第31話 ボス部屋前の1悶着

あの熊はやばかったが、あの森で徘徊していたのは1体だけだったようで、他には精々蜘蛛の糸による拘束に気を張るだけで良かった。トラップも数が激減しており1,2個あるかないか、と言ったところだろう。

そんなこんなで蜘蛛の外骨格がドロップしたのにおののいたり、火属性魔法で丸焼きにしてやると意外といい匂いがしたことにショックを覚えたりしながら19階層に辿り着き、今目の前に20階層のボス部屋に繋がるであろう洞窟があるわけだが・・・


「なぁんで蜘蛛2体が殺し合いしてるんですかねぇ・・・」


洞窟前の広間で軽自動車サイズの蜘蛛2体がR18も真っ青な殺し合いとでも言ったらこの光景を理解できるだろうか


「あ、足飛んだ」


仮に蜘蛛Aと蜘蛛Bとしよう。

現在蜘蛛Aが蜘蛛Bの足2本をその足で切断し、そのうちの片方が観察のために隠れている大木に突き刺さっている。


しかし、蜘蛛Bも負けたものではなくその巨大な牙を蜘蛛Aの腹?らへん(要は蜘蛛の尻の方)に突き立てそのまま食いちぎる。


たまらず絶叫を上げる蜘蛛Aを見ていると、自分で体験する事にならなくて良かった。と思わずホッとした次の瞬間蜘蛛Bが残った足を食い破られた蜘蛛Aの腹に突き立てた事が決めてとなって蜘蛛Aは魔石だけを残して消えていった。


蜘蛛Bはと言うと残された魔石をその鋭い足で器用に持ち上げ食った。


「え???」


若干想定外の挙動に同様するも更に驚くべき出来事が起きた。


「モンスターって魔石を食うと肉体まで再生するんだ・・・俺の上位互換じゃん」


なくなっていた足が一瞬で生えると同時に存在感が一段と強くなる。


「モンスターのレベルアップってやつなのか?だとしたら長らく放置したダンジョンの中はとんでもないことになりそうだな」


いつまでも観察していてはキリがないので洞窟に向かうべく隠れていた木の上から降り立つ。


「キシァァ!!」


前足2本を振り上げて威嚇する蜘蛛、まるでこの後ろに巣でもあるのかといわんばかりの必死さに、案外次のボス部屋は巨大な巣なのかもしれないと勘繰りながら夜叉を抜刀する。


蜘蛛はこれを攻撃の意思あり、と判断したのか威嚇を止め糸を噴射してくる。


『怨念の炎』を夜叉にまとわせて薙ぎ払おうとするのだが、糸と刃が触れた時に違和感に気がつく。


今までの蜘蛛に比べて糸が硬いのだ。今までのが大綱引きで使う縄くらいだとしたら今回のは同じ太さの鉄と同等といった所か。

威力も上がっていて潜伏していた大木をその後ろまで込みで根こそぎ木端微塵にしていた・・・とまぁ、ここまでは強い所を上げていったが他の通常個体も含めて相変わらず弱い所がある。


「相変わらず火に弱いもんなぁ・・・」


背後に火球ファイヤーボールを大量に生成して叩き込む、多少強くなろうと基本は変わらなかった蜘蛛Bは哀れ魔石だけを残して蜘蛛Aと同じ末路をたどるのであった。


「あ、蜘蛛Bの魔石から『糸生成』が手に入ったや、これでいい加減に服を名乗れなくなった服とおさらばできるかねぇ」


ちょっと気分が上がりながら20階層に足を踏み入れるのであった。

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