第12話 作戦開始

マーシャル隊を乗せた大型輸送機は敵の対空砲火のない空を目的地に向かって飛んでいる。この調子なら他の二隊も問題なく目的地に向けて飛んでいるだろう。

 そろそろ降下場所に着く。茜は部下に向かって訓示をたれた。

「諸君・・・・以上」緊張で何を言うか頭からすっぽり抜けてしまい、茜は耳まで真っ赤になってうつむいた。部下からは愛情溢れる失笑が漏れた。

中には、カワイイと言う声もあった。部下は全員20歳以上なので、茜が貴族でも妹のように感じていたのだろう。

「全員搭乗!」マーシャル隊は全員装甲偵察車に搭乗した。

 装甲偵察車は14mmの装甲を備え全体に細長く前方四輪、後方四輪で構成され3.5lエンジンで90km/hで走行する。武装はコマンダーズキューポラから操作する20mm機関砲一門と車内から操作する7.92mm機関銃を一門備え、その上部にはパイプ状のアンテナが車体を覆うような形で備え付けられている。一号車はコードネーム:ノーライン、二号車はコードネーム:ワイドライン。ノーラインには茜のほかルート士爵、従士6名。ワイドラインにはハメット準男爵、トムソン士爵、従士6名の構成で走行偵察車に搭乗している。

「降下地点に到着。降下開始! マーシャル隊健闘を祈る。」輸送機のパイロットから無線が入った。

「ここまでの輸送ありがとうございます。帰路もご無事で」茜が答えたと同時に装甲偵察車が車両用パラシュートを付けて一台ずつ輸送機から射出された。

「ノーライン、ワイドライン共に順調に降下中。」装甲偵察車の運転を担当している従士が報告した。

「タッチダウン後、パラシュートの処理、車体に損傷箇所がないか確認、通信状態の確認を行え。」ワイドラインにも聞こえるように茜は無線で指示した。

「タッチダウン十五秒前!」操縦担当の従士が報告した。

「全員衝撃に備えよ!」茜が隊員に注意を促した十五秒後、装甲偵察車二台が降下を完了した。全員装甲偵察車の外に出て各々作業を開始した。茜は地図と降下場所の地形とを照らし合わせて現在位置の確認を急いでいた。時間は真夜中だがヴァンパイアは夜でもよく目が見えるので、ライトをつける必要がなかった。

「どうやら降下目標に降りられた、ここまでは順調だな」茜の言葉にハメット準男爵もうなずいて同意の意を示した。

「マーシャル男爵、ECM を確認。ハムバッカー隊と通信できません」通信担当従士が告げた。

「危惧した通りになったな」とハメット準男爵に向かって言った。

「信号弾用の銃は4挺あるな? 青、緑、黄、赤の全色を一斉に打ち上げろ。これでハムバッカー隊も我々が通信が出来ないことを悟るだろう」そう言うと茜はノーラインの車体に上りコマンダーズキューポラから中に入った。

 信号弾の打ち上げが終わった後、二台の装甲偵察車は南西方向に全速で進んだ。

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