第15話 敵地を抜く

「味方陣地に向けて出発!」ノーラインとワイドラインは南南東に向けて走り出した。

「全員車外を警戒、武装は一旦外し、いつでも再武装できるように準備」揺れる車内で武装したままだと何かあった時、武器で他の隊員を傷つける危険があるため、一旦武装を外させた。

 茜はコマンダーズキューポラに立ち、ヘッドフォンとタコフォンを装着して20mm機関砲を構えた。しばらく走行しているとC地点から大地を揺らす爆発音が聞こえてきた。茜は信号弾の意味をハムバッカー伯爵が正しく理解してくれたことに感謝した。

「レプの混乱に乗じて味方と合流するぞ」

「ルート士爵、作戦前のレプの陣形図を参考にして味方と合流する最短ルートを探せ」しばらくするとルート士爵からルートが書き込まれた地図を渡された。茜はワイドラインに向けて、我に続け、と光信号を発するよう命じた。

 気がつくと真っ暗だった空が明るくなりかけている。すると前方にレプの陣地が見えてきた。

「これからレプの陣地を抜ける。さあカーニバルの始まりだ、踊り狂うぞ」ノーラインとワイドラインはレプを7.92mm機関銃で銃撃し、建物や車輌類には20mm機関砲をぶっ放した。後方からの襲撃を受けたレプの反撃は散発的なものだったが、だんだん的確な攻撃に変わってきた。

「八時方向からRPG!」茜は叫んだ。ノーラインとワイドラインは共にRPGの攻撃を上手くかわした。

「十一時方向にRPGを持ったレプ!」コイツは7.92mmの機関銃掃射で片づけた。

 突然ノーラインにレプが飛び乗ってきた。茜はコマンダーズキューポラをルート士爵に任せ、自分は飛び乗ってきたレプの相手をした。前方の通信アンテナに飛びついてその反動を使ってレプを両足で突き落とした。その時には二体のレプがノーラインに飛び乗っていた。茜は揺れるノーラインの上で上手にバランスを取っている。ダマスカスブレードを左手に装備するや否や一匹目のレプの首を切り飛ばしその反動を使って二匹目のレプに頂肘をくらわせた。すると首を切られてしばらく直立していたレプと頂肘をくらったレプが同時にノーラインから転げ落ちた。

 ワイドラインの方を見ると四匹のレプが取り付いていてハメット準男爵が相手をしていた。茜は上部装甲にダマスカスブレードで穴を開けるとその穴から中の従士に

「ワイドラインに取り付いてるレプを散弾銃で撃て」と命じた。ためらっていた従士に向かって茜は、

「散弾銃の弾はワイドラインの装甲を突き破っても中にいる隊員には被害はない! 打て!」茜は再度命じた。従士は命令に従いワイドラインに向けて散弾銃を撃った。散弾を受けたレプは全部ワイドラインから転げ落ちた。ワイドラインの装甲には散弾銃による穴がいくつか開いていたが走行に問題はなさそうだった。

 気がつくとノーラインには四匹のレプが飛び乗っていた。茜は車体上部にあるアンテナの基部をダマスカスブレードで切断しアンテナをレプの方に勢いよく蹴り飛ばすと、相対速度の差で勢いを増したアンテナがレプを弾き落とした。20mm機関砲と7.92mm機関銃の弾はすでに尽きていて前方に立ちはだかるレプには体当たりで対処していた。

 ノーラインとワイドラインはレプの陣地をようやく抜けて、味方陣地に向け走り去っていった。装甲車のはるか後方には、装甲車に向かってなにごとか罵声を浴びせているレプの姿があった。

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