第14話 め、女神!
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ミラは、サイラス大公 クライアと公子ダリウムと対峙していた。
「ここはあきらめて、反乱を起こすのは諦めて頂きましょうか。」
クライアはミラをじっと眺め、次に視線を面白そうに微笑むダリウムの方へ遣った。
「しかしな。ミラ殿。事をここまで進めておいて、急な路線変更が叶うとは思えん。何か代案があるのかね?」
ミラのことは、ダリウムから説明されている。クライアもダリウムと同じ能力を持つ者。ミラに会うなり、その存在をすんなりと受け入れた。
ミラはこれまでの経緯を語り、これに乗じてエルネアとスルーラットを解体して新国家を樹立するべきだと主張した。
「あなた方が、悪役を演じて領民を追い詰めてきたことは存じておりますよ? けれども大公様。つい十数年前までは他でもないあなた自身が領民に慕われていたではありませんか。若い世代は大公様を良く思ってないかもしれませんが、残念ながらその上の世代は当時の善政ぶりを忘れてはいませんよ? 兵にしたってそうです。サイラスの兵は不当に厳しい環境におかれ、公子ダリウム指揮の下、命を削って訓練を課せられている、と。これは外部の評判ですが、意外にも兵の脱落者は近隣諸国に比べて低い。あなた方は悪に徹しきらなかったという事です。」
ミラが話術を駆使してクライアをねじ伏せようとした。
「それじゃ何か? 我々は苦労して慣れない悪役を演じていたのは失敗だったとでも? しかし、エルネアとスルーラットはこちらの悪評を信じているようだが。」
それを聞いたミラは辛辣に返した。
「あれはバカだからですよ! エルネアもスルーラットも自分自身の足元しか目に入ってない。繰り返しますが、あなた方のヒールっぷりは若年層にしか影響を与えてない。その若年層は革命を起こすには若すぎます。上の世代はまたあなた方が元の善良なる領主に戻ってくれる期待を捨ててない。つまり市民革命など時期尚早という事です!」
こういう役目はエミレンの方が得意なんだが。と、意識の隅で思いながらミラは説得を続けた。
「だがなぁ。ミラ殿。共和政治こそ理想の政治形態だと思うのだよ。支配者階級は降板だ。その実現のためにはこのタイミングを逃してはならないと思う。」
ミラは珍しく少し苛ついてきた。思わず視線をダリウムの方に遣ると気難しい顔をしながらも目が面白がっていた。
「公子! 是非あなたの考えをお聞かせ下さい。今の状況で優先すべきはエルネアとスルーラットの排除ですよ? それが分らぬ公子ではありませんでしょう? もし、この方向で話が決まるようであれば、私も戦いに参じましょう。」
クライアがごねる様なら奥の手がある。先日エミレンはミラに告げた。その内容を聞いたミラは実に嫌そうにしたが・・・
ダリウムはミラの申し出に少し驚きながら、口を開いた。
「父上。俺はミラ殿の意見に賛成だ。これまでの努力が無駄という訳ではない。領民を虐げて来た反面、エルネアに対抗できる経済力と、どこにも負けない兵力を得た。エルネアやスルーラットに孤立無援状態と認識されている今は、千載一遇の機会でもある。それに、市民革命など、どれだけ犠牲が出るか分からんぞ?父上。それは嫌だろう?」
クライアは暫くダリウムを見つめていたが、溜息をついて言った。
「ミラ殿。すまないが息子と話をさせてくれないか? その後、食事にお付き合い願いたい。」
「喜んで。ではお風呂を頂いても良いですか? ここまで急いで来たもので埃っぽくって。」
ミラは二人に見送られながら部屋を退出し、案内されながら湯殿に向かった。
(さて、最後の仕上げだ・・ 気は進まないが・・)
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食事の席にミラが現れた時、クライアとダリウムは思わず席を立ちあがった。
「あ、あなたは! その赤い髪・・ まさか!」
クライアの驚愕を伴ったセリフの通り、ミラは髪の染料を洗い落とし、鮮やかな橙白色の髪を流し、用意された(別に要求したわけではないのだが)ドレスを纏って現れた。
「ご察しの通り、私のおば・・ ご先祖様は、ここサイラス公国には縁の深い方ですわ。」
「そ、そうであったか! 驚きのあまり言葉も出んわ! なあ、ダリウムよ。」
見るとダリウムは文字通り言葉が出ない様だった。
ミラの大叔母、つまりゼノの母親の妹は、フォースタリア建国の戦いの最中、サイラスとアイネスを助けたことがあった。僅かな関りだったが両家にとって起死回生の場面だったことで伝説の英雄扱いされている。輝く橙色の髪を持つ姫騎士として。赤い髪は珍しい。それもこれだけの輝きを持つのであれば誰でも彼の姫騎士を想い起すだろう。
ミラは当然その伝説を知っており(本人から聴いたことだ)、その効果を生かすことにためらいは、あったが、この際、利用することにした。エミレンの策でもあったし。
「私に合う鎧を用意して下さるかしら? その姿で参戦させていただきますわ。」
ドレスを纏うと自然に女言葉になるミラの仕様である。それに当てられ、クライアは口走ってしまう。
「め、女神!」
さすがに、ダリウムはぎょっとして気を取り戻し、クライアに向かって咳ばらいをした。ハッとダリウムに続いて気を取り戻したクライアは、何も無かったように、ミラを席に導き晩餐を始めることにした。
「疑わないんですか?」
ミラはダリウムに問いかけた。自分が伝説の英雄の子孫であると名乗ったことについてだ。
「ははは! 忘れたのか? 我ら親子は人を見る目があるのだ。揃ってそなたを認めているのだ。そういう事だ。」
ふふ・・ミラは笑って、便利な能力ですね、と食事に手を付けた。
「さて、結論は出ましたか?」
ミラはそう問うたが、ダリウムがこちら側に合わせたことで話はついたと思っていた。そして、ダメ押しのミラ自身の参戦。
「ええ、ええ。ミラ様! あなた様の言う通り、我がサイラスは身命を賭して、新たな国を築くことに邁進しましょうぞ。」
「ちょ、ちょっと! ミラ様はやめてください!」
クライアの豹変ぶりに驚いたミラは、慌ててクライアの口を封じ、隣に座るダリウムに口を寄せて訊いた。
「大公様は普段あんななのですか? イメージが違い過ぎるんですけど。」
「いや。確かにここ十数年はあんな父上を見たことないな。逆に懐かしい! ミラ殿の提案に乗ることで色々と吹っ切れたんだろう。」
ダリウムは嬉しそうに大公の方を見遣った。普段厳つい雰囲気を保っているダリウムだが、こうしてみると存外優しいのかもなぁ、とミラは思うのだった。
晩餐の後、ミラ達は人払いをしてお茶をしていた。
「時にミラ殿、実際どうなのだ。アノワンダ侯がエルネアを足止めするという話だが、見たところエルネアの方が力は上であろう? 勝てるのだろうか。」
ダリウムが当然の疑問を口に出した。
「いえ。アノワンダとエルネアは戦いには進まないでしょう。それにエルネアの領民の心はエルネアから離れてますから。兵の士気も同じですよ。確かに数ではエルネアの方が多いでしょうが、兵力という点では拮抗しているでしょうね。そして、今回の正義はどう見てもアノワンダ側にあります。エルネアとの国境線に布陣するだけで、エルネアは動けなくなるでしょう。」
それを聞いて、クライアが口を開いた。
「ふむ。その隙に、我らがスルーラットを攻めると。確かに、スルーラットを討つことはできるかもしれない。ですがミラ様。次に控えるエルネアを我々だけで撃破できるだろうか。」
クライアのミラ様呼びが直らないことに事に閉口しながら、あきらめてそれに答えた。隣でダリウムがにやついている。
「エルネアに対抗するのはサイラス公国だけではありませんよ? アイネスとアルジェントもいる。」
クライアは頷いた。
「確かに、アイネスは我々と秘密の共闘関係がある。しかし、計画では革命で国内が混乱している間、アノワンダの協力のもと、ガリア王国を牽制する役目を担う予定だったのだ。計画が変わったとしても、国境を防衛する役目は変わりませんぞ。従って、こちらに手助けする余裕は無いはずだ。」
それはごもっとも、と頷いてミラは人差し指を立て、にこやかに告げた。
「それについては秘策がありますからご心配には及びません!」
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「報告します! サイラスの姫騎士を先頭に、公子ダリウムの軍勢の勢いは止まらず、スルーラット軍は敗走しました!」
その報告を聞いたエルネア大公サデスは歯噛みした。
「ジョズめ!何をやっておる!」
その頃になるとその鮮やかな赤髪を靡かせた姫騎士の存在は、大衆をも惹きつけてサイラスの行動を正当化するのに役立っていた。
何しろ、フォースタリア建国時の逸話にある赤髪の姫騎士の存在は、サイラスのみならず、フォースタリア全土で戯曲にもなっていて親しまれている。その再来と見紛う姫がサイラスを支援しているのだ。片や、その悪政により疲弊している、エルネアやスルーラットの民衆の心がどちらに付くかなど明らかだった。
そして新しい流言も飛び交っていた。
曰く、サイラス大公はエルネア大公に家族を人質に取られて、色々と従わざるを得なかったのだ、永年に渡り、サイラスはエルネスに搾取されていた、とか。確かにサイラス大公は家族とは安全の為に別居していたが、一般民衆に分かる訳がない。
