第10話 戦地へ
騎士団本部の一角で行われている作戦会議に茜も参加していた。本来なら伯爵以上が参加する会議なのだが王から勅命お受けて独自の作戦目的のある茜も参加させてもらえた。
「よしまとまったな。作戦の内容をもう一度確認する。3隊の偵察隊は敵の物資集積所と思われる地点A、B、Cに夜間降下。地点Aにはピック男爵隊、地点Bにはマーシャル男爵隊、地点Cにはストリング男爵隊が降下する。次に偵察隊降下後、ハムバッカー伯爵隊が敵前面に夜襲を行う。偵察隊から物資集積所発見の連絡あり次第、キルトップ男爵隊が集積所に降下し集積所を爆破する。質問がなければ以上」こんな単純な作戦で成功するのかと茜は疑問に思った。しかも茜は王の勅命を果たさなければならない。前途に不安が残った。
特務機関のオフィスは作戦を控え慌しかった。茜は装備品のチェックリストに目を通していた。
「信号弾もリストに追加してくれ」茜は部下に命令した。
「何に使うんですか?あと色はどうしますか?」茜は心の奥で、黙って聞いとけよと言った。
「何に使うかは戦場次第だ。色は赤、黄、緑、青を準備しろ」茜は使わなきゃそれに越したことはないと思ったが、そう簡単に行くはずもないと思っていた。
「あと私のホルンもパッケージしといてくれ」茜の出身はボストンなので吹奏楽は身近な存在だった。また、両親がジュリアード音楽院卒のプロの音楽家なので家には楽器があった。両親は茜にいくつかの楽器を勧めてプレイさせてみたが、茜が最終的に選んだのはホルンだった。金管楽器のほとんどは左手で楽器を支え、右手で音階を出す。ホルンという楽器は右手をベルの中に入れて楽器を支え、左手でピストンを操作して音階を出す。茜が楽器の構造からホルンに行き着くのは当然だった。
茜は作戦地域のある中国行政区までは16名の部下と共に輸送機で移動していた。茜には裏切り者のプロファイリングを行う時間がたっぷりある。
考えれば考えるほど矛盾だらけだ。裏切ったとしてどんなメリットがあるのか? 何も思いつかない。
茜は裏切り者のプロファイルをやめ、レプの側のメリットについて考えてみた。レプがこちら側の地球に来る目的は、餌となる人間の確保だ。鉱物資源を採掘して持ち去った形跡は報告されていない。技術? いや技術者を拉致した形跡も報告されていない。レプの科学力も我々の科学力とほぼ同等と聞いている。レプが欲しがる技術を我々が持っているとは考えられない。 騎士団が遺棄した装備をレプはコピーできるのだから。
地域的に考えてみようか。行政区を治める行政官は議会が決めた行政官を王が承認する形をとっている。また行政官の任期は二年なので行政官による行政区への関わりも深くはないだろう。しかし、中国行政区の行政官が裏切り者だったとして、そのメリットは何だろうか? 中国行政区がレプに蹂躙されれば、行政官は責任を取らされる何人かの一人になるだけだ。当然、行政官を選んだ議会にも類は及ぶ。当然誰にもメリットはない。
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