第19話 トレード
☆佐藤徹(さとうとおる)サイド☆
何かがおかしい気がする。
俺は思いながら顎に手を添える。
何だか寒気が止まらないのだ。
風邪を引いた訳ではない。
そもそも今はそんな時期ではない。
あくまで7月だ。
夏風邪といってもありえないだろう。
こんな突拍子に体調がおかしくなるとか無いと思うし。
「...」
学校では緊急の保護者会が行われている。
それは飯場が自殺した事に関してだ。
それに対して緊急的に保護者会が開かれた。
しかも何だか知らないが武宮が不良集団に狙われた様に襲撃された。
所謂、レイプされたといえる。
そんな感じで時間が進んでいくのだが。
気になるのは襲撃されているのが2人とも俺のクラスメイトであり。
イジメっ子なのだが。
どうなっている?
共通点があるのか?
「...何が起こっている?」
俺は自室で考えるが答えが出ない。
考えながら居るとインターフォンが鳴った。
その事に俺は「?」を浮かべて梓と一緒にドアを開ける。
そこに何故か...成宮が居た。
笑顔で「はろー」と言いながらだ。
自信満々の様な感じに見えるが。
何に自信が満々なのか。
「こんな時に何しに来た」
「...うんうん。実はね。貴方の妹さんに用事があるの」
「...は?俺じゃなくて?身勝手だな。俺達に接近するのをあれほど止めろって...」
「そうもいかないね。君の妹さんは犯罪を犯している。いや。周りを利用していると言えるかな。それを見過ごせないからね」
「...は?」
俺は訳も分からないまま成宮を睨む。
すると成宮は何か失礼もそこそこにスマホを弄った。
それから開いたのは...俺には何も分からない英字と数字の羅列。
何だこれは。
「...これはデータを構築する文字ね。このプログラムは梓さんなら分かるよね。君は...もしかして天才的なハッカーかな?飯場さんと武宮さんのSNSのアカウントにこじ開けた侵入の痕跡があったしね」
「...何を訳の分からない事を言っている。梓にそんな力ある訳無いだろ」
「...そうだね。キモイ。何言っているの?」
「あれあれ。白を切るつもり?アハハ。証拠もあるよ」
「...証拠?」
「実は私もデータを弄るのが好き。だからその分、梓さんの昔を調べつくしてみたんだ。そしたら貴方はIQが技術がやたら高いピアニストだったらしいじゃない」と成宮は話す...ぴ、ピアニスト?は?どういう事だ。
俺は一言もそんな事は今まで聞いた事はない。
ど、どうなっている!?
「...まだ証拠はあるけど。というかこのまま粛々と全てを粛清をするつもり?やっている事を警察に言っちゃおうかなぁ。私より悪質だよね?」
「...梓。待て。お前は何を隠している!?」
「...私はピアニストだったよ?それだけ。何もしてない」
「しらばっくれる気?梓さん。今、吐いた方が良いんじゃないかな」
俺は青ざめながら梓を見る。
すると梓は真顔のまま「...私はあくまで行く先を導いただけだから」と言う。
それから俺を見てくる。
「だって許せないしね」と言いながらだが。
何の事だ。
「そんな頭が良すぎる君と取引がしたいんだけど。梓さん」
「...どういう取引?」
「私は徹の周りが幸せなのが許せない。全部崩してくれるかな。関係性の解体っていうか」
「...そんな事できる訳無いでしょう」
「嫌とは言わせないよ。...君はあくまで犯罪者だから」
「犯罪者同士傷の舐めあいをしようね」と言う成宮。
俺は慌てて梓を見る。
梓は目線だけ鋭くしながら「お断りする。私はそういう力は無いから」とニコッとした。
俺はその姿に初めて寒気の原因を悟った。
全ては梓からだったのだ。
「梓。何でそんな事をした」
「...私は冷静にお兄をイジメた事が許せない。だからこそ私はちょっとそそのかしたというかまあ細工をしただけ」
「待て。ちょっと細工しただけって...それで現に人が死んでいる...ぞお前?!」
「...それは私が殺したんじゃない。勝手に行動しただけ」
「梓...!?」
「まあでも私はお兄が好きだから。だからその分私は許せなかった部分は有るね」と言ってくる梓。
そんな馬鹿な...。
俺は思いながら膝から崩れ落ちる。
それから片手で顔を覆う。
「徹くん。どう考えても彼女は頭がおかしい。だからこそ私と組まないと」
「だからこそってお前な」
「私はあくまで人を殺したって思って無い。だからお兄。その女の言っている事はおかしい」
「...」
どっちもどっちとしか...。
俺は考えながらそのままゆっくり立ちあがる。
それから「梓。すまないが考えさせてくれ。それから成宮。お前も帰れ」と話しながら俺はそのまま二階に上がった。
嘘だろ。
どうしてこうなってしまったんだ。
考えながら居ると玄関のドアが閉まる音がした。
それから俺の部屋のドアが開く音がして背後を見ると...梓が居た。
俺はゾッとしながら青ざめる。
梓はニコッとしながら着ている服に手をかけた。
そして何を思ったか服を脱いで下着姿になる。
「何をしているんだ!?」
「私は純真無垢だって事を知ってほしい。だからこそ。ね?お兄。この家には私とお兄しか...居ないんだから」
そう言いながら俺の元に近付いて来る梓。
それから艶めかしい目で俺を見てくる。
そしてしゃがんだ。
まさかと思いながら俺は下半身を隠す。
「...勃起してる?」
「梓。冗談はよせ。俺達はあくまで兄妹だぞ!」
「血が繋がってない、ね。でもまあ血が繋がっていても面白いかもね」
「梓...!」
俺は精一杯に抵抗してから逃げ出す。
だが梓に腕を掴まれた。
それから押し倒されてしまった。
ど、どうすれば良いのだ!
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