Please don't be a stranger ④
ぼくは先生のあとについて歩いた。
歩きながら、先生がこの学校の仕組みを、おおまかに説明してくれてる。
この姫小は、校舎が二つあって、
一年生と二年生と四年生が、この職員室のある
四階建ての本校舎には、三年生と五年生、六年生の階があるんだそう。
今、ぼくは、先生のあとについて、本校舎と別校舎をむすぶ
通路から別校舎にはいったところで、先生は面白そうにぼくに声をかけてきた。
「どうして、四年生じゃなくて、三年生が本校舎のほうに居ると思う?」
そんな事を訊かれても、この学校にとって、ぼくは新参者だ。
わかりっこないじゃないか。
……けど、そうだなぁ……心あたりは、ひとつだけならある。
どんな理由であれ、世の中はいつだって大人の
「そのほうが、学校にとって、都合がいいからなんじゃないですか?」ぼくは適当に──だけど、あてこするように──ボソリと応えた。
すると先生は、歩きながら振り返って、
まるくした目を上下に
「そう、そのとおり!」
先生はズバリという口ぶりで、ちょっと
「問題ばかり起こす三年生が、職員室の真上にある階に居ると、先生たちは助かるんだよ。──いやぁ~、まったく、問題児ばっかりで、先生、困っちゃってるんだよねぇ~。
うん、ぼくには、先生がなにを云いたいのかが、よーくわかるよ。
それにしても……〝三年生が問題児ばっかり〟か。
このフレーズに、ぼくはなぜか興味をそそられた。
「そんなに三年生は
先生は、困り顔をして、悩ましげに頭を振った。
「そのうちわかるよ。鳥海くんも、三年生には近づかないで。あの学年、大人の僕たち──先生でさえも、たまに手に
先生は、心底
三年生は、そんなにひどいのか。
先生を、こんなに困らせるぐらいの騒ぎを起こすなんて……。
……ちょっと、見てみたいな。その、先生がてんやわんやする大騒ぎっぷりを。
いったい、どんな騒ぎなんだろう。
ぼくは、いけない好奇心にそそられながら、先生のあとをついて、別校舎の階段を
四年生のクラスは、この別校舎の最上階にあたる、三階にあった。よりにもよって、最上階だ!
学校に、復帰したしたばかりのぼくに、三階まで登るこの階段が、ことさらきつく感じる!
けど、これしきの事で、弱音を吐いていられない。
ぼくと同じ四年生はみんな、日々あたりまえに、この階段を登り降りしているんだから。
体育の授業だって、校庭を使うにしろ、体育館を使うにしろ、いちいちこの階段を登り降りしなくちゃならないんだろう?(うわあ~、先が思いやられる!)
ぼくがこれからに向けて心構えをしていると、先生は教室の入り口で足を止めた。
どうやら、ぼくの──この葛城先生が担当している──クラスについたらしい。
教室は、担任の先生がまだ来ていないのをいい事に、生徒の子供たちが、かまびすしい声をあげて、好き勝手に騒いでいる。
ぼくはクラスのドアを見上げ見た。クラスの学級表札を確かめる。
……四-三。ぼくは、三組か。
「そう」先生がぼくと同じに、学級表札を眺めて声をあげた。「ここ三組が、僕ときみのクラスだよ。鳥海くんは、ちょっとここで待ってて。先生が呼ぶから、呼んだあとに教室に入って来てくれる?」
「はい」
ぼくは心臓をドキドキとはずませて返事をした。
先生がクラスのドアを引き開けて、先に教室へ入っていく。
先生が教室に
先生は、自分がクラスに入ると、ドアをいったん閉めた。
ぼくは、なんの悪さもしていないのに、閉め出された気持ちを味わいながら、先生が呼ぶのを待った。
心臓はまだドキドキしている。……だんだん緊張してきた。陽のあたらない廊下が、やけに寒く感じる……。
廊下は、ビニール製の床紙が深緑色をしていて、真ん中には白色で中央線が引かれてある。……なんだか、ぼくが今までさんざん居た病院の造りにそっくりだ。
心臓が、ドキドキしすぎて、頭がクラクラしてきたぞ……。これは、まともな、正常な反応なのか? 健康体の人の、緊張するときの生体反応なんて、ぼくは経験したためしがないから、なにもかもが初めてでわからない。
……ぼくは、今のぼくは、まともなのだろうか。……不安でたまらない。
見知らぬ学校。見知らぬ人ばかり。それなのに、廊下においてけぼりをくらって……なんだか、だんだん淋しくなってきた。
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