第3話 天才少年の誕生
さて、話は少し変わり。
この国の四大華族である各家には、都の四方を守護するという役割があった。
――東を
――南を
――北を
そして西を守護するのが、我が西園寺家、というわけだ。
まあ守護する、とは言っても。
近代化が進み、
都の四方に置かれ、都を守るとされている守護石の守護管理が主たる務めではあるが、何から守っているのやらという話ではある。
もしかしたら守護石による守護結界のおかげで
それでも、四大華族の持つ異能の力は、他の家と比べても強大なものであり、特別なものとされていた。
そしてその中でも――、四神と呼ばれる、守護獣の召喚を果たしたものは。
また別格とみなされていたのだ。
四大華族の誰もが召喚を果たせるわけではない。
また、召喚に関して特別なルールがあるわけでもない。
ただ、守護獣のお眼鏡にかなったもののみに現れる。
それ故に、一族の中でも守護獣を召喚できたものは特別視される。
そうして、それをたった齢9つで果たしたものなど、いわずもがな――である。
本来は、四神召喚の儀的なものがあるらしいのだが、俺の場合は。
ある日突然、朝起きたら目の前に白虎がいたのだ。
『我は白虎。西を守護する四神として、お主をあるじとして共に付き従わん――』たらなんたら。
ねえ。
よく考えてみて?
朝起きて起き抜けに白銀の大虎が枕元にいたらびっくりするからね?
本当に!
今思い出しても、あの時は心臓が飛び出るかと思うほど驚いたな……。
まあ、そんなわけで、無意識に無自覚にいつの間にやら。
白虎召喚を果たしていたらしい俺ですが。
「――白虎の召喚者として、この家をよきほうへと導くのが僕の使命だと思ったのです。だから父上。どうか僕に、妹たちを教え導くことをお許しください」
背後に白虎を侍らせ、ぴしりと姿勢を正して父に頭を下げる姿は、おそらく後継者としてふさわしいものに見えたであろう――。
というか、そうであってほしい。
そのために白虎にも事前に根回しして演出を頼んだのだから。
父を説得する為に、いかにも重々しく俺の背後に立っててくれない? って。
「……あいわかった。白虎を呼び出せるほどの能力を持つお前が、家のことを思ってそこまで頭を下げるのであれば、父として受け入れないわけにはいくまい。妹らの教育については、今後お前に一任しよう」
「本当ですか!」
「もちろんだ。だが、もし困ったことや悩むことがあれば、いつでもこの父に相談しに来るが良い」
「はい! ありがとうございます!」
俺の頼みを聞き入れてくれた父に深々と礼をし、白虎と共に書斎を後にした。
はあ、よかった――。
まずはひとまず、最初の問題をクリアできた。
これで継母が菊華に余計なことを吹き込んでも、それが正しいことではないと
「ありがとうな白虎。僕の頼みを聞いてくれて」
『そんなことは、お安い御用だ』
ぽんっ! と。
そう言うと、それまで大虎の大きさを保っていた白虎が、突然子猫の大きさに体を変化させ、俺の肩に乗ってくる。
『
ちなみに、この白虎との会話は、どうやら俺以外の人間には聞こえないらしい。
大虎のサイズの時は威厳のある喋り方をするのだが――、サイズ補正なのだろうか、子猫サイズになると途端に何かのマスコットキャラか? というくらい安易な猫キャラに成り果てる。
まあ、かわいいっちゃかわいいからいいんだけど……。
ちなみに、俺の知る限り、原作の西園寺蓮には白虎を召喚したという設定はなかった。
そもそも原作の西園寺蓮は、異能に関しても特筆されないほどのモブ具合だったからな……。
これが転生チートってやつなのかな?
誰かに詳しく説明されたわけでもないから、ただの憶測でしかないけれど。
結果、権威主義の父の画策もあり『西園寺家の跡取りは齢9つにして白虎を召喚した天才少年だ』という噂がたちまちに広まることとなる。
そもそも、普通は10歳前後で異能を顕現させたあと、それから四神召喚にトライすると言うのが通常の流れらしいのだが。
その流れをぶった斬って、突然守護獣を召喚させた時点で、イレギュラー! はい天才! というわけだ。
そして、守護獣の加護を受けた召喚者は例外なく、強大な異能の力を得るのだと言われている。
らしいよ?
うん。
――難しい話はさておき。
とりあえずこれで、菊華の妹教育を大々的にできるってことで!
チートも有難いけど、俺の目的は破滅回避だから!
悪役令嬢になる妹の暴走を止めろ! だから!
――しかし、この時の俺はまだ知らなかったのである。
天才少年、と言われるようになったことで。
この後、面白いくらい事がとんとん拍子に進むようになるのだと言うことを――。
――――――
ちなみに、白虎(
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