第5話 配属先を探せ
茜は貴族養成課程で主に戦術学と築城学を学んでいる。銃器の取扱いの説明と軽い射撃訓練はあったが本格的な射撃訓練なかった。また体術、体力訓練も本格的でハードな訓練はなかった。そしてレプの言語も学んでいる。私のいた地球では古来から敵国の言語の習得は必須だったことを思えば当然のことと思えた。
貴族官舎に帰るとなぜ自分が貴族になれたのか考えてみた。茜が考えた結果、理由は2つだろう。
一つ目は茜がFBI出身であること。こちらの地球に来た時に行われたカウセリングでFBIがどんな組織で受けてきた教育内容については話していた。
二つ目は茜に超能力があること。通常では17歳の少女がFBIになれるわけがない。そもそもFBIは23歳以上でなけれな受験資格すらない。茜は幼少時よりアメリカの国家プロジェクトで特殊能力を身につけた。この特殊能力を活かすためにプロジェクトからFBIに派遣されたかたちだ。
問題は、なぜ茜が超能力者だということをこちらの地球の騎士団が知っていたか。当然茜は自分が超能力者であることはこちらの地球で誰にも話してない。そもそも元いた地球では茜の超能力は極秘扱いだから知っている者は少ない。
オリエンテーションで見かけたSWATは茜が超能力者であることは知りようがないので、彼らの口から漏れたはずはない。
茜は色々理由を考え、一つの可能性にたどり着いた。元いた地球で茜が超能力者であることを知っている誰かが、こちらの地球に来るように計画した者がいる。しかも茜が超能力者であることを事前にこちら側の地球に伝えていた。そもそもワシントンDC勤務の茜がラスベガスで起きた集団失踪事件を担当すること自体がおかしい。
では茜をこちらの地球に送り込んだのは誰か? 理由はなぜか? 謎は深まっていく。
今は情報が少なく、あれこれ考えても仕方がないので、茜は寝ることにした。
二十週間の貴族養成課程を終え、今日は配属先が伝えられる日だ。教室に集まった者に順番に配属先が伝えられて行く。
「スカーレット・茜・緋紅(フェイホン)・マーシャル、王直属特務機関」茜は特務機関が何をする部署かわからなかった。
「まさか、ハンバーガーを作って、売るってことはないよねえ」本来ならこの言葉を周りの者は冗談と受け取るとこだろうが皆茜が何を言っているかわからなかった。当の本人は冗談を言っているつもりはなかった。
全員の配属先が伝え終わったので、皆は配属先に向かっていった。茜も配属先に向かった。建物内で特務機関の部屋を探したが見つからず、廊下ですれ違った何人かの騎士に場所を聞いてみたが皆一様に場所を知らなかった。そのうち先ほど私たちに配属先を伝えていた騎士を見つけたので、特務機関のある場所を尋ねてみた。
「特務機関は王宮内にある。この建物の中には無い」それを早く教えろよ!教えてくれなきゃわかんねーだろ。と茜は毒づいた。
「王宮の場所ってどこですか? 」
「イングランドのロンドンと言う街にある。ちなみにここはフランス行政区のパリと言う街だ」え!ここパリだったの?お買い物しなくっゃ。と茜は思ったが、目下の目的は特務機関へ行くことだ。
「私の迎えが来る予定はないんですか」
「私は何も聞いてない。卿には何か連絡が来ていないのか」卿と言う単語を聞いて茜は自分が貴族になったんだと実感した。
「私には何の連絡もありません」
「そうか、う〜ん」と言ってその騎士は向こうのほうへ歩いていった。
「ちょちょ、話途中でしょ!」茜は呼び止めたが、その騎士は茜を無視して歩き続けた。
茜はことの重大さに気づき始めていた。目的地は海峡の向こう側、迎えもなし、これは1人で行けってことだろう。多分期日も設けられていそうだ。今あれこれ考えるのは面倒なので、とりあえず寝るために官舎に戻った。
官舎に戻ってみると荷物がなくなっている。また一人の女性が私のベッドのメーキングをしている最中だった。
「あの〜、私の荷物は?」
女性は仕事の手を止め、茜の方を向いた。
「マーシャル男爵閣下、荷物は指示の通り配属先へ送っておきました。」
「指示って、誰の?」
「え!閣下ご自身です。命令書をお書きになった覚えはないんですか?」そんなもの書いた覚えはない。
「化粧ポーチとお財布は?」
「荷物と一緒に送りましたよ」
「うわー、今はナチュラルメイクしかしてない。これで街に出るのはキツイしかもここパリでしょ」そして茜にもどうなっているのか分かってきた。要は自分の力だけで王宮に行けってことだ。茜は配属先を伝えた騎士を探して駆け出した・・・・
十分なお金を手にした茜はセレクトショップに行って、チェック柄のボックスプリーツのミニスカート、白のカットソー、水色のセーターとショートブーツ、ポシェットを買い、メイクを決めて駅に向かった。駅ではウォータールー行きのチケットを買い電車に乗り込んだ。茜のロンドン行きを妨害する動きが必ずあるはずだが茜は気にしなかった・・・・
ロンドンについた茜は王宮に向かった。王宮に着くと茜は旅行者を装って行動した。まず旅行ガイドが売っている王宮の敷地内を説明しているパンフレットを購入して、それを持って近くのカフェに入った。カフェではパンフレットを見て特務機関のある場所お探した。まず王宮自体は王族の生活の場なのでここは省いた。王宮の敷地の中で軍人が出入りして不思議に思われない場所に当たりをつけて考えてみた。舞踏会場、音楽堂、美術館、図書館などがパンフレットに記載されているが、騎士が入っても問題なさそうな施設は見当たらなかった。
茜は自分が見当違いをしているのではないかと思い始めた。突然何か閃いた。
「しまった! 」と言って、茜はカフェを出て駆け出した・・・・
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