何が」
「...正義って何だろうね」
私は全てを吐き出した。
それから私はこれまでの経緯を全て説明する。
するとお姉ちゃんは考え込み。
そして私の頭を撫でてくる。
「...貴方が苦しい思いをしているのがよく分かった。苦しかった。寂しかったね」
「...そうだね。私一人で全部しょいこんでいたから」
「...だけど貴方は決して悪い事をしてないよ。貴方は...それは正しい道。友情と引き換えに全てを失うなら捨てた方が良いね」
「...私は徹君が好きだからね」
「そう。だから愛っていうのは強い
そう言いながら私を抱き締めるお姉ちゃん。
私は「どうしたら良いのかな」と呟く。
するとお姉ちゃんは「お母さん達ならどう行動するか考えて。...それから動こう」と言ってきた。
私は涙を浮かべて「だね」と返事をする。
「音楽で復讐する、か。とてもいい話だね。...私の元カレみたいな感じだけど...私は尊敬する。その彼を」
「...お姉ちゃん...」
「私の元カレってまあそれなりのバンドマンだったんだけどね。お金遣いが荒かったから別れた。アハハ」
「...そうなんだ」
「だけど貴方の言う彼はそんなもんじゃないよ。...彼を裏切らない様にね」
「そしてこれから先だけど...貴方はどうしたい?」と聞いてくる。
私は考えながら「私は...決別して前に進みたい」と言う。
お姉ちゃんは「そうだね」と笑顔で返事をしてくれた。
「じゃあ頑張ろう。お姉ちゃんも協力するよ」
「...ありがとう。お姉ちゃん」
「そうなると先ずは...」
そこまでお姉ちゃんが言った時。
いきなりインターフォンが鳴った。
デジャヴの様な感じがした。
私は警戒しながらドアを開ける。
すると予想通りだったが目の前に成宮が居た。
「...何。何なの?また私達の邪魔をしに来たの?」
「...こう言っては何だけど。...アンタの力を借りたい」
「...徹君は随分と寛大だけど。私は貴方をそもそもまだ認めてない」
「...分かってる。だけどお願い。力を貸してください」
「...何。話だけなら聞くけど」
「...米田兄弟をどうにかしたい。協力して」
眉を顰めているとそう言われた。
私はピクッと反応しながら成宮を見る。
すると成宮は「過去にケリを徐々につけたい。傲慢だって分かる。だけどどうしても人の協力が要るから」と頭を下げてきた。
私は驚愕しながらその姿を見る。
「...そっか」
「...」
「...分かった。条件がある」
その言葉に成宮は「条件って何。もしお金だったら幾らでも。1億でも払う」と言う。
何でそうなるのだ。
そうじゃない。
私はそう思いながら成宮を見つめる。
そして「貴方自身の世界を変える事が条件です。それをするなら無条件で協力する」と話しながら私は成宮を見る。
成宮は驚愕しながら「...」と悩んだ末だったが顔を上げた。
「分かった。努力する」
そう答えながら成宮は厳しい顔のままだったが私に返事をした。
私は「そう」と返事しながら「なら協力する」と言う。
それから笑みを浮かべた。
「宜しく。成宮(さん)と」言葉を発しながらだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます