第7話 アンジェラ~傲慢で我儘な幼馴染~
―――カストルと出来そこない女が去って行って姿が見えなくなった後、悔しさに歯噛みをしながら顔を上げた。
折角、折角ッ!カストルと寄りをもどせるところだったのに!!またあの“出来そこない”女に邪魔をされた。あの女ァ……毎度毎度、目障りすぎるッ!!
怒りを抑えきれず近くにあった柱を何度も蹴りつける。クソクソクソクソクソククソ……!!だめだ、こんなもんじゃ私の怒りは収まらない!!私の前で跪いて全裸土下座ぐらいさせてやりたい気分だわっ!!
中等部時代、私が他の友達と一緒になって庶民産まれで入学してきた娘を“いじって”ストレス発散をしていた時に邪魔をしてきたのもあの女だ。
非貴族で庶民の生まれから編入試験を受けて入学してきた娘を踏みつけたり、便所に閉じ込めて上から水魔法をぶっかけたりする“いじり遊び”を、あの女に見つかって止められた時のことを思い出す。
ただ止めるだけじゃなく、あの出来そこない女は私がいじってあげてた女子を背に庇いながら、この私に向かって『それはいじりじゃない、いじめよ!!』とか言って私に怒って……まるで私を、物語の悪役令嬢でも見るような目でみてきたのだ。超カワイイ私はまさに聖女でしょうがっ!!お前みたいな出来そこないと私は違うというのにこんなの、到底許される事ではないと思うわ!!
挙句に、私の楽しみだったいじり遊びも教師に言いつけられてできなくなった。
そのことは、他の家や特にフェンバッハ家に知られたら問題になる可能性があるといって、お父様が多額の寄付金を学園にいれてカストルに知られる前にもみ消したけど……この私に屈辱を与えたことをまだ許してないのよ出来そこない女ァ!
そもそも“あの事情”で王位継承権も剥奪されている分際で、この私に、この私にィッ!また恥をかかせた!それもよりにもよってカストルの前でェッ!!
そうよ、カストルだって子供のころから一緒だった私に未練タラタラだったのに。あとちょっとで関係が元通りになって、王族専従騎士の婚約者の地位を手に入れて、カストルの権威を使って好き放題できたのにィ……!キィーッ!!!
カストルも、別に私に落ち度はないし悪い所はないけど謝ってことから歩み寄ってあげたんだから、私が他の男……自分の双子の弟と初めてを済ませちゃったことぐらい気にしないだろうし、女の子がちょっとくらい余所見したって許すのが男の器っていうから折角復縁もできるところだったのに!!ああああああああああっやっぱり腹立つあの女ァ!!
……っていうかポルクス、あのゲロ男もなんなのよ、魔力140のレアスキルでバラ色の未来間違いなしとかいってたくせに速攻でゲロ色の未来に転落してるじゃない。これならあんなのに簡単に身体を赦すんじゃなかった、本当に使えない男だわ。
男なんてこの超カワイイ私を引き立たせて私に権力を運んでくるための道具なのに、そんな道具の分際がこの私に恥をかかせるとか死刑ものよ、死刑死刑死刑死刑死刑!
は~、もうポルクスは駄目だからカストルとヨリをもどさなきゃなのに!!
はやくカストルと復縁しないと高等部での生活がゲロ野郎の婚約者で送る羽目になっちゃう。お父様に説明して婚約相手の再変更とカストルとの復縁を打診してもらわないといけないし、やる事が……やる事が多いわ!!
そう考えるとカストルを連れていかれたことに腹が立つ。こっちは時間を惜しんで急いでるっていうのに。
カストルもカストルよ、最愛の幼馴染が目の前にいるのにそれを差し置いてちょっと顔と家格が良いだけの出来そこない女にホイホイついていっちゃってさぁ!スタイルなら私の方が圧倒的に上なんだしィ?一緒にいた時間を考えたら私を選ぶべきでしょ。……この!超可愛い!幼馴染の私を!優先するべきでしょうがー!!
カストルは子供のころから私に対して、そういう物言いは人を傷つけるからよくないとか、そんな我儘を言っちゃ他の皆が困るからいけないとか、私に対してアレコレいったりしてくるところがあった。お父様もお母様も私は超カワイイからなんでもすきにさせてくれるのに!したっていいっていってたもん!!!
でもカストルは顔が良かったし優しかったから意見を言うのを特別に赦してあげていたっていうのに……そんな私の思いやりと配慮をわかってるのかしら?カストルは私に感謝が足りないのよ、感謝が。結構寛大な心でカストルを特別扱いしてあげてたっていうのに!
……カストルが成った王族専従騎士はこの国において王子と姫の人数しか存在しない超エリート中のエリート。
成人の後には王族に準ずる領地と権力を与えられる事が約束されている、王族を除いた最高の地位と言ってもいい。
そしてその婦人ともなれば栄誉も何もかも思いのまま、何なら地位をかさに若いツバメを飼ったりしてもいいし……フフッ♪
カストルを手に入れればそんな最高の人生が約束されるのに、ここで引き下がるわけにはいかないわ。
私が幸せになるために、カストルとの復縁は必要不可欠!!そう、超カワイイ私には幸せになる権利がある!!それを邪魔するあの出来そこない女は万死に値するわ、目に物言わせてやる。
これは正当な復讐、報復よ!巷で流行りの物語にある“ざまぁ”されればいいのだ。
「はーっ、はーっ、このままじゃ終わらせないわよ出来そこないめぇ……」
怒りに肩を震わせながらどうするか考えていたところで、友達の存在を思い出した。
一緒に非貴族民をいじって遊んだ無二の親友といってもいい、ヴァネッサ・ターリングラド。そういえば王子の婚約者のあの子なら家の格的にも劣らない。
ヴァネッサもあの出来そこないを疎ましく思っていたから相談してみよう。う~んやっぱり、持つべきものは友達ね♪
ヴァネッサならきっと何かいい感じに知恵と力を貸してくれるはず!そう思うと楽しくなってきた。あの出来そこないに赤っ恥を書かせて私たちの前に跪いて靴を舐めさせてやるのよ!!そうしてカストルを取り戻して私は思うがまま、ヴァネッサも親友が王族専従騎士夫人になって横のつながりを手に入れて皆ハッピー!
まってなさいカストル、すぐに取り戻してあげるんだからねっ♪
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