第4話 オリエンテーショ

 茜はカプセルを出た後、着替えを終え、指示されたオリエンテーション会場に向かった。

 オリエンテーション会場に着くと会場の入り口でペンとノートを渡された。会場は階段状になっていて各段には机と椅子が備え付けられ、一番下の段には教壇があり近くに教官と思しき人が立っていた。またその奥には巨大なスクリーンが壁と一体になっていた。茜が会場に入ったときには150人ぐらい座れそうな席は6割ぐらいうまっている。そこで違和感を感じた。会場には元の地球で拉致された時、事件現場に立ち会っていたFBIのSWATのメンバーが数人いた。だが、茜とパートナーを組んでいたFBIの特別捜査官の姿が見えなかった。違和感を感じながらも茜が着席するとすぐにオリエンテーションが始まった。

「諸君、我らの地球にようこそ。諸君は我らが住む宇宙と異なる並行宇宙にある地球から来たものばかりだ」茜は小さい声で、自分の意思で来たんじゃない! 拉致されてきたんだ。と毒づいた。教官はさらに話を続けた。

「諸君にこの地球に来てもらったのはこれを殺すためだ!」教官はスクリーンを指差した。そこには人型の体に頭はワニのような生物が戦闘服のような物を着て映っていた。

「これは爬虫類から進化した人類だ。我々はこの生物をレプタイルHと呼んでいる。略してレプだ。」

 茜のレプを見た感想は、あんなおっきい頭じゃロックフェスでヘッド・バッキングしてたら首が疲れて大変ね〜、あとあの大きな口でキスとかするのかしら、想像するだけで笑えてきちゃう。でもあの体でどんなHするのかしら、ちょっと興味があるわ。感想がちょっとズレているが本人は無自覚だった。

「レプはスピード、パワーの面で人間より優れているので一対一の戦いでは到底敵わない」

「そしてこのレプの食料は人間だ! 大勢の仲間がこいつらの口の中に消え、排泄されていった。 またレイプされたと言う事案も数件報告されている」

 今の教官の言葉を聞いて、フロア内にいる全員の顔色が変わった。敵意の表情を浮かべる者、恐怖の表情を浮かべる者がほとんどの中、排泄という言葉に反応して、きちゃな〜いと言う表情を浮かべる者約一名。教官は話を続けた。

「そして、レプはある並行宇宙にある地球の知的生命体だ。しかも我々に引けを取らない知能がある。多分その地球では恐竜は絶滅しなかったんだと思われる」フロア内の全員が唖然とした表情を浮かべた。

 知的生命体なら飼えるじゃん。メイドとしてコキ使ってやろうと思う者約一名。

「レプの特徴は強靭な脚を使った跳躍と移動スピード、骨をも砕く強靭な顎、脚と手にある鋭い爪で肉を切り裂く」爪で髪切って貰えば美容院行かなくて済むかも。美容院の予約って大変なのよねぇと思う者約一名。

「安心しろ。 諸君はレプに対抗するためヴァンパイアの身体を手に入れた。この体の使い方を覚えれば肉弾戦でレプに負けはしない」

「我々ヴァンパイアの体は消化器系の内臓を無くして軽くなった身体を、強化された筋肉で動かすのでレプを超えるスピードが出せる。また、強化筋肉を支える全身の骨格を強化してあるので、骨格が耐えうる範囲内であれば力比べで負ける事はないし、重いものも持ち上げられる。例えば、車一台なら持ち上げることも可能であるし、動いている車を止めることもできる」朝遅刻しそうになっても、ダッシュすれば間に合うってことねと思うもの約一名

「そして我々の生命を維持するために必要なのが、この血液パックだ。一日に二パックを目安に摂取する必要がある。摂取方法は口にある二本の牙で中の液体を啜れば良い」ストローを使わないって事はエコに配慮してるのねと思うもの約一名。

「摂取しなかった場合、通常では七日間生命を維持できる。また、最後の摂取後二日でヴァンパイアの能力を失う。なお緊急の場合、他の動物の血液を摂取する事でヴァンパイアの能力と生命は維持される。」うんーっと、何も思いつかなかったもの約一名。

「ヴァンパイアの体の説明は以上だ。諸君はこれから戦場に出るための訓練を受けてもらう。訓練後には立派なヴァンパイア騎士になっている事だろう」

「あの〜 」質問者は茜であった。

「核兵器を使えば、あっという間に勝っちゃうんじゃないですか?」一瞬会場は静まった。横に座ってた男が茜を肘で突いてこう言った。

「ここの地球は100年前にイングランドって国が全大陸を統一してもう戦争は無くなったんだ。だから国家間の戦争で使用される大量破壊兵器のようなものは不要だから発明されなかった。それにレプとの戦争はここの地球で行われているから大量破壊兵器を使えば人間も巻き添えを食って死んじゃうんだ」

「ふ〜ん。」と隣の男に言った後、

「なんでもないです。気にしないでください」と教官に言って誤魔化した。

「では質問がなければ、手に持っている書類に書いてある訓練所に移動してくれ。期待しているぞ」

 茜は書類に書かれている自分の訓練所に違和感を覚えたので、隣に座っている男に書類を差し出して書かれている内容を教えてもらった。男は書類を見て、

「あぁ、君は貴族になるんだね。貴族養成課程に行けって書いてある」そう言うと男は書類を茜に返した。茜はこの地球における貴族とは何か気になったので、貴族とは何か聞いてみた。

 男の話によれば、まず兵隊のことを騎士と呼び軍隊のことを騎士団と呼ぶこと、その中で貴族とは茜のいたアメリカの軍隊で言えば将校のことを指した。この地球での騎士団の階級は、将軍が大公と公爵、佐官が侯爵と伯爵、尉官が子爵と男爵、下士官が準男爵と士爵、その下の階級は全て従士と呼ばれている。そして貴族は騎士団の階級なので世襲制ではない。また、騎士団以外の者はヴァンパイアにならず人間のまま生活を送っている。

 これらの階級の外に王と議会がある王はこの地球の最高権力者であり騎士団の最高司令官も兼ねている。議会は行政、司法、立法を担当し、王の暴走を抑える役割を担っている。また貴族に列せられるといくらかの荘園がもらえるらしい。

「ほんと〜、土地がもらえるの? フロリダがいいかなぁ、ハリウッドもいいなぁ」茜はアメリカの高級住宅地を思い浮かべたが、荘園の意味を全く分かっていなかった。

「それでは私はこれで失礼します。男爵閣下、御壮健で」

「またね〜」親切な男と別れ、茜は次の教育を受けるために部屋を出た。

 茜はまた分からないことがあってはまずいので、自分の書類を隅々まで確認していたとき備考欄に超能力者と書かれていた。衝撃を受けた茜は、

「こっちの地球では誰にも言ってないのに、なんで知ってるの?」

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