第26話 自己の消滅
私達はそのまま夜になってから遠くに引っ越す事にした。
とは言っても夜逃げみたいな感じなので...引っ越すもクソも無い。
持てるだけの荷物を持ってタクシーで逃走した。
そんな感じである。
私はあくまで姉を信頼した訳じゃない。
だけど...正直裏が無いと言いたい。
考えながら私は姉を見る。
姉は真剣な顔で目の前を見ていた。
そして逃走先のアパートにやって来る。
「ここは」
「築40年のボロアパートだけど。...ここは物件情報とか書かれてない。マンションとかに住めば良いのだろうけどね。だけど多分バレる」
「...本当に逃走して良かったの」
「私は間違った事はしてないって思いたい。だからこそまあ...私の事を信頼しなくても良いけどちょっとぐらいは頼ってほしい」
「...そう」
そして私は姉を見ながら目の前のアパートを見る。
それから階段を登ってから私達は室内に入った。
そこは畳のある5畳ぐらいの部屋だった。
私は荷物を置きながら姉を見る。
姉は「お風呂は銭湯しか無いからゴメンね」と言っていた。
私は視線だけで頷きながら周りを見渡す。
「...こういうのは初めて」
「そうだね。確かにあまり外に出てないもんね」
「...本当に変な奴だね。貴方」
「私はあくまで外に逃げたかったし。おかしくてもまあ良かったんじゃないかな」
姉はそう言いながら荷物を広げていく。
静かにその光景を見ながら私は前を見る。
ゴキブリも居そうな感じの壁だ。
隅っこにはカビも生えている。
だけど私は気にならない。
そもそも見つけたなら殺せば良いだけの事だ。
「じゃあどうしようか」
「...今日は寝たい。疲れた」
「そっか。じゃあまあ寝ようか」
そう言いながら姉は寝間着を出す。
それから準備を始めた。
私はその姿を見ながら眉を顰める。
そしてその日は終わった。
正直、こういう日々が良いのかどうかは分からないが。
多少はマシか。
そう考えながら居た矢先の事だった。
翌日になり...何故か父親が家に来てしまった。
☆
「お前の家には丁度良いかもしれない。だが弘子の家にはふさわしくない」
「...何でこの場所が分かった」
「いざという時の為にGPSを着けておいた。それが役に立つとはな」
「...」
姉はまさかの事態に絶句しながらそのまま連れ去られようとしている。
侍女が荷物を纏めながら、だ。
私はそんな姿にこう思った。
コイツらマジに化け物だとだ。
私は思いながら居ると親に突き飛ばされた。
「...では失礼しよう。汚らわしい犬よ。さらばだ」
そして姉は連れて行かれる。
姉は「待って!お父様!」と言っているが話を聞かない。
そのまま連れて行かれた。
後に残された私と...僅かな荷物。
「...ここまでするとは。あのクソ親」
そんな事を呟きながら私は荷物を漁る。
すると預金通帳、暗証番号が書かれた紙と。
何故か手紙が添えられていた。
それは姉からの手紙で(万が一に備えて)と書かれていた。
私はその手紙を読みながらぐしゃっと手紙を握りつぶす。
あのクソ親。
「...あのクソ親のせいで私は...」
私は性格が歪んだ。
だからこそ絶対に許せない。
思いながら私は姉からの預金通帳と手紙と印鑑。
それから暗証番号が載った紙を大事に保管をする。
「...」
幼少期からの虐待。
それから捕まっているが高貴な親戚からの気持ち悪い性的虐待。
実はそれは母親と父親から親戚に負け犬だから自由にして良いと親戚に渡されたから性的虐待を受けた。
親戚はペドフリィアで有名なゴミ親戚だった。
その扱いは犬より下だったかもしれない。
近所の住人に助けを求めて逃げ出したから助かったが。
私の人格はその全てを纏めたおかげで一層の事歪んでいる。
人生の大部分で私はその事でイジメをして感情を満たしていた。
その中で。
私は1年ほど前に徹という彼氏に出会った。
親しい間柄でその間は絶望も何も無かったのだ。
だけど私は...別の彼氏に手を出した。
何故か。
それは簡単である。
私の中で徹から離れた方が良いという感情があった。
「...ああ。成程ね。...私が徹に復讐しているのは徹が単純に妬ましいんだな。存在とかそういうのが...」
改めて考えると私はどうやら徹が好きな様だ。
それ故に浮気したという事だろう。
それはどういう意味かといえば。
徹にその時は(わざと)嫌われたかったのだ。
イジメとかしている中で徹とは釣り合わないと無意識に思った様だ。
「...自己否定ってか。...今更?...私はそんな人間か?」
私はそう自問自答をする。
どうも私はサイコパスかもしれない。
自愛を求めたり突き放したり。
壊れているんだ。
思えば幼少期。
私はクモとか羽虫とかそういうのを殺していた。
嘲笑っていた。
何か...助けが欲しかったのかもしれない。
まあ今更何だという話だが。
「...そうなると私は...ん?私って何者だ?」
私は成宮祥子。
その筈だが名前もそうだが心も何もかもが分からなくなっている。
ピアノをしていたピアニストだ。
だけど今は何だ?
私は何者だ?
「...ここまであれこれ壊れているとか。気が付かなかったな」
姉という存在があったからこそ気が付いた。
だけどそれも今更何だという話だ。
もう私にはお金しか残されていないのだから。
どう考えても全てが手遅れ。
もうどうしようもない。
全てを破壊した様だ。
「...私はどうするべきだ」
そんな事を呟きながら私は天井をボーッと見つめる。
それから考えたが。
やはり私は人をイジメをするのが好きだ。
だけど...だが。
こんな私がこんな事を呟いても仕方が無いが。
「...助けて。なんて言っても偽善だよね。ははは!」
そう呟きながら私は立ち上がる。
さて見捨てられた身。
私は明日をどう生きよう。
そんな事を考えながら私は動き出した。
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