第32話 人生の分岐点
私は授業が終わった後に移動した。
それから屋上で通信する。
その相手は連絡先を交換した姉だ。
そして数コールの後に出た。
『はいはい』
「...何をしていたの」
『うん。お料理』
「...料理は怪我したら大変って話じゃなかった」
『温かいものを食べたいからねぇ。でも多分それは無理だろうから作り置きしておいて食べて。きっとおいしいと思うよ』
危険を顧みず。
私は歯を食いしばった。
それから「私の家には誰か来たの」と聞いてみる。
すると『居留守使ったからそれは無いね』と言ってくる。
私は驚きながらも「そう」とだけ返事をした。
『どっちにせよ私はまだ帰らないから。仕事あるしね』
「...母親と父親が怒るんじゃないの」
『どうでも良いよ。あんなのはね』
「...」
私はそんな姉に聞いてみる。
「私さ。...売り女って罵られるんだけどどうしたら良いかな」とだ。
すると姉は『それは酷いね...』という感じになる。
私は「...そうかな」と言った。
そうしていると姉はとんでもない事を言った。
『その学校...転校したら?』と。
「...え。でもそれは...」
『そこまでして行く学校なの?私はそうは思わない』
「でも手続きが...」
『手続きなら私がするよ。そんな目に遭っている貴方を見過ごせない』
「...」
それから姉は『今日もう無視して帰ったら?』と言ってくる。
私はたびたび驚きながら「でもこの学校を設定したのは親だし。また何て言われるか」と言う。
だが姉は『そんなの関係ない。...命と学校はどっちが大切なのか考えないと』と言いながら『とにかく一旦帰って来て。今日はお姉ちゃんとどこかに出掛けよう』と言ってくる。
「...」
私は帰りたくも無かったが。
自然と立ち上がって教室に戻りそのまま教科書を仕舞った。
それからそのまま教室を後にしてから家に帰る。
まあ何というか学校から抜け出すのに教員に言ってない。
だから無断欠席に当たるが。
姉は『だってそんな酷い学校なら捨てても同じでしょう』と言った。
まあそうかなと思ったので私は帰る事にした。
☆
「お帰りー」
「...ただいま」
「待ってたよ。姫」
「だんだん私の呼び方が破壊されているんだけど」
「そうかな。私はそうは思わないよ」
私は顔を引き攣らせる。
そして玄関から入るとそこには鍋に入ったすき焼きがあった。
私は驚きながら「すき焼きの具材は?」と聞いてみる。
すると姉は「買ってきた」と笑顔になる。
「せっかく学校サボったお祝いだし」
「そんなのお祝いですらないけど」
「まあまあ。そう言わず。...だけどまあよく頑張ったねっていう感じかもね」
「...」
「学校に行かなくても良いと思うけどね。でもまあ高校は出た方が良いと思うから」
「そうね。...それは私も思う」
私の様な屑はそういうのは出た方が良いと思う。
思いながら私は姉を見る。
すると姉は「冷めないうちに食べようか」と座布団に腰掛ける。
私もしぶしぶ座る事にした。
それから姉を見る。
姉は鼻歌交じりで出汁とネギとか白菜とかを取っていく。
それから卵を割って食べていた。
美味しそうにほおばっている。
私はその姿をジッと見ていると「食べて食べて」と器を渡してくる。
正直食欲がない。
だけど食べろと言われたなら食べるしかない。
私は適当に野菜と肉を取る。
それから食べてみた。
「...美味しい」
「そうでしょ?温まるでしょ?」
「...アンタ料理が得意なの」
「私は別に得意じゃ無いよ。...ただ昔に叔母さんに教わったから」
「...そう。火傷とか包丁の怪我とかで料理は出来そうにないしね。あの家じゃ」
「そうだね」
言いながら姉は幸せそうな顔をしながら私を見る。
私はその視線がなんだかむず痒くそのまま視線をずらす。
すると姉は苦笑しながら「でもありがとう」と言ってくる。
私は「?」を浮かべながら姉を見る。
「私の料理を警戒無しで食べてくれて」
「...ただの気まぐれだけど。私は決してアンタへの警戒を解いた訳じゃ無い」
「そっか。...うん。それならそれでもいいよ」
「...」
私はその言葉に箸を置いた。
それから姉を見つめる。
姉は「何?」という感じで私を見てくる。
私はその顔に「親があんだけ歪んだの知ってる?」と聞いてみた。
ふとした疑問だ。
すると姉は箸を置いてから器を置く。
「...詳細は分からないけど両親が歪んだのは多分...親の圧力だったと思うよ。それも両親の母親と父親からのね。祖母と祖父からの」
「...一族のエゴって事だね」
「失敗は決して許さないっていう風潮があった。その中で私は一族の中でも特に優秀だったっぽいけど。それで多分...対比して貴方が酷い目に遭っているんじゃないかってね」
「...」
私が殺されたのは成宮一族か。
思いながら考えていると「まあそんな事はどうでも良いけど」と言いながら私に向いてくる。
「ピアノはもうしない?」と言ってきた。
私は「好きだったけど数年前の話。もうしない」と答える。
「...そうだね。...もしまたやる気があったら...私の友人を紹介する」
「それは何。コンテストに出したいとか?私を」
「違うよ。...貴方を全力でサポートしたいだけ」
そう言いながら姉は私を見る。
私はその姿を見ながら目の前のすき焼きを見る。
ぐつぐつと言いながら煮えている。
私は「そうね」と答えながら豆腐を器に入れる。
それから「考えておく」と答えた。
「...私は貴方のやりたい事をサポートするから」
「...アンタのピアノとかは」
「私のピアノは引退しても良いって思うけど。だけど親が許さないだろうね」
「...そうね」
「親からの呪縛は逃れられないから。...でも自由じゃ無いのは私だけで良い。ナイスなタイミングで貴方は自由になっていると思う」
「...」
私はその姿を見ながら豆腐を冷ます。
それから半分に割ってから食べる。
何でここまでするのか。
私なんか情けないのに...。
高校すらまともに通えないしな。
「...アンタは後悔とか無いの。私を助けたりして」
「...ない。全くね。...貴方は悪い事をしても私の血の繋がった妹だから」
「...」
その言葉に私は目を閉じて開けた。
そして「転校しようって思う」と言葉を発する。
それから私は姉を見る。
姉は「!」となりながら私を見る。
「...そっか。何処の学校に転校する?この街から違う場所とか?」
「...徹の学校」
「え?例の彼の?...また何で?」
「...私は人生をかけて反省したいって思えた。その為には準備が要るかと思う。それに...徹が私とタッグを組みたいって言ったから私はどうにかしたい」
「...そうなんだね」
姉は「とっても素晴らしい事だよ」と笑顔になる。
それから「昔の貴方は何をしでかすか分からなかったから不安だったけど今の貴方なら大丈夫」と言ってくる。
私はその言葉を受けながら姉を見る。
そして柔和な笑みを浮かべた。
「...!」
「どうしたの」
「いや。そうやって笑みを浮かべたのは...久々に見たから。...数年ぶりだね」
「...そうだっけ。良く分からない」
そう言いながら赤くなっていると姉は「さあ。結論も出たし。...食べよっか」とニコニコしながらすき焼きを食べ始めた。
良い具合に肉も野菜も煮えていた。
私は食事の続きをする。
「...そうか。私は笑えるんだな」
そんな言葉が出た。
すると姉は「うん?何か言った?」と聞いてきたので私は「何でもない」と言葉を発した。
これから私は親に束縛されない人生を歩む。
その時に...何か訂正して人生を生きたい。
そんな事を考えた。
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