第4話 乳ドン・インパクト
「この辺りの備品と資材、全部玄関に運んでおいて」
椿原部長は俺を倉庫に連れてくるなり、こともなげにそう言った。
あっさり言ってくれるが、大きめのダンボールが四、五十個はあるんじゃなかろうか。
思わずマジかという気持ちが顔に出てしまった俺に、部長は目ざとく突っかかってきた。
「女性社員にやらせるのは可哀想でしょ。男なんだから体使って貢献しなさいよ。それくらいしか、そのご立派な体格を活かせないでしょうに」
レッドカードがたくさん貰えそうなハラスメントワード満載の発言にもはや舌を巻きつつ、しかし確かに諸先輩たちにやらせるのもなぁと思ってしまう俺もいた。
運動部出身としては力仕事にを抗はなし、男の方が率先してすべきというのは、まぁ時流とは違うかもしれないが俺も思うところではある。
それにしたってちょっと量が多いけれども。
「午後イチで業者さん引き取りにくるから、それまでには全部運んでおいてよ?」
「それってつまり、あと三十分くらいってことで……」
「そうだけど? 集荷が遅れたら納品も遅れるんだから、ちゃんと間に合わせてよね」
明らかに達成不可能な条件を堂々と提示されては、もう反論する気力も起きない。
こういう場合、その条件をクリアすることは然程重要じゃないんだ。次なる文句の種を準備しているにすぎない。
だからといってそれを達成する努力を怠るわけにはいかないという、かなり面倒なパターンのやつだ、これ。
俺はバレないように小さく溜息をついてから、気を入れて作業に取り組むことにした。
幸い一つひとつはそこまで重くないから重ね持ちでいけそうだ。
ただ倉庫は玄関から一番遠い位置にあるし、これから何往復もすることを考えるとあんまり無理はできない。
というか、いつもあるはずの台車、なんで一つもないんだ?
「ちょっと、そんなちまちまして本当に間に合うの?」
とりあえず温存と小回り重視で二つずつ運ぼうと重ねた段ボールを持ち上げたところで、椿原部長が鋭い声を上げた。
俺に作業を言い渡してオフィスに戻ったのかと思っていたが、どうやら監視するつもりのようだ。
それなら手伝ってください、とはまぁ言えない。
「男なんだからもっとどかっと運びなさいよ。間に合わせるつもりあるの?」
そんなことをブツブツとこぼしながら、椿原部長は近くの段ボールを一つ抱え上げた。
その姿を見て、俺は思わず抱えていたものを取り落としてしまいそうになった。
思いがけぬ光景にビビビときてしまったのだ。
そこまで重くはない段ボールを一つ、やたら重そうに抱える椿原部長。
男女の腕力の差かとも思っただが、どうやら性差の問題ではなく部長の個人的なハンデによるもののようだった。
段ボールの上に重りが二つ乗っかっているのである。
椿原部長くらいになると確か合わせて三キロくらいはあるようなので、このそこまで重くないダンボールも、一緒に持ち上げればそこそこ重くなるというものだ。
もしかしたら、段ボールに乗っけることで肩の負担を和らげるというテクニックなのかもしれないが。
箱に完全に乗っかり、やや持ち上げられている椿原部長の胸は、さっきの寄せて上げている状態とはまた違った強調のされ方をしていた。
普段はジャケットなどの衣服でよくは窺えないアンダーの部分がくっきりと現れている。
トップで突っ張りそこから降下した布地がぼかしていたウェストとの落差が浮き彫りになり、下乳の奥行きが明確になってしまっているんだ。
丸みを帯びた二つの重りの形が浮き彫りになり、3D映画のような立体感を覚える。
そして何より、収まりどころを得た乳房がその重みを箱に預けてたわんでいるのがものすごくエロい。
寄せられることによって縦に歪むのもとてもたまらないが、重力に任せて横に流れるように歪むのも格別だ。
下着をしていてもこうも流動するのだから、ノーブラの時はどれだけ滑らかに変形するのかと考え始めると、もう妄想が止まらない止まらない。
「ほらもう一個。ちゃっちゃと運ぶ!」
俺が感動を噛み締めているところに、椿原部長は自身が抱えていた段ボールを俺の持つそれの上に積み込もうとした。
よせばいいのに、なんだか反射的に詰みやすいよう屈んでしまって、部長はやや唸りながら段ボールを持ち上げて俺に押し付けてくる。
一個増えるだけでズドンと重量が増したが、そんなことよりも椿原部長が頑張って箱を高く持ち上げた時、胸がぐんにゃりと変形しまくっていたのを俺は見逃さなかった。
