平行宇宙に行った超能力少女はヴァンパイアになって爬虫人類を相手に無双中!

道願

第1話 プロローグ1

ヴァンパイアの騎士団は爬虫人類に戦いを挑むためホバーバイクの騎士を先頭に敵との距離を縮めていた。すると敵に動きがあった。敵のホバーバイク兵五十騎が横一列に整列している。

「一騎打ち形式のホバーバイク戦を挑んでくるようですな。伯爵、いかがいたしますか?」かたわらの参謀が聞いた。

「おもしろい、受けてたとう。貴族に参加を呼びかけろ」ハムバッカー隊の全貴族に話が伝わった。こちらが応じる構えを見せたところ敵のホバーバイク兵が十騎加わった。ホバーバイク戦に参加したがる兵が多くいることがわかる。その様子を見てハムバッカー伯爵は、

「相手の人数に合わせろ!」ハムバッカー伯爵は、まわりの騎士に伝え、

「マーシャル男爵を呼べ!」と付け加えた。しばらくすると十代後半に差しかかったぐらいの少女が現れた。その少女は顔、戦闘服にうっすら返り血を浴びていて既に激闘をくぐり抜けてきたことを思わせた。

「マーシャル男爵参りました」と告げた。

「卿はホバーバイクに乗れるな、ホバーバイク戦に参加しろ」少女が敵陣を見ると、ホバーバイクにまたがった爬虫人類が横一列となって整列していた。それが何を意味するか少女にも理解できた。ハムバッカー伯爵はなおも言った。

「安心しろ、このヴァンパイアの能力を持ってすれば爬虫人類がなどものの数ではない」少女は承諾し、自分の乗るホバーバイクを探しに陣地内に戻った。

 少女がホバーバイクに乗って戻ってくるとあちらこちらで、

「俺に参加させろ」

「いや俺に参加させろ」

「卿は昨日負傷したから俺が代わってやる」などとホバーバイク戦のメンバーから外された貴族がわめいていた。最終的に両軍とも七十五名ずつのホバーバイク戦になりそうだった。

 少女はホバーバイクを戦列の一角にとめると左腕にダマスカスブレードを装着した。ここの地球ではダマスカス鋼の製法がロストテクノロジーになっていなかったようだ。

 戦列の左に移動したハムバッカー伯爵は、貴族達が差し出したダマスカスブレードに自分のダマスカスブレードを当てながら右に移動していった。戦列に並ぶ貴族達は、ある者はハムバッカー伯爵の名を呼び、またある者は雄叫びを発していた。戦列の中央まで来たハムバッカー伯爵は貴族達に訓示を垂れた。

「この一戦で爬虫人類どもを蹴散らし、奴らをこの地から叩き出してやろうではないか!」一斉に貴族たちの雄叫びが上がる。

「ヴァンパイアである卿たちが爬虫人類に遅れをとることはないな?」また雄叫びが上がる。

「このホバーバイク戦での戦いに参加した騎士は、すなわち勇者と同義語となるだろう。美女が群れをなして諸君の帰りを待っているぞ」貴族から笑いがもれた。

 少女は他人の心が読める特殊能力を持っていた。少女はその能力を使い、ホバーバイク戦に参加する貴族たちの心を読んでみたところ驚くことに彼らは一様に自分が手柄を上げることしか考えておらず、不安、恐怖、緊張、などのネガティブな考えを持つ者などいなかった。これは皆ヴァンパイアの能力に自信がある表れとしか思えなかった。

 少女はと言うと、彼女の心にもネガティブな考えは一切なく、突撃の命令を待ちわびていた。そして全騎士が待ちわびた瞬間がやってきた。

「突撃!」ハムバッカー伯爵の号令の下、貴族たちは一斉にホバーバイクを発進させた。爬虫人類側も突撃を始め、味方との距離が縮まってきた。距離が縮まるにつれ互いの戦う相手を見定める。少女は自分の相手を見定めるとすれ違う前にホバーバイクを相手の左側に向けた。両部隊の距離が

ゼロになるとすれ違いざまに斬り合った。貴族はダマスカスブレードを使い、爬虫人類は鋭く尖った手の爪を使った。少女は相手の左側に回ったので相手の爪は少女に届かず、自分のダマスカスブレードは簡単に爬虫人類の頭部を切り飛ばした。

 少女はすぐさま後ろを振り返り、敵味方の損失状況を確認した。

 第一撃は味方の損失二名、敵の損失十六匹、圧倒的に貴族側が有利だった。

 少女の心に「これなら勝てる!」と言う思いが浮かんだ。

「転回!第二撃を行う」参謀の命令が出ると、貴族は皆ホバーバイクを百八十度回してすぐに突撃に移った。

 少女は見定めた相手とすれ違いざまに、ホバーバイクに乗ったまま体を反時計回りに素早く回転して、バックハンドで爬虫人類に致命傷を負わせた。右隣の騎士から「お見事です」と声をかけられた。少女は今度も後ろを振り返り、敵味方の損失状況を確認した。

 第二撃では味方の損失ゼロ、敵の損失多数、もはや敵のホバーバイク隊は壊滅したも同然だった。

「転回!このまま全軍敵陣地に襲撃をかける。突撃!」号令と共に騎士団員全員が敵陣地に向かって突撃を開始した。装甲車はホバーバイク隊の前方に砲撃を加え、ホバーバイク隊の襲撃を助けた。

 敵陣に達した少女はホバーバイクに乗りながら敵を切りつけていった。そこには逃げ惑う敵の姿が見え、爬虫人類はもはや組織的な戦いができない状態になっていた。逃げる敵を逃さないように少女は先回りして敵の行動を制限してから切り掛かった。

 気がつくとまわりは味方でいっぱいになっている。地面に目を向けると爬虫人類の死体が散乱していた。

「掃討戦に移行しろ」また参謀の命令が聞こえてきた。この命令で騎士団が勝利したことを確信した。

 少女はあたりを見回し、安全を確認してからホバーバイクを降り、腰のポーチから血液パックをだして血を啜りながら空を見上げた。

「私をこっちの地球に売り渡したやつは誰なんだろ?」

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