第22話 女子同士の絆
☆山吹小春(やまぶきこはる)サイド☆
衝撃的な事が学校で起こっていた。
何が起こっているのか分からないかった。
その中で私は何だか心がザワザワしたので表に出てしまった。
学校から家から出るなと言われているにも関わらず最低だなって思うけど家に...居るのは今は違うかなって思ったから。
だから外に出た。
それから河川敷を歩いていると...歌声が聞こえた。
私は「!」と思いながら河川敷の下を覗いてみるとそこにギターを持って歌っている...あれ?
「貴方...確か」
「...アンタ...山吹?」
「確か渦宮さんだよね?」
「そうだけど」
「...こんにちはだね。...練習しているの?」
私は雑草の生えている所に腰掛けて渦宮さんを見る。
渦宮さんは「練習...まあそうだけど...」と言いながらそのまま練習を続けた。
その歌声は初めて聞くかもしれない。
だけど心地の良いものだった。
少しだけ高音。
だけどビブラートが心地良い。
風が舞う。
「...山吹」
「...あ。な、何?もしかして邪魔かな」
「違う。...実は...今度、アクアユニゾンスクエアというバンドを結成するんだ」
「あ。そうなんだね。...参加者は?」
「私と...佐藤徹と梓だ」
「...え?」
私は「!?」と思いながらつい立ち上がってしまった。
それから渦宮さんを見下ろす。
渦宮さんは「アンタには伝えておこうって思って」と私を見てくる。
私は涙が滲んだ。
視界が歪む。
「そっか...そっか。そうなんだね。やっと...佐藤君が...」
「な、泣くほど!?」
「そうだよ。私すっごい復活を待ってた。...それは...どれだけ待ったか」
「...」
「どんなバンドよりも好きだから。佐藤君の歌声が」
「...そうなんだな」
そして私は号泣する。
乗り越えたんだなって思う。
私が...かつて。
かつて救われたあの校舎裏。
そして...思い出したけど。
「...とおくん...」
「...とおくんって何?」
「...へ!!!?!い、いや!?何でもない!」
真っ赤になって慌てて私は否定する。
声に出てしまった。
幼い頃の話だ。
私は...彼を知っていた様だった。
今まで忘れていたのだが...幼稚園と幼稚園の合同お泊り会の時に...出てきたアルバムに書いてあった。
その時に仲良くなった佐藤徹くん。
通称とおくん。
何故忘れていたか。
それは両親が亡くなったから私は失語症と記憶喪失になった。
あまりのショックの衝撃で、だ。
だから小学校時代の記憶があまりない。
幼稚園時代の話なんて尚の事無い。
全部吹っ飛んだ。
「...そっか。...佐藤くんは...またバンドをするんだね。応援したい」
「...ねえ。山吹...」
「何?渦宮さん」
「...今回の件とかアンタに色々と救われた。...だからアンタを敵視したく無いけど。でもライバルって事で良いかな」
「...佐藤くんを巡って、かな」
「そう。徹は私のものだよ」
「それはどうかな。私のこの想いは負けないよ。...佐藤くんが好き。負けない」
私は苦笑しながら下に飛び降りる。
それから渦宮さんに近付いた。
そして渦宮さんに握手を求める。
すると渦宮さんはおずおずしたが直ぐに握手してくれた。
「...これからは華さんって呼んでも良い?」
「そっか。アンタがそう呼ぶなら私はアンタを小春って呼ぶよ」
「...うん。宜しくね。華さん」
「そうだね。宜しく。小春」
そして私は華さんを見る。
それから私は「華さん。...貴方は今度の新メンバーでもボーカルなの?」と聞いてみる。
すると「うん」と返事をした。
そうしてからギターを抱えたまま華さんは「もし良かったら...歌を聴いてくれる?」と向いてくる。
「...それは勿論。嫌じゃ無かったら聴きたい」
「じゃあ聴いて。松任谷由〇でVOYA○ER~日付の無い○標」
「...え?松任谷...」
「そう。この曲は私が最も好きな曲。...そしてカバーしたいって思っていた」
「...そうなんだね」
「そう。私が死ぬまでにカバーしたいって思っていた」
それから華さんは「じゃあ歌います」と言いながら歌い始める。
その音楽といい。
歌声といい。
自然に口ずさみ。
それから涙が出てきた。
「...とても良い曲だね」
「私が最も好きな曲だからね。練習はたっぷりした」
「そっか。私が知らない事が沢山だね。本当に」
「...アンタは洋楽が好きみたいだけどこの世界には色々あるよ。探してみたら」
「...そうだね。失語症の時に本当にお世話になったから」
「声を出すのに?」
「そう」
それから私は耳を傾ける。
そして聴いていると華さんは「ねえ。アンタは何か楽器できるの」と聞いてきた。
私は「?」を浮かべて「機械音痴だから出来ないよ?」と答える。
すると「じゃあ何かしない?楽器」と言ってくる華さん。
「へ!?い、いや。良いよ。私は。そういうの無理だから」
「音痴とか関係ない。ほら。ギター持って」
「む、む、無理だって!!!!?」
「ほらほら。持たないと落とすよ」
慌てて私はギターを受け止める。
そして持った事も無いギターを無理に持たせてくる。
私はしぶしぶ持つと「うわ。重いね」と言ってしまった。
すると華さんは「そんなもんだよ」と笑顔になる。
それから「ギターはこうしてこう」と教えてくれる。
弾き方、持ち方。
片っ端からだ。
「そうだね。ここまで鳴らせるとか才能あるじゃん。小春」
「無いよ!?恥ずかしいよ。ただの運動部員だよ私」
「私と音楽しようよ。それが友人ってもんでしょ」
「もー...って。え?友人...?」
「...そう。私はアンタを友人って思ってる。まあライバルなのは棄てれないけど」
私は言葉に衝撃を受ける。
そして恥じらう華さんを見てから私は涙を浮かべて「アハハ。有難う。こんな暴力を振るった女の子を好きになって」と話した。
それから滲んだ涙を拭う。
友人を馬鹿みたいな事で失った様な女の子に寄り添ってくれる。
何だか嬉しくて仕方が無かった。
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