Graduate first ④
「でも二十人でしょう?」植田が
……夏樹先輩はフリーで動けるとしても、三年生は基本、今年の引退試合に向けて動いてる──でしょう?」
「そうなんだよ、そこなんだよねえ」先輩が顔をしかめた。「ただ、幽霊部員やってて、今さら受験の内申点ほしさに部活を再開したがってるヤツがいるのも確かなんだよ。……サイアク、そういったヤツらを勧誘するのもアリだけど、それは最終手段かなあ」
「それって、そういった人達の
先輩は
「そうなんだよ。とくにオレらの代ってヤンキーが多くて、問題行動ばっか起こしてるだろう? ろくすっぽ学校に来ないヤツもいるし。
そういった連中が今さら、受験を目の前にした時に、内申点欲しさに部活に顔出したいとか云いだしてさ、でも自分よりできるようになった同級生と後輩にバカにされるのもイヤだとか
──プライドとか
自分勝手でわがままな理屈を並べて、オレの同級生の部員が頭を抱えてるよ。自分達は引退試合と受験に集中したいのに、はっきりいって、どうでもいい問題を増やすなよって。
『ヤンキーやってたヤツらは今まで好き勝手してきたくせに、なんで関係ない自分達がそのしわ寄せを埋めなきゃならないんだよ?』って愚痴ってる。
だから〝新しい部活を立ち上げる〟なんていう話しが、そのあぶれてる連中の耳に入ってみ? これ幸い、渡りに船で、どっと押し寄せてくるぜ? ゾッとするだろう?
──で、そんなヤツらがおまえら一年に良い影響をあたえてくれると思うかあ? どう考えても逆だよなあ? 悪い影響しかねえよ。
しかも部活に参加したからって、そいつらが改心するとも思えない。どうせまたすぐに幽霊部員になって、サイアク、同じ道に一年を引きずりこんでしめしめするぞ、あいつら」
先輩のしめくくりを聞いて、正直ゾッとした。
せっかく心機一転、前向きに進もうとしてるのに、そんな面倒な事に足を引っぱられたくない。
植田は思考を切り替えたらしい。顎に手をあてて考えを巡らせてる。
「じゃあ二年生は?」
先輩が肩をすくめた。
「二年なら、まだ救いようがあるかもな。一年の時に選んだ部活を渋々つづけてるヤツがいる。──やってみてから気づくことってあるよな。人それぞれ、やっぱ向き不向きってあるよ。向いてるヤツは才能を開花させてどんどん伸びていく。
そうじゃないヤツは自分の中でどん詰まりを感じて、やる気をどんどん
それでもつづけられるのは、友達と一緒に楽しく部活ですごせる時間があるからっていう理由と、単にその運動が好きなだけか。
ただ
……
自分達に合う部活に
「──つまり、残り大半は一年から二十人集めなきゃならいって事だね」ぼくはまとめた。「色々な経験者で、今まで広くを見てきた夏樹先輩の意見が聞けて良かったよ。……部活作るのも大変そうだけど、最初のメリットとしては、人選ができるって事だね」
先輩がぼくをビシッと指さしてきた。「そういう事!」
…*…
そこからは、どうやって勧誘するかの手段を選ぶ話し合いになった。
ビラを
あとは口コミ。これも意見が後ろ向きだ。
植田が頭の後ろで手を組んでぼやいた。
「口コミで広がるのは時間がかかるし、広がる頃には部活動参加希望の入部届の締め切りが過ぎちゃってて、みんな所属する部活を決めたあとになる可能性が高いよなあ」
「──で、やっぱり来てほしくない人選の耳に届いて、来るのはそういった人達ばかりになると……」ぼくが補足する。
先輩が笑顔を広げた。「当初の予定どおり、自分達の足を使って勧誘しまくろうぜ!」
「当初の予定って……ぼく達、その当初の予定を聞かされてなかったんですけど」植田が疑いの眼差しを先輩に向けた。「それって夏樹先輩の中では、もうすでに答えが出てたって事じゃないですか。──ったく! まわりくどい人だなあ」
「自分達で答えにたどり着くほうが納得するだろうと思ってさ!」
「まあ、しましたけど」植田が渋々認める。
ぼくはこれからの先行きに見通しを立たせた。「勝負は明日からの二週間だね。部活見学期間のうちに、声をかける。……部活がまだ無い以上、見学はできないから、勧誘のみ。
その時に決まってるメンバーの名前を出して安心材料に使う。──部長は、夏樹先輩でいいよね?」
「──え?」先輩がキョトンとした。……おいおい、そこは考えてなかったのかよ。まったくほんとにこの人は、もう……。
「オレもメンバーにいれろよな?」植田が前のめりで念を押してきた。
「あれ? バスケ部はどうしたの?」返ってくる応えはわかっちゃいたけど、からかいを入れる。
「バスケ部は第二候補にするよ!」植田がニカッと白い歯を見せた。「サッカー部の立ち上げ・在籍が第一候補! 部活の立ち上げなんて、面白そうじゃん! それにオレらが初代になるって事だろう? ……くすぐられるよなあ」
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