第28話 ベクトルの崩壊
☆佐藤梓(さとうあずさ)サイド☆
米田健司。
私が最も恐れていた事態が発生した。
抹殺しないといけない。
だけどお兄が言う限り犯罪は良くない。
ではどう抹殺するかだが。
「...お兄。どうするの」
「...正直...このままではマズいとは思う。だから米田を黙らせる必要がある」
「それはそうだね。じゃあ抹殺する?」
「それは駄目だって言っているだろう。話し合いを...」
「でもお兄。それで良いの?話し合い通じるの?」
俺は考え込みながら電話を掛けた。
その人物は山吹さんだった。
そして数コール...の前に出た。
直ぐに出た。
『...もしもし』
「...どうした?随分暗い反応だな」
『...うん。もう色々とまわっているみたいだけどツイートで(アクアユニゾンスクエアを壊してしまおう)とかいうのが広がってる。学校の裏垢で』
「な...誰だその配信者は」
『...配信者は@YONE-KENSIROUって書かれてる。これ誰だろう』
配信者YONEKENSIROU...か。
ほぼ間違いないが多分アイツだな。
だけどそんな姑息な真似をする様なゴミ屑だったか?アイツ。
思いながら考えていると。
「実は思い当たる人が居る」と言葉を発した。
「...思い当たる人?そいつ誰だ」
『...米田健(よねだけん)』
「...誰だ。もしかして米田の兄貴か」
『そうだよ。米田健はお兄さん。...何か不良集団と付き合っているって話だけど』
「まさか」
俺は唖然としながら話を聞く。
それから「もしかしてそれは...この街の」と呟く。
すると山吹さんは「そう。この街の最悪の暴走族不良集団の頭って話だけど」と山吹さんは話す。
俺は咄嗟に梓を見る。
「...成程ね」
そう言いながら梓は顎に手を添える。
まさかその不良集団がまた出るとは...っていうかイケメンのプロサッカー選手に近い奴がそういう奴と絡んでいるのかよ。
っていうか求愛したのがソイツか!!!!!
『米田君がそういうの絡んでないって信じたいけど』
「...無理だな。アイツ兄弟が居るって話だから」
『だとするなら最低だね』
「そうだな。どうしてもあず...いや。何か仕掛けたいんだろう。横取りとかな」
『何を横取りするの?』
「...その健とかいう奴が梓を狙っている」
だが言った瞬間に『え?それはないよ』と否定された。
そして『だってソイツは...成宮と付き合っているって話だったから』と切り出した。
俺は青ざめる。
それから唖然とした。
ま、まさか!!!!?
『聞き間違いじゃ無かったならそう聞いたけど...まさか...』
「...二股以上の事をしているゴミ屑だな」
『汚らわしい...!!!!!』
「...俺も想像外だ」
まさかどいつもこいつも腰を振っていると?
外道だなマジに。
考えながら「米田はなんでそんなのと仲が良いんだ」と聞いてみる。
すると山吹は『実は...米田くんはお兄さんに養ってもらっているから』と答える。
犯罪で手に入れた金でか?
『...というか表は仕事真面目なんだよね』
「気持ちが悪いな。サイコパスか?」
『気に入らなかったらリンチしているって噂だし』
「...有り得ないな。アイツ以上に狂っている」
そんな言葉を言っていると『とにかく気を付けないと。絶対にマズいよ』と言ってくる山吹さん。
俺は考えながら「そうだな」と呟いた。
それから「そうなると先ずは」と思っていると電話が掛かった。
まさか。
「...梓。俺が出る。代わりに...山吹さんの気を逸らしてくれ」
俺は頷く梓にスマホを渡す。
それから電話に出る。
米田の電話番号だ。
何だ一体。
『此方は佐藤さんのお自宅ですか?』
「...そうだな。誰だアンタ」
『失礼します。僕、米田健って言います』
「...いかにも声が真面目だが。お前...何の用事だよ」
『そうですね。少し話しませんか』
「話す気は無い。寧ろ...梓は渡さない」
『まあまあそうかっかとならず。本題に入らずに』と能天気に話すゴミ屑。
俺はその言葉に何だかイライラが増してきた。
それから俺は電話を静かに切ろうとした時。
『貴方はお兄さんですよね』と話した。
「そうだ」
『実は僕、セックステクニシャンです』
「...それがどうした」
『だからこそ渦宮さんとか...何かその。舐めまくってものにしたいんですよね』
「...お前。まさかと思うが華の一家とかに手を出したら許さんぞ。絶対に許さない」
『まあそれは無いですよ。貴方が大人しく梓さんを渡してくれたら』
このクソ野郎!
思いながら俺は机を思いっきり殴った。
その勢いでコップが倒れお茶が飛散する。
激高した。
「お前な...!そんな要求を呑むか誰が!」
『あれれ?僕は至って紳士且つ光栄的で真面目な取引をしたいです。だから...脅しにならない範囲でご提案しております』
「そもそも仮にも梓を渡したりして解決するか?しないだろ。いい加減にしろ」
『バンドを潰したいのは弟の要望なので叶えてやりたいです。でも考え直しても良いですよ?貴方が梓さんを渡すなら』
「...貴様」
『実際、貴方が非常に邪魔です。佐藤徹さん。その居場所が今安全じゃなくなります。お早めにお手続きくださいね』
『では~♪』と電話を切るサイコ野郎。
俺はその言葉を受けながら唇を噛みちぎる。
血が出たがそんなもの気になりもしない。
今は...華が危ない。
思いながら俺はガシャーンと受話器を叩きつけた。
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