第15話 御前試合④~ね、無駄な悪あがきだったでしょ~


 先陣切って背中から魔力放出しながら突っ込んだアッシュが大剣で斬りつけまくるが、切った傍から残骸が再結合していく。


「ハッハッハ!強靭で無敵な俺が、この国最強って事だー!!さぁさぁ逃げまどえ、踏みつぶしてやろうか、蹴り殺してやろうかァ!?」


 集合ゴーレムはその巨体故に、軽い蹴りや踏み付けひとつひとつが地響きを起こしている。

 その迫力は観客たちも集合ゴーレムが起こす振動に怯えながら固唾をのんで見守っている程。

 アッシュはそんな攻撃にも臆さず、足元を飛び回って攻撃を回避しつつ気合の雄たけびをあげながら足を斬りまくっている。

 だが奮戦虚しく何度斬りつけても斬った端から回復するので、結局アッシュもUターンして戻ってきた。


「……駄目だ、ちょっと斬りつけただけじゃすぐ元通りになる」


「俺が砲撃してみようか」


 肩で息をしているアッシュに、バルナが手を挙げて提案する。……バルナのマグナム弾は残り弾数が少ないのと反動にあと何発たえれるかわからないので無駄遣いが出来ないからそれは止める。


「……待ってくれ、何もあいつをまともに倒そうとしなくてもいいんだ。要は頭にいる王子と核をぶっこぬけばいいんだよな。だから態勢を崩させればいい。今のアッシュの攻撃で、ダメージ自体は通りやすいのはわかったからなんとかなると思う」


 作戦を説明すると、アッシュもバルナも頷いてくれた。ドーブルスは俺がまた属性を付与することを心配をしていたけれど、やらないとどうしようもないので当たり障りの少なそうな雷属性でいくことにする。


「みろぉ、お前たちがゴミのようだぁ!!!俺は何度でも甦る!!さぁ跪け、命乞いをしろ!俺の靴を舐めて平伏するといい!」


 はるか頭上、集合ゴーレムの頭部から拡声されたリバルくんの声がする……余裕ぶってるのも今のうちだぜ。ドーブルスが魔力を雷属性へ変化させるのを感じるが……よっしゃ、これならいける!!漲るパワーに自信が滾るので、顎に手を当てながら首をコキッとならしながらリバルに言ってやる。


「――――俺の強さに泣いてもええで!!」


『カッちゃんまた属性の影響受けてるーっ?!』


 だがここからは作戦通りに行かなくては。

 抜いた剣を天に向けると、すかさず剣めがけて落雷が落ちてくる―――これがボルトブレイカー。アークスラッシュと同じ、“ディーノの大冒険”で主人公のディーノが使う必殺技の一つだ。

 父親から受け継いだ最強クラスの剣技で、落雷を纏わせた剣戟は作中で敵の大幹部の胴体ですら一刀両断にするほどの威力。あのデカブツの足にだって間違いなく通るだろう。


「すごい技だなカストル。そんな技どこで覚えたんだよ」


「とある英雄の物真似や―――ほな、いくでアッシュ!」


 アッシュも握る大剣に魔力をさらに籠めつつ構え、背中から放出する魔力の量を増して突っ込んでいく。


「でぇえええええええええええええええええええいい!!」


そしてそのタイミングに合わせて俺も突っ込みながら斬りつける。


「ボルトブレイカー!!」


 2発同じタイミングで攻撃を同時に受けて、集合ゴーレムの左足が膝のあたりで両断された―――俺とアッシュの全力の攻撃なだけあってしっかり効いている……たとえ再生されたとしてもすぐに再生できなければそれでいい。


「右足は俺が!!」


 ほぼ同じタイミングでバルナが右足に魔法の矢を撃ち込み吹き飛ばし、両足の膝から下を粉砕されたことで集合ゴーレムの身体がぐらりとよろめく。ベネッ!!


「ンアーッ!?」


 リバルくんの悲鳴とともに、集合ゴーレムはバランスを崩して倒れ込むんでくる―――計画通り!


「―――犬の真似するみたいにな、ヨツンヴァインになるんだよ。あくしろよ」


 俺の言葉が聞こえていたかはわからないが、両腕と膝の部分で集合ゴーレムが身体を支えて四つん這いのようになる。倒れないようにするにはそうするしかないもんね?こうなると幾らデカくても動きが制限されるし、頭の位置も下がるので、あとは千切り飛ばされた膝下が再生するよりも早く本体を倒せばいい。


 バルナを見ると反動で硬直しているがお疲れ様なんだせ。さぁ、あとは俺とアッシュの仕事だ。

 アッシュが俺を抱えて飛び、集合ゴーレムの頭部へとおろしてくれた後、ふり払おうと伸ばしてきた右腕に突っ込んで迎撃してくれている。飛べるのっていいなぁと素直に羨ましくなる。


「くそっ、くそっ、来るんじゃない!!俺を、引きずり出すつもりかッ」


「当たり前だよなぁ?」


 ニッコリ笑いながら頭部に剣をつきたてて抉るようにして穴を掘り進んでイクッ!いいゾ〜これ。

 せめてもの抵抗か、集合ゴーレムが身体を震わせて抵抗するが振り落とされないように掴まりながら剣で頭部を削っていく。


「暴れんなよ……暴れんなよ……これもうわかんねえな」


 そう言って掘った先で、核を抱えて震えているリバルくんがいた。目があったのでにっこりと笑ってやる


「お ま た せ!出しちゃっていいッスか?」


 自分が追い詰められたことを理解し、恐怖に顔を歪めたリバルくんがデスボイスをあげる。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛も゛う゛や゛だ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」


「つべこべ言わずに出て来いホイ!」


 そんなデスボイスを無視して襟首を掴み引きずり出し、地面に向かって飛び降りる。

 リバルくんを引きずり出されたことで集合ゴーレムは動きを止め、やがて崩壊を始めた。アッシュがすかさず助けに入ろうとしたが視線で制止し、空中でリバルくんの身体を上下逆さまにして肩にその頭をのせつつ、逃げれないように掴んで固定し落下のダメージををそのまま攻撃へと転化する。


「――――ガチムチバンカー!!!」

 

 属性付与した魔法剣をものまねするよりもずっと簡単。今なお続くプロレス漫画の金字塔、ガチムチマスクの必殺技だ。フィニッシュホールドはプロレス漫画の必殺技で〆と相成りました。


「ガッ、ハッ……!!」


 地面に着地すると同時に技のダメージを受けたリバルくんが、白目をむいて意識を失った。まぁ、そらそうよ。立ち上がりながら手を放すと、力なく地面に崩れ落ちて動かない。その様子に、審判が静かに頷き右手を挙げて宣言をする。


「―――勝者、ドーブルス!!!」


 決着を告げる声に、観衆たちも大興奮でワァッと声をあげた。俺達の勝ち……ってコト?! 戦闘が終わったのでドーブルスもスキルを解除したのか、スルッと俺から抜け出る感覚の後に隣にドーブルスが立っていた。


「ありがとう、皆のお陰で勝てた!」


 そんなドーブルスの言葉にアッシュも、バルナも疲労困憊の状態だったがサムズアップをしてくれているので俺もサムズアップを返す。俺達TUEEEEEEEEEEEEEEE!!


「―――ぶるぁぁぁぁっ!!我が子らよ、見事な戦いであった」


 野太く癖のある声に顔を向けると、髪を極太カールにした滅茶苦茶いかつい顔の男が俺達を見ていた。……あれが国王、王子たちの父親かぁ。

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