第11話 作戦前

茜が裏切り者探しに考えを巡らしているうちに、輸送機は中国行政区に到着した。飛行場には作戦で使う大型輸送機や装甲偵察車などがあった。茜は今回の作戦で使う装備のチェックと輸送機のへの積み込みをルート準男爵に任せ自分は今回の作戦の総指揮を行うハムバッカー伯爵に到着したことを告げに行った。

「マーシャル隊ただいま到着しました。 装備の点検と、輸送機への積み込み作業は進行中です」

「マーシャル男爵歓迎する。さすが仕事が早いな、特務機関所属は伊達ではないな」ハムバッカー伯爵は社交辞令を言っただけだが、やだ〜そんなに褒めなくても〜と茜は顔お赤らめた。

「ところで、中国行政区の行政官にご挨拶に行きたいのですが・・・・」茜は勅命の件で行政官に確認したいことがあったので、ハムバッカー伯爵に話を持ちかけた。

「マーシャル男爵、残念だが行政官は随分前に解任された。現在は王直属の侍従が行政を代行している」ハムバッカー伯爵は顔を曇らせながらそう告げた。

「王の侍従が? 中国行政区の行政官が解任されたら代わりの行政官を議会が選任して後任に当たるはずでは?」茜は疑問を口にした。

「・・・・」ハムバッカー伯爵は茜の疑問に答えることができず、ただ黙っただけだった。

「もしかしたら、議会にも何かしらの影響があったんでしょうか?」茜は疑問を続けて口にした。

「我々は騎士だから政のことはよく分からんが、議会も機能不全になっているらしい」

「議会が機能していない?」茜は考え込んだ。

 議会前のデモを除けば、ロンドンは混乱した様子もなく市民は平穏に暮らしていた。フランス行政区でも同じだった。また中国行政区では騎士団が作戦遂行のための準備が滞りもなく進んでいることを考えると、王配下の侍従でも行政官の代わりは務まるのだろう。

 ハムバッカー伯爵との会話で、雲をつかむような話だった裏切り者の件も輪郭がつかめてきたと茜は感じた。

「そうですか、では何もなければ出撃準備に専念しますので隊に戻ります」

「マーシャル男爵、健闘を祈る」

 茜は自分の隊に歩いて戻りながら、ハムバッカー伯爵とのやりとりを思い出しながら中国行政区の現状と疑問点を整理した。

 大型輸送機の後方ハッチに着くと、装甲偵察車の積み込みはすでに終わっており、あとは作戦開始を待つだけだった。茜は後方ハッチから大型輸送機に乗り込んだ。

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