第2話 プロローグ2

人類は平行宇宙の存在を立証するため、有名大学数校からなる研究チームを立ち上げ、五年後にゲートと呼ばれる装置を完成させた。この装置はゴビ砂漠に建てられた研究所内に設置され、こちら側の宇宙と平行宇宙をゲートを通して繋げることができる装置だった。

 ゲートを開いて人類は調査用ドローンを飛ばして呼吸可能な大気を有することを確認後、ゲートの先に広がる世界が平行宇宙の地球である事を証明するための作業が必要だった。

 ゲートの先にある平行宇宙側から見える星の位置が、こちら側の地球の星の位置と一致する事を確認することを確認するため、数名からなる調査隊をゲートの先に送り出した。三日後に戻ってきた一人の隊員によって、ゲートの先にある世界の星の位置とこちら側の地球の星の位置が一致したことが報告され、他の隊員は地質調査などをおこなうため二日後に戻るとのことだった。

 これにより平行宇宙の存在が証明され、ゲートの研究員と作業員から歓喜の声が上がった。しかし、調査隊本体は二日経っても誰一人も戻らなかった。

 調査隊が戻ると言っていた日からさらに二日後、平行宇宙の地球側からゲートを通って侵入してきたモノがいた。それは二本足で立ち、二本の手を持つ人型をした爬虫類のようなバケモノたちだった。このバケモノ達は手に持った銃を使って研究所内の研究者や技術者を襲い始め、殺略がひと段落すると死体を食べ始めた。

 異変を察知した研究所の警備員達が殺略現場に到着したときに見たものは、あたり一面に広がった血と散らばった肉片だった。その光景を見た警備員達は怒りに燃え銃をバケモノに向け発砲した。

 警備員とバケモノ達の間で銃撃戦が始まった。だが、研究所内はスピードとパワーに勝るバケモノどもの一方的な殺戮の場となり、警備員は皆バケモノの餌となった。

 研究所がバケモノに制圧されたあと、平行宇宙の側の地球からゲートを通って何千匹もの化け物が現れ研究所の外に出てきた。バケモノどもは人類を見つけると殺戮と食欲を満たしながら研究所の南東方面あたる中国行政区に向かった。バケモノから逃げおおせる脚力がなく、パワーに対抗できる腕力をもたない人類は、バケモノから見ると苦労なく捕獲できる餌でしかなかった。

 バケモノの中国行政区への進出を阻止するため、人類は小火器で武装した警察部隊を3,000人派遣した。バケモノと警察部隊の戦いは、銃撃戦では警察部隊の健闘はあったものの、強靭な脚力で警察部隊に肉薄したバケモノは得意の接近戦で警察部隊に大損害を与えた。人類側は彼らにエサを与えるだけの結果となってしまった。

 3,000人規模の警察部隊を送ってもバケモノの中国地方への侵入を阻止できなかった人類は、バケモノによる被害を止める為に、二つのプロジェクトを立ち上げた。一つはバケモノに対抗できる兵器の開発。二つ目はバケモノのスピードとパワーに対抗するための人体改造。

 兵器の開発は順調に進み、バケモノに効果のある兵器がいくつもできたが、接近戦になるとスピードとパワーに押されバケモノに対抗することはできず、二つ目のプロジェクトの完成に望みを託すしかなかった。

 人体改造のプロジェクトはプロジェクトの開始から2年余りで完成した。人体改造はスピードを得るために人体から消化器官などの臓器を除いて体を軽くし、またパワーを得るために骨格と筋肉の強化を行なった。この人体改造は外科手術を伴わず、薬の投与によって行われている。

 薬の投与を受けた人間の体は数日で変化を遂げ、変化後の状態は遺伝子に書き込まれた。人間が改造体になる方法は二つある。一つ目は薬の投与を受ける方法。二つ目は改造体になった人間に噛まれ、そこから体液を注ぎ込まれる方法。

 そして、この改造された体を維持していくためには血の摂取だけで十分だであった。

 人類はこの改造体をヴァンパイアと呼んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る