「椿原部長……これ、結構キツい、ですっ……」
「弱音なんて聞きたくないわ、情けない。男のくせになよなよして」
重量そのものというより、段ボールが積み重なったことによる高さのバランスの方が問題だった。
高さが増すことで実際の重さよりも更にしんどくなるし、バランスがとりにくいと動きづらくなる。
結果的に効率は激減しそうだけれど、そんなことは部長には関係ないのだ。
「とにかく、時間までに終わらせてちょうだい。力仕事くらいまともにこなしてもらわないと」
椿原部長はそうあからさまに溜息をつくと、どうやら今度こそオフィスに戻るようだった。
それなら次からは数を減らして運べるな、なんて思っていると、俺の横を通り過ぎて倉庫を出ようとしていた部長が俺に思いっきりぶつかってきた。
「う、わっ……!」
普段なら女性に多少強くぶつかられてもなんの問題もないが、今は荷物を抱えてバランスが悪かったのもあって、俺は簡単にひっくり返ってしまった。
なんとか荷物は横に崩すように落とせたから、下敷きになるようなことはなく、また箱自体にも然程のダメージは及んでいないようだった。
中身も確か割れ物や貴重品類ではないから、このくらいの衝撃なら問題ないだろう。
「ちょっと、何やってるのよ!」
しかし、俺の転倒の原因である張本人は、カッとまた怒りを露にした。
あなたのせいで転んだんですけど、とはもちろん言えないのでとりあえず平謝りだ。
それにしても、肩ドンを重い荷物を持っている人にするとか、なかなかアウトラインに近い行為だ。
いや、今のを肩ドンと呼んでいいのだろうか。未知の感覚だった。
確かに最終的には椿原部長の細い肩は俺に接触はしたのだが。
けれど、わざとぶつかるために振りかぶった肩が俺を打つ前に、合わせて振りかぶられ、そして遠心力を伴って先に叩きつけられた柔和な感触の方が圧倒的に衝撃を持っていた。
あれは肩ドンというより胸ドン、いや乳ドンだった。
すれ違いざまにぶつかるというより、叩くことを意識したせいで、肩よりも胸が先に俺に到達してしまっていた。
ボディラインを逸脱する膨らみを持っているからこそ成せる技。もちろん本人はただ肩ドンをしたとしか思っていないだろうけれど。
骨ばって固いが接触面積の少ない肩よりも、柔らかくも接触面積が広く、何よりも体積と質量のある胸でアタックされた方がよっぽど衝撃があった。
痛くはなかったけれど、衝撃は結構あった。
多分、普通の肩ドンだったらこの荷物を持っていても堪えられただろう。
こうしてひっくり返ってしまったのは、その乳ドンの柔らかくも確かなインパクトのせいだったと思われる。
「そのくらいの荷物でへこたれるなんて情けないわね! それでも男なの!?」
未だ乳ドンの衝撃────気持ちの上での────から抜け出せないでいた俺に、椿原部長は水を得た魚のようにガミガミと捲し立てた。
ひっくり返った俺の頭上付近に仁王立ちして、俺を蔑むように見下しながら、あーだこーだと罵倒を振り撒いている。
これ、本当にわざとじゃないんだろうかと今でも時々思うのだけれど。
でもわざとやってもなんの得もしないだろうし、だからまぁやっぱり無自覚なんだろう。
これをこのお固くてキツい、でも美人な椿原部長がしてるっているのが、めっちゃそそるんだよなぁ。
そんなことを俺は、頭上の赤いパンツを見上げながら考えた。
アングルとしてはスカートを真下から覗いているのとほぼ変わらない光景が目の前に広がっている。
座っている太ももの隙間から見えた今朝とは違い、その全貌はもうはっきりと観察可能だ。
セクシーめなものだとは思っていたけれど、予想よりももっと攻めたものだった。
透け感のあるレース生地は局部付近以外はほとんどで、ところどころに花の刺繍があつらえられている。
紐パンというほどではないが、しかし脇のあたりなんかはかなり細く、華奢な腰つきが目立つようになデザインだ。
肉付きのいいムチっとした白肌の太ももと、真っ赤なパンツの紅白なコントラスがいい。
椿原部長がわずかに姿勢を揺らすたびに、パンツの生地がいろんな食い込みを見せてくれるのもまた、日常で味わってはいけないレベルのエロさだ。
さっきからの胸の連撃、からの締めのおパンツ様。
なんだか、荷物運びが間に合わなくてまた怒られてあげるのもいい気がしてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます