第14話 御前試合③~悪党が何をやっても駄目なものは駄目~


「―――えぇいわけのわからないことを!!2人まとめて叩き潰してやる!!」


 そんなリバルくんの声に前を向くと、そんな事を言っている間に超巨大ゴーレムが迫ってきていた。拳でこちらを殴りつぶそうとしてくるので回避して剣を構える。


「全身に魔力を感じる……!!おまけに身体が軽い!」


『単純に2人分合わせた能力になるからね。でも油断せずにいこうっ!』


 ドーブルスの言葉に頷きながら、剣に魔力を通す。

 魔力を変質させて好きな属性に変えられるのを感じる……ドーブルスの言っていた全ての属性が使えるっていうのがこういう事か。


『カッちゃん、注意して欲しいのは属性を変更するとその間はテンションというか人格に影響が多少なり出るんだ。

 ……火属性だと乱暴になったり、水属性だとしっとりしたり、雷属性だと強気になったり。だから俺もあまり属性を変更しなかったんだ。俺も中からサポートするけど、そこは留意して』


 何事も良い事だけじゃないのか、そりゃそうよね。

 ドーブルスが切り札って言っていたのはそのあたりできちんとデメリットもあるのね、OK把握したゾ。

 でもこの超巨大ゴーレムをやっつけるには属性を変えて斬れるようにしないといけないので属性を付与してもらう。


「分かった!……とりあえず鋼を斬るから火属性だな」


『了解!“火属性”いくよ!』


 全身からあふれる魔力がぼんやりと赤くなった後に剣に炎が宿る。おぉっ、凄い!きた!炎の魔力きた!!これで勝つる!ぽーかぽーかするのぜ!!


「属性を変えたぐらいでこの俺が倒せるか馬鹿めがァッ!戦いの最中にゴチャゴチャとうるさいんだよおまえらッ!!」


 どちらかというとわめきたてているお前のほうが五月蠅い気がするけどなぁ?

 今度は掌でこちらを捕まえようとしてきているが……そんなもんで俺達が捕まるかよっ!


「お前がうるせぇこの野郎!!」


 迫ってきた掌を炎の剣で斬りつけると、人差し指から小指までが宙を舞った。斬撃の衝撃波にゴーレムがよろめき後退し、斬り飛ばされた掌を眺める仕草を見せる。


「何ィ?!このゴーレムの装甲をこうも容易く……!?」


「ヘッ、ゴーレムだかなんだかしらねぇが俺達の敵じゃねぇっ!」


『カッちゃん火属性の影響めちゃくちゃ受けてない???』


 そうかな?何かすごくテンションが高くて、戦いってなって何かやる気がみなぎっているだけで普通だろ。そうだ、こういう戦いが俺はしたかったんだぜっ!!攻撃あるのみ!!


「いくぜいくぜいくぜぇっー!」


 剣に炎の魔力を纏わせながら滅多打ちに切りつけまくってやる度に、炎の刃がゴーレムの装甲を切り裂いていく。


「ヒッ、装甲が溶断されている?!来るな、あっちへ行けぇっ!くそぉ他の奴らは何をやってるんだ役立たず共ぉ!!!」


 リバルの怯える声と共に超巨大ゴーレムが後退していくので、こちらも前に進みながら攻撃の手は休めない。


「くそぉっ、こんな筈じゃなかったのにィ!!俺が一方的にお前達を蹂躙して嬲り尽して恥をかかせるはずだったのにィ!!」


「悪党の企みごとってのは失敗するって相場が決まってんだよ!覚えとけ!!」


 そんな俺の言葉と、容赦なく攻め続けられることから逃れようとしたのか後方に跳躍して距離をとる巨大ゴーレム。当然、この隙を見逃さない。


「今だ、決めるぜドーブルス!」


『ねぇ“仮装バイカー鉄道”の赤いアイツみたいになってない?大丈夫カッちゃん?』


「俺はいつだって絶好調だ問題ねぇ!……そんなことよりやるぞ!」


『……うん、わかったカッちゃん!』


 剣に纏わせていた炎の魔力を分離すると、剣の直線上に炎の刃が浮かんでいる状態になる。


「行くぜっ……必殺……、俺達の必殺技!!」


 縦に横に剣を振るたびにその動きに合わせて宙に浮かんでいる炎の刃がゴーレムを大きく抉り、最後は両手で上段から振り下ろす一刀に合わせて脳天唐竹割で真っ二つに切り裂く。


