第34話 硬く、早く、強い蜘蛛

「ここで麻痺とかキツすぎませんかねぇ…!」


 ボス蜘蛛の毛飛ばし攻撃を魔法障壁と夜叉で凌いでいくが、麻痺のせいで夜叉が間に合わず被弾が増えていくのを無理矢理回復ヒールで誤魔化していく


「確かに初めて麻痺を受けた時よりはこうして戦えるだけマシだけどさぁ…あのオーガクラスのヤツがやっちゃいけないと思うんですよねぇ!」


 突進を足の間を潜る事で回避するが、夜叉による反撃までは持っていけない、


「魔法で倒すにしてもこの調子じゃなぁ…火球ファイヤーボール


 今使える魔法の中で最も蜘蛛に対して効果の高かった火属性魔法だが、その毛に当たった途端にアンチマジックバリアでもあるのかと言いたいくらいに呆気なく霧散する。流石に1ミリもダメージを受けている様子が無いので何かしらの仕組みがあるのだろう。


 より火力を高めた火属性魔法なら倒せない事も無さそうだがそれをやるには火属性の練度が低くタメが必要になってしまう。


 普段なら大した問題でも無いが、麻痺の最中にただでさえ早い蜘蛛相手にタメを行う余裕など無い、なら足を狙って機動力を落としたい所だがそれも麻痺のせいで難しい。


「クソッ、コイツ麻痺との相性最高かよ!俺からしたら最悪の組み合わせだな!かくなる上は仕方ない…か、逃げるんだよ!あくしろよ!」


 洞窟内部を爆発移動まで使ってたまに壁に突っ込みながらも逃げ回り麻痺から回復するのを待つ、麻痺抜きの状態なら良い勝負だったのだから切り札も切ればどうにでもなる筈だ。と言う注釈こそ付くが…

 幸いにも蜘蛛のモーションは一定のパターンから変化していないのでなんとかなりそうだ。


 再び蜘蛛が毛飛ばしのモーションに入るので最低限致命傷になり得る所のみを最優先防ぎ後は最悪回復ゴリ押しを行う体制に入る。


「オラッ!三本いないに収めてやったぞゴラ!」


 毛の処理が終わり後は抜いて回復するだけ…と言う所で異変は起こった。


「ガハッ!?!?」


 全身に走る激痛に膝をつき込み上げてくる物を吐き出す。地面に撒き散らされたその赤黒い液体は間違いなくだった。


「なんだ?!なんで血を吐いた!?被弾したとは言え脇腹と二の腕じゃあ致命傷とまでは行かない筈!」


 慌てて毛を引き抜いて回復ヒールを行おうとするが、そこで違和感に気づいた


「毛の色がさっきまでのとは違う…?まさか!」


 さっきと同じように『ステータス』を開くと状態異常の枠にもう一つ、状態異常が追加されていた。


 状態異常 麻痺 


 他に状態異常を扱う敵のいない上層に一体で状態異常を二つ扱かうヤツがボス部屋にいるとか言う暴挙、やはりこのダンジョンを作ったやつは性格が歪んでいる。


 他に状態異常を使ってくるモンスターがいなかったので状態異常から回復できる聖属性の魔法はいまだに使えていない。


 激痛と痺れで動かなくなった身体にボス蜘蛛の腕程の太さはあろうかと言う巨大な牙が迫る。


「ヤバい死ぬ…ガッ!」


 そのまま壁際まで弾き飛ばされて地面にひれ伏す。


「クソッ、肋骨が何本か逝ったか?どうしろってんだよ…こんな痛みの中で動けるのなんて狂戦士バーサーカーくらいしかいねぇぞ…」


 蜘蛛がトドメを刺そうとその鋭く尖った足の先端をコチラに向ける。


「そうじゃん、アレがあった。デメリットがありそうで使わなかったアレが」


 蜘蛛の命を刈り取る槍と化した足が胸を貫く直前


「『夜叉狂乱』発動」


 俺は夜叉が持っていた最後のスキルを発動し、瘴気を纏った腕で

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