第4話・共同作業
「へえ、君が作ったんだ。すごいね。居心地いいからつい寝ちゃったよ」
目を覚ました少年は、僕が作った拠点を褒め称えた。勝手に入られてビックリしたけれど、褒められて悪い気はしない。
「屋根があると安心感が違うよね。中も落ち葉や小石が無くて座りやすかった。クッションあるからおしりも痛くないし」
「へへ、よかった」
これが友だちだったらダメ出しばっかされるんだろうな。やれ場所選びが悪いだの、素材がイマイチだの。でも、少年はネガティブな言葉を使わず、ただただ褒めてくれた。嬉しくて、僕は自然と笑顔になる。
少年の年齢は僕の一つか二つ年上くらいだろうか。たまたま迷い込んだだけなら後で大きな道まで送ってやればいい。そう思い、僕は作業を続けた。
「今は何をしているの?」
「屋根がシートの重みで曲がっちゃったから、頑丈に作り直してる」
「縛るのに使ってるのはなに?
「うん」
騒がしいのは嫌いだけど、彼は何故か平気だった。友だちみたいな我の強さも強引さもない。自然体で話し掛けてくれるからだ。
骨組みの補強が終わり、再び元の位置に設置して、上からビニールシートを被せる。さっきよりしっかりとした屋根が完成した。
「この板は何に使うの?」
「木に立て掛けて壁にしようと思ったんだけど、高さが足りなかった」
「じゃあ下に敷いちゃおうか。厚みもあるし、表面はツルツルだし、地面に直に座るより良くない?」
「そうだね、やってみる」
他の場所に比べれば平らに見えるが、地面は多少ボコボコしている。そこで、落ち葉を集めて敷き詰め、上に板を置くことにした。
「これで座ってもおしりが汚れずに済むよ」
「ホントだ、いいね」
並んで座っただけで、狭い板の上はいっぱいになった。でも、悪くない。
僕は名前も知らない少年と二人、森の拠点で笑い合った。
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