世界を変える詩

第9話 貴方の歌

☆佐藤梓(さとうあずさ)サイド☆


お兄の部屋に行ったら鍵が掛かっており。

私は衝撃を受けた。

それから耳を澄ますと部屋で2人はとんでもない事をしているのが分かった。

その事に更に衝撃を受けて鍵を開けようとした。

だけど開かなかったので私は焦っているとドアが開いた。


「梓?」

「...あ。お、お兄」

「...まさか今のを聞いていたのか!?」

「え?な、何の事?」


私はついすっとぼけてしまった。

そして目の前を見ると平然とした顔の渦宮さんが。

私を見ながら「お邪魔したね」と言ってくる。

その様子に私は「あ」と声を出す。


「...何をしていたの?お兄」

「...え?と、特に何も」

「...そう?」

「あ、ああ」


「じゃあお母さんに言っても問題ない?」と切り出す私。

すると「それだけはやめてくれ」と私に必死に謝ってくるお兄。

やっぱり何かあったんだ。

思いながら私は渦宮さんを見る。


「何をしていたんですか?」

「...それは...」

「私...そんなの流石に汚らわしいって思います」

「...」

「お兄。何をしていたの」


その言葉に諦めた様にお兄は告白した。

「俺のやる気を引き出す為にエロい事をしてきていた。だから俺は否定したんだ」という感じでだ。

私は悲しくなった。

「そういう事をしていたんだ」と言いながらだ。


「私だって」

「...私だってなんだ?」

「私だって裸になれる」

「...は!?」

「...お兄。お兄を好いているのは渦宮さんだけじゃ無いよ」


そんな言葉を放ってから私は驚く渦宮さんとお兄を見る。

そして私は「渦宮さん。勝負です。これからは」と渦宮さんを見た。

渦宮さんは「そうなんだね」とそっけない感じだった。

だけどその目には闘争心が宿っていた。


「...貴方も好きなんだ。自分の兄が」

「私達は血が繋がっていません。だからこそ愛して良い。もう我慢できません。渦宮さんの好き勝手は」

「...好き勝手じゃないけどね」

「勝手です。幾ら何でも有り得ない」

「...」

「私はお兄が好きです。だからこそ私は貴方をライバルと認識します」


そして私はお兄の腕を握った。

それから見上げる。

お兄は愕然としながら私を見ていた。

私はその顔を見ながら「お兄。私はずっと前から貴方が好き」と告白した。


「...な、何で俺なんかを好きになるんだ!?」

「お兄。お兄に憧れたからだよ」

「俺に憧れたって...」

「お兄は歌を歌わなくなった。だから私がお兄を助けようって思った。...それが今だって思っていたから」

「...何でお前まで華と同じ様な事を言うんだ」


「私はずっと貴方が歌を歌ってないのを悲しく思っていた。...貴方がやる気を出すなら何でもする。こうなった以上はもう何でもする」

「...俺なんかを好きになって...も」

「私はどうあれ貴方を好きになった。一途になった。私は必ず渦宮さんに勝つ」

「...」


私は決意の証を見せながら渦宮さんを改めて見る。

そして「渦宮さん」と言葉を発する。

渦宮さんは「何」と聞いてくる。

私は「貴方はライバルであり。協力者だと思います。複雑な思いです。だけど...私は必ず勝ちます」と真っ直ぐに見た。


「...そうだね。私も恋のライバルとして貴方を見るし。...そして今の状況を打開する協力者として見る事にするよ。有難う。確か.....梓ちゃんだよね?宜しく」

「はい。何とぞ宜しくお願いします」


こうして私は渦宮さんと固く何か大きな絆を結んだ。

それから打倒お兄の彼女的な誓いも交わした。

そして私とお兄は渦宮さんと別れてからそのまま家に戻る。


「なあ」

「何?お兄」

「何で俺なんかを好きになるんだ?やっぱり分からない。だって今の俺は情け無い存在だぞ」

「お兄が情け無いって思っていても私は情け無いって思ってないよ。私はどうあれお兄が好き。私の初恋は歌だけじゃない。お兄に全てを助けられたあの日。私が落ち込んでいたあの日。歌を歌ってくれたあの日から。貴方に付いて行くと決めたの」


私は言いながらお兄を見る。

お兄は私を見ながら苦笑しながら赤面しながらみたいな感じになっていた。

私はその姿を見ながらクスクスと笑う。

それから「そうなんだな」と言うお兄に「うん」と返事をした。


「俺はお前に好かれる程の事はしてない。だけどお前がそう言うならきっとそうだな。お前を救っていたんだ」

「うん。だからお兄。貴方は誇りを持って動いて良いんだよ。私達が支えるから」

「良い奴らに恵まれたもんだな。俺は」

「良いか悪いかは別にして。お兄はもっと胸を張ってね」


私はそう言いながらお兄を撫でる。

お兄は「子供じゃないんだから」と反発しながら苦笑いを浮かべた。

それから私達は笑いあった。


だけど問題はまだ解決していない。

さあどういう一手を組もうか。

そう考えながら私は顎に手を添えた。

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