Even though you've lost your mind ①
紫穂が〝正気をとり戻しつつある〟!
こんな時間に電話してくる時点で、おかしいなって思ってた! でもまさか、今さら鳥海くんがらみの話しを持ち出してくるなんて、思いもしなかった!
どうにかして、この話しを
あの子は昔からそうなのよ。
やたらと
夜中の三時過ぎ……もうすぐ朝の四時になっちゃう!
ああ、もう! また寝不足! ほんとサイアクだよ! こんな時間に電話してきて、頭がまともに働いていない眠い状態で、話しを
私がへんな行動にでたら、紫穂はますます勘の鼻を
紫穂にすべてを
マキとの約束、どうしようかな……今からメールしとこ! この時間なら、なおのこと説得力があるってもんだし。それに、もともと今日マキと遊ぶのは気のりしてなかった。
マキもサイアクなんだよ。小学生と、幼稚園児の年長さんの、男ばっかりの息子ふたり。マキは母親失格だよ。あの二人の男の子、ぜんぶの歯に虫歯があった!
私は歯医者につれて行ったほうがいいって云ったのに、マキときたら、笑い飛ばしてきた。「もう、
イラッとした。
私は〝お金持ちの地位のある家〟に
これまでの私の人生のなごりであるマキ。
マキと顔をつき合わせ、話しをていると、まるで過去の自分と鏡を見合わせているようで、イヤなのよ。
自分がいかに
マキはさらに、
「先生たちからも、歯医者につれて行けって云われてるけど、大袈裟じゃない? どうせ乳歯は抜けて、きれいな大人の歯がはえてくるんだから、べつにいいじゃんねえ?
このあいだは知らない番号から電話がかかってきて、なんだろうって思ったら、まさかの
信じられないのは、こっちだよ。
その
こっちは可愛い天使のような娘を、まめまめしく育てあげ、
〈マキ、悪いんだけど、今日は遊べなくなっちゃった〉
マキにメールしてから、はたと思った。理由、考えてなかった。──もう! なにもかも紫穂のせいだよ! こんな時間に、こんな話しをしてくるから! 動揺して頭が働かない!
でもあまりあいだをあけてメールすると、言い訳してるってバレちゃう。私はパッパッと、いつものパターンを演じた。
〈妹がかなり思いつめたようすで電話してきて、こんな時間になったの。妹だからほっとけなくて。寝不足だから運転はムリだし、子供達と遊ぶ体力も残ってないや〉
これでよし。
私は〝妹
これならマキも私を
誰にも、私の邪魔はさせない。
私は、やっと今の地位にのぼりつめたんだから。
──私のお母さんは、あの〝お花畑の頭〟で、ずっと夢見ていた。〝お金持ちのお嬢様〟になりたいって。
私は、そのお金持ちの家に結婚して、お母さんが憧れている存在になった。お母さんを見返してやった! 私より、紫穂を
紫穂もいい
あんな一般ピーポーな人と結婚して、底辺な生活をおくってる。専業主婦になれなくて、毎日、ワンオペ育児に追われながら仕事なんかしちゃってさ。ほんと、ざまみろよ。
紫穂は昔から、姉である私をさしおいて、
勉強もできるし、部活でダンスをやってスタイル抜群で
おまけに、顔立ちもいい……認めたくないけど。……ムカツク!
高校生のころ、私は
そしたらお母さんは、私のノートを
「紫穂は『最後の
だからあなたも、ちゃんとした字が書けるはずなんだから、そんな古代エジプトみたいな、読解困難・解読不可能な形象文字なんて書くのをやめて、まともな字を書く練習をしなさい。みっともないわよ?」
手紙を書きおえたら、たまには勉強してみようかなって考えていた。だけどお母さんのこの言いぐさで、私の〝やるきスイッチ〟は永遠に消え失せた。
ああ……思いだしただけで腹が立つ。
けど、この家に
「これじゃあ毎年出す年賀状が
あなたペン習字を
ああ、あとそれから華道も習ってちょうだい。うちの高級料理店では、全部の客間に毎日お花を
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