第9話 ロンドン

茜は自分のオフィスに帰る道すがら、自分の胸の未来を考える事はせず、裏切り者に該当しそうな者についてプロファイリングしてみた。そもそもレプに味方して利益を得る者なんているのか? 利益の内容は何だろう?

 通常利益は金と女と相場が決まってる。レプで流通している紙幣をもらっても仕方がないだろうから、もらうとしたら金塊? 女の線はおぞましいので考えるのおやめた。レプがこの戦いに勝利して利益を得る者なんているはずも無い。事前に裏切り者の当たりをつけるのは骨の折れる作業になると思ったので、茜は考えるのを一旦やめカフェに入った。

 カフェに入ると店内の客と従業員の視線が茜に集中した。

「珈琲ください。ミルクをたっぷり入れてね」

 みんなの視線を無視していたが、ヒソヒソ話が始まった。

「騎士様よカッコいい」乙女にかっこいいは無いだろと茜は思った。

「騎士様カワイイな」もう一声、美人って言えないのかなぁと茜は思った。

「おい!あの騎士様あの若さで貴族だぞすごいなぁ」もっと言って、もっと言ってと茜は思った。

「騎士になる儀式は1/5の成功率なんだろ、人間のエリートだよなぁ」えっ!そんなの聞いてない。100%の成功率だと思っていた茜は震えてきた。

 茜がそっと後ろを振り向くともう誰も茜に注目しておらず、皆一様に自分の飲み物を楽しんでいた。茜は自分が無意識に特殊能力を使い店内の人間の考えを読んでいたことに気がついた。

 正面に向き直ると茜が注文した珈琲ができあがってきた。珈琲を受け取ってお金を払おうと思ったら、店の従業員が騎士様割引で半額でいいですよと言ってきた。

「ラッキー」と心の中で叫んだ茜は定価の半額を払い店の外に出た。しかしさっきの震えがまだ止まらなかった。自分が1/5側にいて本当に良かったと心の底から思った。

 しばらく歩いていると議会の建物の近くを通った。その頃には震えが止まっていた。議会前には人だかりがあったので、近くで人通りを整理していた警官に何事かと聞いてみた。

「騎士様何か御用ですか?」

「アレ、一体何が起こってんの?」

「騎士様、アレは議員に辞職を求めるデモですよ」

「議員の誰かが何かやらかしたの?」

「一人の議員に対するものではなく全議員に対して辞職を求めてるんですよ」

「へー、そうなんだ」と言って議会前を後にした。議員全員に辞職求めるなんて、何があったのか気になったが特務機関のオフィスに戻る頃にはみんな忘れていた。

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