米田兄弟と成宮祥子

第27話 米田兄弟

☆佐藤徹(さとうとおる)サイド☆


バンドの形成は完成に向かっていた。

俺はその中でデビューの為の曲を書きおろしたりカバーの為に曲をアレンジしたりしていた。

因みにデビューは学校ではない。

近所の公民館である。


お祭りがあるのでそこで披露する事になった。

同じ目的のメンバーでアイツ。

つまり成宮祥子に復讐する為に。

そう思いながら俺は準備を重ねていた。


そして俺は自宅でカバー曲のアレンジを施す。

すると背後から声がした。

梓が笑みを浮かべて立っている。


「お兄。お風呂入って。洗濯がしたい」

「ああ...すまない」

「...お兄がそうやって熱中している姿を見ると何だかホッとするな」

「そうか?...正直格好良くも無い」

「そうかな。私はそうは思わないよ。格好良いと思う」


そう言いながら俺を見る梓。

俺はその顔を見ながら梓を見る。

そういえば...今日は梓の親父さんが亡くなった日だ。

それで居なかったんだな。


「梓。親父さん...博人さんが亡くなった日だな」

「そうだね。...うん」

「...親父さんから教わったのか。その...プログラミングは」

「そう。生きていくのに不便にならない様にって。教えてくれた」

「...そうなんだな」


それが復讐に使われるとは思わなかったが。

思いながら俺は梓を見る。

梓は「だけどまあ...違うってお兄が教えてくれたから。...復讐にはもう使わない」と言ってくる。


俺はその言葉を聞きながら「俺の復讐は...音楽で塗り替えるから」と話す。

すると「そうだね。お兄」と梓は答えた。

その際に俺は顎に手を添える。


「梓。...お前に突っ込んだ飲酒運転の犯人って何で死んだんだ」

「...話して無かったっけ?恐らく自殺かな」

「普通犯人ってそんな簡単に自殺するもんか?それに...何か違和感があったぞ」

「...より正確に言えば(お父さんが追い詰めた)と言えるかもしれないけど。真相は謎だね」

「...そうか。...名前は何だったんだ」

「米田健次郎(よねだけんじろう)」


その言葉を聞きて俺は考えてから数秒してハッとする。

米田?いや米田ってまさか。

思いながら俺は解体されたクラスを思い出す。

それから米田健司を思い出す。


「...まあまさかな」

「思い当たりがあるの?」

「いや。俺のクラスに...米田という奴が居たんだが」

「あー。成程ね。当時幼い兄弟が居たらしいけど。でも飲酒運転が悪いでしょ」

「...」


まさかそれの復讐で俺にイジメを?

まあまさかな。

その時の犯人の息子とは限らないし。

思いながら俺はギターに触れる。

それから考え込む。


「お兄。考えている事は有り得ないと思うよ。米田っていっぱいいるでしょ」

「まあそうだけど。偶然も偶然だしな。薄気味悪い」

「そうだね。そいつも標的だったけど。...お兄に止められたから」


やはり標的か。

思いながら俺は苦笑いを浮かべる。

すると考え込む梓。

「仮にイジメの発端がそれだったとしてもお兄にそんな事をするなら絶対に許さないけどね」と笑顔になった。


「...だからって殺すなよ」

「殺さないよ。...いたぶるだけだね」

「同じだけどな。怖いから」

「怖い?そうかな?」


俺は考えながら居ると電話が鳴った。

それは自宅の電話である。

父親か?と思いながら俺は電話に出る。

すると『やあ。もしもし』と声が。


「...誰だ?お前」

『同級生を忘れたかな。まああまり関わり合いが無かったしね。所詮は』

「...成程な。連絡網の紙か」

『そうだね。...米田。元クラスメイトだ』


そう自己紹介をしながら「いきなりだけどバンドするって話じゃないか」と言った。

俺は「それがどうした」と言葉を発する。

すると米田は「あくまで聞いたっていうか流れている噂なんだけど君何かした?自殺した飯場さんとかに」と言葉を発する。

「...何の事だ」と答える。


『いや。飯場さんがもし死んだ理由の全てを知っているならバンド人生の始まりで終わりじゃないかなって思ってね』

「...」

『君は調子に乗り過ぎだと思うよ。こんな沈黙の時にバンドとか組んでさ』

「意味が分からないな。どういう意味だよ」

『何というかバンドから調べたんだけどさ。君の義妹さん何かかなり秘密だらけだね』

「義妹は関係ないだろ。何がしたい」

『そうだな。実は高校3年生の兄貴が君の義妹が異性として好きでね。どうにか譲ってくれないかって用件。その関連で調べたんだけど君も悪事を働いている可能性が浮上してね。これは利用しなくちゃって思って』


俺はその言葉を受けて汗を流す。

それから眉を顰めた。

すると『俺は君は何者なのか非常に興味があるんだ。...この事をまあ考えておいて』と言ってくる。

傍で聞いていた梓の顔が曇っていた。

俺はその姿を見ながら「用件はそれだけか。切るぞ」と言うと米田は『そうだね。それじゃ』と電話を切る。


「...ちっ」


梓はそう言いながら悪態を吐く。

それから「どうしようか。お兄」と話す。

これは参ったな。

イジメっ子からの完全真逆の復讐か。


「...多分確信しない脅しだ。...だけどまあ放って置いて良いんじゃないか。あくまで証拠がない」

「...でも色々知ってるっぽいけど」

「...まあ確かにな。...取り敢えずは...早めに手を打つか。米田が調べたんなら俺達も米田の事をそれなりに調べりゃ良いんじゃないかな」

「...どいつもこいつもクソだね」

「..それがこの世だからな」


俺は話しながら過去を思い出す。

それは...母親の事を。

母親は言っていた。

最後にこの様にであるが。


「どれだけあっても貴方は貴方らしく」


という事を。

俺はその言葉を噛みしめながら顔を上げる。

それから「確かに目には目を歯には歯をというが何か手が無いか考えたい」と俺は告げる。

そして考えた。

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