第7話 ユニーク装備『煉獄刀 羅刹』

「ヨシ、あの群れで良いかな?」

 見つけたのは特大の群れでスライム2体、コボルト3体、盾と剣持ちゴブリン2体、槍持ちゴブリン5体、魔法使いゴブリン3体の計15体のこの階層では最大サイズの群れだった。


 向こうの群れはまだこちらに気づいていないようだ。魔法使いもいるがあくまで今回は新武器の試し斬り、だから武器と『武装強化』のみで全滅させる!


「行くぞ『煉獄刀 羅刹』」

 初回なので少し格好つけて名を呼んでから抜刀する。

 すると魔法を使っていないのに身体から魔力が抜け落ちていく感覚を感じる。

「あぁコレが呪いの一種、『戦闘時MP継続消費』か」


 まぁMP継続消費なら『過剰魔力蓄積』があるからどうとでもなる。


にしても羅刹は所々血が錆びついた様な模様が付いていて刃の部分は禍々しい赤茶色だ。

見るからに呪いの武器って感じだが斬れ味は素人にも良さそうに見える。


 群れに向かって全速で駆け出し『武装強化』した羅刹でスライムを切り裂くと、スライムは一撃で魔石とスライムゼリーを残し消滅した。

「おぉ、流石Sランク武器、木刀とは斬れ味が段違いだぜ」

 そのまま飛びかかってきたもう一体のスライムを処理し、群れから1度距離を取る。


 すると魔法使いゴブリンからそれぞれ火球、水球、土球が飛んでくる…が羅刹を煌めかせ魔法を断ち切る。


「魔法も武器が良ければ斬れるんだな、いや?多分初級魔法だからか?どちらにせよ技術を高めればできそうだ。んでこっちもやってみるか」


 感覚的なものだが体内で魔力を練り上げると威力が上がる事が検証で分かったため、魔力を練り上げ、手に圧縮して新たな力を試す。


「『呪』魔法発動『鈍足の呪い』」

 手から紫と水色の混じった光が出てゴブリンやコボルトに纏わりつく、コボルトがこちらに向かって駆けてくるが前まで戦っていたコボルトより明らかに遅くなっている。


「相手へのデバフや攻撃が『呪』魔法か…予想通りだな」

 いくら3体がかりで後衛から魔法が飛んできているとは言え敵では無い、すれ違い様に首を斬り飛ばして終わりだ。


 盾と剣はゴブリンは防御が硬く、槍ゴブリンと連携してくるので崩し辛い、ここで俺は羅刹に魔力を流し武器スキルを発動する。


「灼きつけ、『怨嗟の炎』」


 炎が吹き出すと言った事は無かったが刀身が紅く染まり刀の周囲が蜃気楼のように揺らいでいる。


「シッ!」

 盾と剣持ちゴブリンの間から突き出された槍の穂先を斬り落とすと木製の持ち手部分が燃え上がりあっという間に槍持ちゴブリンを焼き尽くし、そのまま2体の槍持ちゴブリンにも燃え広がり焼き尽くした。


「うっわ明らかにオーバーキルだなコレ、魔力もそれなりに消費してくし一旦切るか」

 1度『怨嗟の炎』を停止し、もう一つの武器スキルを使用する。


「縛れ『怨嗟の呪縛』」

 こちらは刀身が黒く染まり半透明な黒いオーラが出ている。


 盾と剣持ちゴブリンに対し突っ込み魔法を斬り落としながら盾ごと斬りつけると、オーラが黒い鎖のように伸びゴブリンの動きを拘束する。


「ん?腐ってる?」

 更に鎖に触れた部分が音を立てながら黒く変色し溶けていく…


「コレも迂闊には使えんな」

 それを助けようとし、鎖に触れたゴブリンも巻き取られていくのを見ながら『怨嗟の呪縛』を切る。


 残りは槍持ちゴブリン1体、盾と剣持ちゴブリンが1体、魔法使いゴブリンが3体である。


「最後は消耗が激しそうだけど同時に使うか『怨嗟の炎』『怨嗟の呪縛』」

 武器スキルを同時に使うと武器が僅かに光った気がしたと同時に羅刹に漆黒の炎が纏わりつく


「コレはアレをやるしか無いか?」

 敢えてこの状態の羅刹を鞘に戻し蓄積魔力を0にする勢いで注ぎ込む、鞘から今にも抜け出さんと柄の部分がガタガタと音を立てるが力技で抑え込む


 魔法使いゴブリンが魔法を放ち盾と剣持ちゴブリンと槍持ちゴブリンが特攻してくるのを冷静に見つめながら最初に使った技の派生?アレンジ?技を使う。


 鞘の中で荒れ狂う炎と呪いによる加速力を存分に発揮した超高速の抜刀

「刀術もどき二の太刀…」いや、何かが違う気がする。

「これだ、煉獄刀一の太刀『魔刀 煉獄』」


 抜刀時の炎の勢いに押され腕が千切れそうなスピードで羅刹を振り抜く、刀の軌道上に黒炎が走り視界を埋め尽くす。


「爆風と塵で見えなくなるのは予想外だったな…」

 塵の中から生き残りが出てくるのを警戒して構えているとだんだんと見えるようになってくる。


「嘘ぉ…」

 開けた視界の先には融解してガラス状になった通路だった。


 ガラス状になったとは言うがよく聞く透明なガラスではなく、『怨嗟の呪縛』時の羅刹と同じオーラを発している。


 遠くまでそのガラスの道は続き次の層への階段が見えた。


「コレは…そうそう使えないな、魔力蓄積のストックも使い切ったし本当に切り札専用にしよう…」


 そう思いながら羅刹を鞘に仕舞う。


「まぁ次の階層に行くか」


 こうして強大な力を持つ武器を手に入れた俺はドロップ品を集めてから次の階層へと向かうのであった。


 〜この時の一撃はダンジョンの再生をも超えてダンジョンを蝕み続け、後の世で『深淵アビス』と呼ばれたダンジョンの上層最難関エリア『呪怨の硝子道』と呼ばれるエリアを作ってしまった事を青年はまだ知らない…

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