曰く、昔のフォースタリアの栄光を取り戻すため、サイラスの姫騎士は降臨された。これで正義は回復できる。フォースタリア万歳!、とか。姫騎士が正義という図式は深く民衆に浸透していた。
曰く、エルネア、スルーラットに天誅を降すために雌伏していたサイラスが立ち上がった! 皆心せよ! 世を変えるのは今だ! 我に続け!、とか。義勇兵団もあちこちで立ち上がった。
エルネアは、サイラスの蜂起時には既にアノワンダ侯爵軍と国境を挟んで対峙していた。スルーラットから急報が届き、援軍を要請されても動くに動けず、また、アノワンダからの執拗な侯爵令嬢の返還要求に頭を悩ませていた。
そんな時にスルーラット敗走の報告があり、エルネア大公サデスは頭を抱えたが、気を取り直して吠えた。
「アノワンダは一侯爵家だ。国境を越えてこちらには攻撃できぬはず。サイラス軍がこちらを目指してきても兵力差はエルネアが上だ。返り討ちにしてくれよう!」
とは言え、令嬢を誘拐されて怒り狂っている様子のアノワンダに、背中を見せる訳にはいかない。彼の使者が言った様に、誘拐の証拠を掴んで来ているアノワンダ軍を誤魔化すのは最早無理なわけで。
サデスと家宰が、怪我を負って動けない軍務トップの将軍を交え、サイラスをどうやって返り討ちにするかを考えていたところに、斥侯からの凶報が入った。
「アイネス、アルジェント両軍がこちらに向かって進発したとの報告が入りました!」
それを聞いた家宰は驚いた声を出した。
「ばかな!アルジェントはともかく、アイネスは国境から動けぬはずではないか!」
密約により、隣国ガリアが国境を牽制しているはずである。
「それが、ガリア国内でワイバーンが現れたとのことで、大騒動になっている由にて!」
つまり、歴史上を見ても滅多に現れることは無い、最早未確認生物であるワイバーンは山脈の向こうでは龍人の眷属であった。それがガリア王都上空に突然現れたらしい。現代では誰も見たことは無いが、過去に有った被害等は記録に残されている。ガリアが国を挙げての警戒に入るのは当然であろう。そして、それこそがミラの言った秘策であり、グランタナの使嗾だった。
それを聞いてサデスの目は怒りに染まった。
「くそっ! サイラスは初めから我らを騙していたというのか! アイネスが動くということはそういう事だな! こうなったら全軍をもって討ち果たしてくれる! アノワンダからの攻撃は無い! 各員、サイラスに備えよ!」
確かに兵力差は歴然としてある。だが、攻撃してくる可能性が無い訳ではないアノワンダを背後に戦えるのか。おまけに、軍上層部はことごとく怪我を負って加療中であり、指揮系統も乱れがちであるアイネス軍の現場は浮足立っていた。そこに、ある噂が投下される。
「攻めてくるのはサイラス、アイネス、アルジェント連合軍の大軍だってよ! 何をやらかしたんだ? 大公はよ!」
実は兵の規模からいって、連合軍をもってしてもエルネア軍に及ばないが、普通の感覚では三国連合ともなれば大軍となろう。しかも背後にはアノワンダが睨んでいる。兵としては不安しかない。
そうこうしながらの翌日。背後を気にしながらサイラスを迎え討つ形で兵を展開していたエルネアの兵は見た。遠くからゆっくりと迫ってくるサイラス軍を。そしてその先頭を行く輝く橙色の髪を靡かせる姫騎士を。
エルネアの兵と言えど、それ以前にフォースタリアの民である。赤髪の姫騎士が象徴するものは正義である。エルネア兵の士気は一気に下がったのは言うまでもない。そのままぶつかったが、殆ど戦うこともなくエルネア軍は敗走した。スルーラットとの戦いを再現する様な景色だ。
そうやって、アイネス、アルジェント軍を迎えるまでもなく、サイラス軍はエルネアを制圧した。エルネア大公はスルーラット大公と同様、極僅かの側近と共に、何処かへ落ちのびたという。追撃は行われなかった。
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「エスタ兄さま!」
リンゼ達がアノワンダの展開する陣に合流すると、エリカが兄のエスタを見つけ駆け寄った。
「おお!おぉ。エリカ無事だったか!」
そう言うとエスタは駆け寄って来たエリカを優しく抱きとめた。
「たぁ兄さまぁ!」
リンゼもエスタの側にいたアランを見つけ、勢いよく駆け寄って抱き着いた。
「お! おお・・ 今回は良くやったな! エミレンもな!」
アランは若干顔を引き攣らせながら、リンゼの頭を撫で、苦笑を浮かべながら歩み寄ってエミレンを労った。