「オギョアアアアアアアアアアアアアア?!」


 リバルくんの悲鳴が聞こえて超巨大ゴーレムが爆散する。


「へっ、ざっとこんなもんよ!……あ~気持ちよかった♪」


『凄い!……でもやっぱり炎属性の影響すごく受けてるよねカッちゃん??とりあえず属性切り替えて無属性に戻すね』


 ……うわああああっ、急に冷静になって恥ずかしくなった。なんでさっきまでの俺はあんなにテンション高くなってたんだろう?!?!中学生時代に意味もなく包帯を腕に巻いてみたりマジックで手の甲にタトゥーっぽいマークを描いてた時の事を思い出すかのようなこの感じィッ!!のわああああああああああっ!今すぐ地面に転がってのたうちまわりてぇぇぇぇぇぇっ!!厨二病のダメージが後から来るのと同じだよこれぇぇぇぇ!!


『……わかるよ、俺も最初属性切り替えた時そんな感じだったから』


 何かを察するかのようなドーブルスの優しさが痛い。今はそっとしておいてくれ。


『でも必殺技の再現完璧だったね、ものまねすごいなぁ』


 それは確かにそう。ほぼ大体原作通りの再現が出来ていたのでさすがである。

 背後を見るとアッシュが残っていた大型ゴーレムを破壊したところで、これでリバルくん側の戦力はほぼ壊滅した。……あれ、だけど超巨大ゴーレムを倒したのに試合決着の合図が出ないな?


「まだだ、まだ終わらんぞ!!」


 超巨大ゴーレムの残骸中からリバルくんがはい出てきていた。髪や服が焦げてチリチリになって全身くまなくボロボロになっているが、まだやる気の用だ……やめておけばいいのに。


「もう勝負はついてるから諦めろよ」


「ふざけんなドブカスがぁ!ここまでの数をそろえたのにこんな惨めに無様に負けたら、ここで負けを認めたら……俺は全部失うんだよぉ!」


 リバルくんはもう王子様らしい態度を取り繕う余裕もないご様子……なんだけどゴーレムの核を抱えている。あ、まずい何かやる気だ。


「――――てめえら皆殺しだ!!!!!!!!!」


 抱えたゴーレムの核に向かって、倒した大小ゴーレムの残骸や数体健在の等身大ゴーレムがリバル君に向かって吸い寄せられていく。こ……これはよくあるお決まりの……特撮ではお決まりの……まさか、まさか――――。


「ハハハハハァ!!俺の魔力を振り絞ればこういう事も出来るんだよ!!

 要は最後に勝てばいいんだよ勝てばなぁ!!!

 気絶した役立たずの従者も取り込んで魔力を搾り取ってェーッ!!お前が2人合体ならこっちは3人と33人合体だワーハハハハ!!」

 

 ……やりやがった!!!マジかよあの王子!!!!!やりやがったッ!!特撮ではおきまりの“やられたら巨大化する”やつ!!!!!!!

 全長で10メートルくらいはあるだろうか?バラバラの鉄くずや残骸の集合体なので形は歪だが、巨大な人型をした集合ゴーレムを産みだした。ただ、無理やり連結というか魔力で結び付けているのか今も細かな残骸が崩れ落ちていて崩壊しかけている。

 頭部から光が漏れているので核と王子はあそこにいるのだろうけど、さすがにここまでデカいと対処に困るな。


「焼き払えっ!!」


 頭部から極太の魔法の矢……というかレーザのような射撃が飛んできたので即座に回避する。当たったら無傷じゃすまないやつだこれ。自壊するまで逃げ切ろうとしてもこの射撃は脅威だ、倒した方が早いか。

 いったん後退して集合ゴーレムから距離をとったところで、バルナとアッシュが横に並んでくる。


「休ませてもらってすまない、とりあえず残りの弾を撃つくらいはできると思う」


「何なんだよアレ、気持ち悪い!」


『カッちゃん、なんかすごい事になってる!!』


 皆がそれぞれ困惑の声をあげ、観客たちもザワめいている。だけど、一つだけはっきりとわかっていることがあるので安心させるように仲間たちに声をかける。


「あぁ、そうだな。……けど大丈夫だ―――最後の手段で巨大化した悪役はやられるのがお約束、だろ?」


 最近はやられずそこから生還する人もいるらしいけどネ。さて、最後の仕上げといこうじゃないか。

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