最近は要領を得て、アランもエミレンもリンゼを抱きとめることができるようになったが、以前はよく吹っ飛ばされていたものである。アランとエミレンは互いを見ながら二人だけに通じる笑みを浮かべた。
「君たち兄妹にはまた助けられたな!礼を言うよ。」
「あたし達だけじゃありませんよ!」
そう言うと、リンゼは何となく所在無げに佇んでいたセリンの腕に抱き着き引っ張って来ると、エスタは目を丸くして驚いた。
「もしや、姫様か? ええ? 大きくなったなぁ・・ いや。」
言うと、エスタは片膝をつき、騎士の礼をした。
「この度は、妹エリカのために姫様自らお出まし頂いたことに・・」
「ちょっ! やめてください! 皆が見てます! わたしは友達として当然のことをしたまでですから!」
周囲の兵達が何事だと伺っている。その気配を察して、エスタは立ち上がり、セリンの手をそっと握って、照れながらありがとうと言った。
「おい、アラン。姫様が一緒なのを知ってたんじゃないだろうな。」
エスタはアランを問い詰めた。
「いや。だが一緒なんじゃないかなぁ、とは思ってたさ。リンゼがいるんだからなぁ。たとえ姫様がいても全く心配はしてなかったがな。」
短い間に、アランとエスタは遠慮のない間柄になった様だ。似た境遇の二人には通じるものがあるのだろう。
「あ、あの。アラン様。初めまして。セリン・・ いえ・・ セリーナです。リンゼからは色々と聞いてて、是非お会いしたいと思ってました。」
セリンは今更だと思ったのだろう。本名で挨拶した。
「これはセリーナ姫様。こちらこそ挨拶が遅れまして申し訳ない。だが初めましてではないよ? 綺麗になったね。見違えた。」
セリンはその言葉に真っ赤になり、同時に、ああ、そうか。と思った。ミラが自分達が〝ラスアスタの盾〟であることを明かしたのを思い出したのである。グランタナの人達であれば、小さいころに会っていても不思議はない。
「こ、この度のご尽力のこと、母に代わって御礼申し上げます。あなた方あってのラスアスタですわ。今回つくづく思いました。」
「アランも姫様のこと知ってたのか。今更だが、サナス子爵家ってのはどんな扱いなんだ? 俺も最近まで全く知らなかったんだが。」
エスタがずっと訊けなかったことをやっと訊いた感じで問うた。
「そうだな、影ながらこの国の王族を守護する秘密の家柄だな。内緒だぜ? なぁ、セリーナ姫様。」
先程の返しで、セリンがアランの正体に思い当たったと感じたアランはそう答えた。
「そ、そうですね。間違ってはいないですわね・・」
妙な言い回しになってしまったセリンに頷きながら、エスタは言った。
「なるほど! 近衛とは別の守護役か! 聞いたことは無いが、秘密となれば納得がいく。それならば君たち兄妹の強さも頷けるというものだ。改めて言わせてくれ。エリカを救ってくれてありがとう。」
エスタは考えが落ち着くところに落ち着いて、再び感謝モードになった。
「しかし、エスタを止めるのは大変だったんだぜ? エリカ殿。隙を見せたら、すぐに国境を越えそうな勢いでなぁ。」
アランはエスタを横目で見ながら言った。エリカは、まぁ! と言いながらエスタを見た。
「ま。何だな。仕方ないじゃないか! エリカが攫われた先がエルネアだとしか知らされてなかったんだからな! だが、クレスタが一緒じゃなくて良かったかもな。あいつがいたら確実に攻め込んでいただろうよ。そしたら今頃は面倒臭いことになってたよ。」
エスタは頬を掻きながら話題を逸らしにかかった。エリカがそれを引き取った。
「そのクレスタ兄さまは?」
「あいつは父上と一緒にアルジェントに行ってるよ。この知らせをアランから受けた時は二人とも出立した後だったからね。実質アルジェントの後ろ盾として相談を受けて来たアノワンダとしては、この急展開は処理量を越えてるだろう。暫く帰れないかもな。おっと、エリカが無事だったことを知らせなきゃ。恐らくアルジェント軍と一緒にこちらに向かってるだろうから。」
エスタは思い出したように言った。アランもまた、思い出したようにエミレンの顔を見た。
「ところで、エミレン。今後の予定はどうなんだ?」
「これは国外の話だからね。後はフォースタリアに任せるよ。今回の仕切りは殆どミラ兄だからね。暫く帰って来れないかも。僕たちの介入はここまで。エリカ嬢を助けたところで終わりだね。早く帰ってゆっくり寝たいね。けど、僕はその前にちょっとだけ様子を見てこようかな。」
尤もな話をエミレンが述べると、皆の雰囲気が一気に弛緩した。どことなく緊張を持続していたのが終わりを告げられて、気持ちが日常モードに移行したのだった。
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